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機能しない現実  作者: ダイナマイト山村
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賢者の意思

アクションがあると物語は止まるけれど、物語が進んでいくとアクションを端折らざるをえない。

漫画もそうだけれど、アクションが快感だから。

爽快感がない。

 「賢者の石が反応したようだ。やはりお前に、ミルコ・クロフォード」


痛みはやがて激しさを増し、激痛へと変わる。


しかし、不快感がない。


「これは」


「ブラックボックスである賢者の石。利用方法の一部が確立されてからも研究は続けられた」


マルキンスが説明を始める。


「それは、人間が認識していないものをも分解、生成できるのではないかということだ」






 最初、賢者の石が発見され、利用可能になるまで1000年以上かかった。


それから様々な研究が進むにつれ機能は拡張されていった。


現時点での最高性能は、あらゆる元素を分解生成することができるということ。


それを制御するAI等の性能にもよるが、理論上世界中の物質を破壊、生成できる。


ただし、その構造をきちんと理解していることが条件である。


不完全な機能しか活用できないのは現実世界への理解が進んでいない証拠でもあった。


最終的にベストマン計画の一体に採用されたのは、その機能によって完全生物への自己進化、事故生成を期待していたこともある。


だが、強生命体にはなれど、完全生命体にはならなかった。


誰も、生物の構成要素を完全に把握できていないのだ。現在のAIの自己進化演算機能を使ってもである。


その理解にもっとも近づいた人間、檜山良が一つだけ発見した物質がある、という。






「物質、というのか、数値というのか。存在感があることが分かった」


檜山良が変わり、続ける。


「存在感を操る研究の途中、良一の邪魔が入り日本は消滅しかけた」


良二は自身のルーツ。血縁者なのか、同細胞の持ち主というのか、良と良一について考えていた。


「厳密にいうと、存在感が絶望的に0に近い数値になってしまい、認識できなくなったのだ」


国が。島が。認識できなくなるとはどういうことなのか。


座標さえ曖昧な都市ヘッケルバインとはそれほどに不安定な場所なのか。


もはや場所と呼ぶことができるのか。


ミルコは痛みのなくなった右腕を見まわしながら考える。


「そう、比重としてはこれまでの物理学よりも上位に位置するのだろう。存在感というものがなくなればなくなるほど、物理法則からも離れる」


「俺の右腕はどうなってしまったんですかね。世界の話より俺にとってはそれが一番気になるんですがね」


「君は賢者の石を取り込んだ。まぁ、賢者の石に取り込まれてもいるんだけれど。一体化したんだよ」


でしょうねぇ。と思いながら、どうなったかっていうのは意味合いの方なんですけど、と苦笑する。


冷静すぎる自分にも腹が立つ。


「その性質が、特殊なんだ。存在感が、SZK値1500前後で非常に安定しているサンプルは君しかいなかった」


サンプルね。不快感を表すミルコに良は続ける。


「君は私の遺伝子も何も入れていない、クローンでもない人間だ。その中でSZK値の安定が見られたことから記憶を操作させてもらった」


おいおいと思う。俺の頭はいじられてるのか。


「ヘッケルバインに対しての記憶だけ消去した、そのほかは追加も削除もしていない」


追加と削除ね。もはやミルコは聞くことに専念する、という決意の炎に油を注ぐしかないと感じた。




 存在感は発見できたが、理解がまだ完全ではない。賢者の石はその制御も可能であるらしいことから、存在感について理解しているものが作ったことは間違いないと思われた。これが人外未知の産物と推察される所以。


様々な方向からの研究がすすめられた。


ただし、賢者の石の制御を人間の脳で行う実験だけは禁じられてきた。


その人間が理解したものを感覚で分解、生成できてしまう。最強の力だ。


知識の深いものであれば悪用の用途も広がる。


精神状態も影響する。


一人の人間にゆだねるにはあまりにも危険。


ベストマンに埋め込まれた際も、脳はAIだった。


そんな産物を、本人の了承もなく、人類史上初めて、体に埋め込まれたミルコ。


檜山良は言う。


「賢者の石って駄洒落のようだけど、語源は賢者の意思なんだよ」


あ。日本人にしかわからないかと笑う。


ミルコは、自分が当事者になった事を理解した。




ミルコは、今、自分事として、考えている。

ありがとうございます。

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