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スキル「緊急回避」で無敵スローライフ  作者: あるまん
第一章
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 まず俺たち4人の周りには直径3mほどの光る球状の空間?に包まれているようだ。この範囲だったら一応は手を放しても大丈夫そうだな。試しにポケットからハンカチを取り出し目の前に落としてみたが、俺たちもだがふわふわと無重力空間の様に浮いている。手から離した瞬間に超高速で置いて行かれるとかはなさそうだ。

 スピードも最初の時は100mを10秒程度だったが、女神の改修のお陰かそれの倍は出ている気がする。フルーツ村に来る時は100kmを2時間半ほどかかったが、仮に100mを5秒で進み300kmだとすると1km50秒、15000秒=250分、道を間違っていなければ4時間弱だ。出たのは夕方5時頃だったと思うので、1時間ほど休みを取っても日が変わる前に着きそうだ。

 

 三人の様子だが……いきなり何の説明もなく、多分に初体験だろう飛行体験だ……俺も高校の修学旅行時に初めて飛行機に乗った時は少しビビってしまったのだが……

 「す……」

 「す?」

 「すごおおおおおおおおおおおおおい!私たち、空を飛んでるよ!まるで鳥になった気分♪ほらっ、フルーツ村がどんどん遠くになっていくよ♪」アテナは大丈夫そうだ。

 「ふむ……これがお主の技能の一つか……古の賢者が使った飛行魔術とはまた違い、風も感じないようじゃな……興味深い……」アルテミスは飛行体験はあったようだな。


 さ、肝心のネメシスは……

 「……落ち着きなさい落ち着くのよネメシスこれは夢でも幻覚でもないわわたくしの旦那様がわたくしを抱きかかえて空を飛んでいるこれは旦那様がエルフじゃなくいやまさかええそうに違いないわわたくしの旦那様は」

 「……ネメシス?」

 「はい!ええもう離しませんわっ!わたくしの守護天使さまっ♪ネメシスは貴方様の下僕(しもべ)です♪わたくしをこのままぱらいそまで連れて行ってくださいませっ♪」


 ……あ、こりゃあかん奴やっ……。


 「お、おい、正気に戻れ!ああは言ったが……間に合うかどうかはまだ判らないんだ。たどり着くまで数時間あるからゆっくり休んでてくれ」

 「……ええ、父はわたくしの弟が生まれた後位から既に病弱でしたしずっと覚悟はしております。今回もし間に合っても、間に合わなくても、貴方様はお気になさらず」

 そういうと先程とはまた違う強さで、俺の手に抱き着いてきた。それを見てアテナも、反対側からぎゅっと俺の手に抱き着く。


 ……


 ……


 邸内は慌ただしく動いていた。主治医は看護婦に指示を出し患者を少しでも苦しませないよう奔走している。邸内のメイドや侍従、コックたちは沈痛な思いで祈りを捧げ、政務官たちは各所との連絡を密に取り合っている。

 ベットに横たわり、真っ赤に発熱した身体を冷やされながらも苦しげに息を吐く痩せこけた40台ほどの男。

 その手を握り、男の傍に座る女性……ネメシスと同じ髪と瞳の色、似た雰囲気の姿で一見姉妹、しかも妹と見間違う程の美しさ・若々しさだ。室内にはこの2人の他は主治医と看護婦数人、そしてメイド長が1人。

 「よく、頑張ったね……後は私達に任せて先に天国で待っていておくれ。あの子達はこの場に一人も間に合いそうにないのが心残りかもだが……特に可愛がっていた跳ねっ返りのあの子、今は公務の為フルーツ村に滞在していたか?半日程前に伝令の鳩を飛ばしたようだが、とても間に合わないだろう……寂しいかもだが見送りは私と部下どもだけになりそうだ。許しておくれ」

 男は気にしないでくれとほほ笑んだ、様な気がする……。その様子を涙を見せず、優しげな表情で見まもる女性……男の最後はゆっくりと近付いていたが……。


 ドタドタドタドタ、コンコンッ!

 

 男が横たわっている室外からけたたましく鳴り響く音。

 「な、何ですか!静かになさいま……」

 メイド長がドアを開けるとそこには……

 「お父様!お母様!!」

 「ね……」


 「ネメシス……な、何故……便りを出したのは半日ほど前だというのに……」

 この世界の伝書鳩は魔法で強化され、普通の鳩の倍近い速度で休みなく飛行出来る。その為伝令自体は3,4時間ほどで届いた筈だが、フルーツ村からここまでは同じく強化された馬で日中は休みなく走ったとしても10日はかかる筈が……。


 「お、お母様って事は……辺境伯様?ね、ネメシスと姉妹にしか……」

 「こら、アテナ……不敬だぞ!」俺はアテナの言動を注意するが、確かに……いくらネメシスが年齢より大人びて見えるとはいえ……下手したら妹にしか見えない。

 「間に合ったか……?相変わらず年齢不詳な一族よな……」アルテミスが言う。


 「こ、この者達は……ネメシス、説明しなさい!」

 「その前に!一刻も早く!!アテナ様!アルテミス様!道中で話した通り宜しくお願い致します!テティス!宝物庫から一番大きな魔封石をお持ちなさい!!」

 ネメシスに指示された、テティスと呼ばれたメイド長は戸惑いながらも外に出て宝物庫へ向かう。

 「ああ、お父様……全身が赤く発熱し、さぞや御苦しいでしょう……お母様、これから起こる事は私たちとテティス以外他言無用でお願いいたします!!」

 最初は戸惑っていた、ネメシスがお母様と呼ぶ女性……辺境伯は、

 「……判りました、貴方のその表情、何らかの策があると見受けました。主治医殿、申し訳ございませんがテティスが戻り次第一度御退室を」

 そしてテティスが直径10センチほどの丸い石を持ってくる。それが魔封石だろう。そして主治医が退席した後そのままサイレントをかける。

 「うむ、充分な大きさじゃ。小娘!来る前に説明した事、覚えておるな?」アルテミスがアテナに声をかける。

 「う、うん……本当に私なんかでいいの?」戸惑うアテナ。

 「年若き光属性持ちの女子という事が重要で、光属性の魔法等は関係ない、安心してやるのじゃ!」

 「そ、そちらのおなごは……まさか白狼人族?森の賢者が何故……」

 「ほう、流石は辺境伯、判るか……貴様の義親や義祖父母から聞いてはおらぬか?○○の時代の話を……」

 アルテミスはその返答を聞かぬまま、 

 「容体は芳しくない……早速やるぞ!小娘!」

 「う、うん!」

 「アテナ様、アルテミス様、父を……宜しくお願いしますわ……」

 ネメシスは母親に寄り添いながら、その行く末をじっと見守る……。


 「し、失礼いたします!」

 アテナは倒れている、ネメシスの父親の額に魔封石を載せ、両手でしっかりと抑える。アテナの背中にアルテミスは右手をそっと当て

 「小娘、今から魔封の祝詞を貴様の脳内に直接送る。ゆっくりでいいから復唱しろ。細かい調整はワシがやるっ!」

 「わ、判ったわ……5つの大陸と7つの海を統べる、偉大なる女神よ、邪悪なる神の赤熱の呪いを封じ、かの者に安息を!」

 アテナがアルテミスに教えて貰った祝詞を読み上げると、魔封石が光りだす!

 「いいぞ!魔封石が発動した!後はこの男の体内から赤熱の呪いを全て吸い上げるのじゃ!」


 儀式が進むにつれ、魔封石はどんどん赤熱し、アテナもアルテミスも、近くで見ている俺たちもその熱で汗をかきだす。それに反比例するかの如く、男……辺境伯の夫の身体の身体の赤さがどんどん引いていく……。

 「よし、全て吸い取ったな?小娘!魔封石を持ったまま頭上に掲げろ!最後の仕上げじゃ!」

 「うん!この呪いを未来永劫封じ込め、神の御許に!」


 赤熱していた魔封石はカッっと光り、一瞬眩しさで前が見えなくなる!


 ……


 「……ふう、終わったぞ……」

 アルテミスの言葉で全員が目を開けると、アテナが頭上で掲げていた魔封石は先ほどの赤熱化が収まり、元の様に白っぽい石に戻っていた。

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