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機能しない現実  作者: ダイナマイト山村
22/29

サムライ良二

侍と武士の違いは。

武将とは。

ちょっと調べて触れないことにした。

 良二は侍だ。


檜山良の要素を持ったクローンでありながら、良とは全く新しい試みとして生み出された。


頭脳特化の良一と対になる、肉体強化タイプだ。


研究機関を任された良一とは別に、武士(サムライ機関)の所属とした。


柔術や剣術の他あらゆる武術を収めた。


サムライ機関が用意したベストシリーズと同等の戦闘能力を持っていた。


しかし武士独特の精神修養に励んだことも影響したのか、良や良二とは比べ物にならないくらい落ち着いた人格となった。


良の遺伝子を持っていることから頭脳明晰でありながら、研究者として従事しなかったことが、良や良一とは別の道を進ませた。




 サムライ機関は壊滅状態にあった。


ベストマン計画の一角サムライ計画の素体201~209、9体はバイオテクノロジーの強化血清に決定的な不備があり、ほぼ全滅した。


2015年のことである。


存在感戦争の末期1995年7月、日本国が消滅した時、サムライ機関の中枢は日本にあった。


しかし、他のベスト計との兼ね合いから、サムライ計画の実験研究機関ののみ国外にあった。


辛くも日本消滅を逃れたサムライ計画であったが、20年後の大事故だった。


明らかな故意の事故。だが、誰が。




 良二はベスト計画の多くの知識を与えられていた。良や良二に関する知識はほとんど与えられていなかった。


自分が人外の力を持っていることは分かったが、ベスト計画から生み出されたものであると信じていた。


実験体に名を連ねていないことから、失敗作であるとさえ考えていた。


しかし、実際は似て非なるものであった。


檜山良はベスト計画を利用こそすれ、推し進めてはいない。


良が個としての目的を達成するために、知識を拝借しているにすぎないのだ。


その研究に関して必要と思わなければ、還元しない。


意図的にではなく、ただ全く無関心であるというだけというのが実情だが、事実として秘匿した。




 サムライ計画のベストマン201~209までの9体に投与された強化血清とは何か。


実は良一が共有精神の発展、量子化精神の共有を促すものであった。


フィジカル面で強い個体。しかも、精神修養によって尋常ならざる精神力と共通認識を持ったサムライに目を付けたのだ。


その事実を知らない人間からしたら、肉体の暴走に見えたに違いない。


だが実際は、溶け合い、共有化される精神の共有強要に、個体として耐えられず自壊したのだ。


その結果により、サムライ機関は実質、研究専任者2名と良二を残し、事実上消滅した。


サムライの生き残りは、良二だけとなったのだ。




 しかし、良二にとっての悲劇は、良一にとって大きな進展をもたらした。


いくら近しい教育、思想を持っていたとしても、他者との精神共有は異常にストレスになるということ。


前段階の良の共有精神に関して、クローン間での精神共有は、全く同じ遺伝子感で行われていた。


それ自体にエラーは起きなかったが、情報は共有しつつ、別人格としてそれぞれに趣向の違う自我が産まれるという結果となった。


情報は人格ではない。


思想も人格ではない。


精神を共有させるには、大きな柱としての人格を核とするべきだ。共有化の対象から情報部分だけを吸収し、人格を抹殺する。


これが最適解だと思われた。それは共有というより、洗脳であり、支配であり、略奪であった。


しかし、情報を得さえすれば、その人格を模倣、再現はできる。消える本人以外にとって、それは何ら問題のない事である。




 良一の量子化精神は強大な知識を持った、良一という人格が核となる。


自分と他人を量子化したうえで、良一の人格という核に情報をこしとって纏わせる。


残った人格という意思決定機関のみ捨てられるのである。




 これは、実際的にできたことである。ある程度まで理論構築はされているが、すべてが解明されたわけではない。




 良二は、量子化精神に対抗しうる力を持っている。それは、誰も気づいていない事実である。


良二自身も知らない。さらに、ミルコがヘッケルバインの存在を固着させたことにより、世界の誰にも知られず、既知のものとして。


良二に備わった資質がある。ヘッケルバイン側に残してきていた良二の何か。


良、良一とは違い、自覚的に存在感戦争を超えてこなかった良二にしか得られなかったものが反撃の一手となる。




 良二は侍である。




 侍が日本に帰還する。

ありがとうございます。

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