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機能しない現実  作者: ダイナマイト山村
9/29

教団

バリツって音からなずけたとしたら柔道よりも武術っぽいですよね。

 不意打ちかもしれないが、という注が付くにせよ、ベストマンを圧倒したサムライが苦戦を強いられている。


ミルコにはそう映った。


とりあえず、一般の人間(といっても本来の意味であればミルコは一般を軽く凌駕しているのだが)に何もできることはない。


身体能力。装備。


「装備か。使い方がわからない賢者の石と、キャンサーバレット」


絶望ではないか。


超人間が二人、戦っている。


仕掛ける侍の空手を軽くいなす殺人鬼。


そして掌底で腹部をとらえる。


喀血。


がリョウジが両の手で腹部にめり込む敵の腕をとらえた。


「シェエエエエエイッ」


投げ打つ。極める。鮮やかな身のこなし。


「あれがバリツか」


そこで一瞬の間があり、二人の超人が離れる。


銃声。


「まさか。こんなところに。賢者の石と生命の実がそろっているとはねぇ」


あぁ。全く自分の運命というものを手にできないまま。新たな登場人物が。


ミルコはあまりに、圧倒的に、完膚なきまでに、無力を感じ、味わい尽くし、何もできなかった。




 車に乗せられ、奇しくもヘッケルバインをめざすことになった。


超人がそれぞれ拘束されている。


ミルコはなめられている。


「そうだ、なめている。貴様のような凡人を拘束する必要などない」


まぁそうだろうと思う。その場で殺されなかっただけラッキーである。


ということは、何か理由があるのだろうとも思う。


それに気づくことができれば交渉する余地があるかもしれない。


「ないよ」


ミルコは見つめる。


「ないよ。交渉の余地など。面白いから道中語ってやるのも悪くはない」


誰だ。ミルコは考えている。


しかし、語る。この男は語るのだ。今から、一番無価値な自分に対して何かを語る。


これには意味がある。確実に。絶対に。


ミルコは覚悟した。




 教信者の集団。通称教団。侍であるリョウジの説明にもあった組織である。


神からの逸脱を目指す団体。


しかし。


教団には結束のためのシンボルが必要だった。


神の意思から逃れうる、他の教団が神とするポジションに絶対的な人間が必要とされた。


その人間は、きわめてベストマンに近いものである。


シンボルも教祖も厳然たる人間でなければならない。


神からの逸脱を目指す教団。


ここでは絶対神の存在が非であり、そこに抗う人間が是である。


生み出されたのがあの超人、ジェリスであるというのだ。


そしてジェリスは超然としている、できる肉体と精神が準備された。


神のシステムを徹底的に無視し、決定的に自由でいることを科された。




そうして生まれたジェリスは無気力だった。




 人を一捻りで殺せる能力と。


人を一瞬で制圧できる戦闘術と。


それらを持ちながら、ジェリスは宗教の神などではない。


自分を生んだ神(教団)によって支配されたのである。




 何があったかわからないが、ジェリスが生きる意志を見出したのは、神からの逸脱。


しかし、ジェリスがさす神とは教団のことで、教団のさす神からの逸脱が成し遂げられないというジレンマが産まれた。




 それでも教団は構わなかった。ジェリスは半分は人間の手によって生み出されている。


意図としてはほとんど全部人間の手によるものだが。


根幹の部分で、教団には勝ち筋が見えていた。


それが生命の樹の実。


ジェリスには生命の樹の実が与えられているのだ。




 それは人外未知のもの。


所謂神が、高次元人が、我々の世界に下賜したもの。


或いは、人間が、神から、高次元人から、奪い去り自らの手で手に入れた唯一のもの。




 それらから生まれ生きるジェリスは、人間も手を貸したとはいえ、神がつくったシンボルである。


そのジェリスがプログラムから逸脱することは、エクソダスたりえる。






 「なんて、御託はいいんだ。結局は無用な哲学だ。しかし、我々人類は優しさを殺し、賢者を隠し、無能と白熱を混同した」


面白くなさそうに話す。そして続ける。


「教団の思想も、そこから脱しようとするジェリス君の努力にも興味は一切ない」


タムタムとつま先を弾ませる。


「我々は生命の実が何なのか知りたいし、触りたいし、壊したい。興味だよ。我々は」


狂気じみた笑顔である。


「やっと見つけたんだよ。みんなおかしいんだ。神がどうのこうのなんて、決まっているなら決まっていていいし、決まっていないなら決まっていなくていい。我々が神から与えられたのは神話にもある通り知恵の実だ。決まっていることではなく、知りえなかったことを知る、興味を持つ、解明していく、これが最高の絶頂じゃあないか」




 目の前の狂人に一瞥を加えた後、一連の事件で出会った異常者の中で一番共感できる相手であると、一瞬思ったミルコは、口を開いた。

初めて読んだコナン・ドイルは失われた世界でした。

コナンドイルでググったら漱石感強い写真でてきてこんなだっけ?

ってなりました、

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