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機能しない現実  作者: ダイナマイト山村
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ヘッケルバイン

ない言葉を作るのは難しい。

 ジョーカー。道化師。


切り札としての意味を持つこともある言葉。


ミルコはジョーカーとしての役割を与えられている。


結社が計画に組み込んだバグである。


思惑と可能性、そのどちらでもない選択肢を生む存在。




 ミルコに役割を与えた男、良は10年前に死んでいる。


結社の創設者、檜山良には複数のクローンが存在する。


だが、記憶そのものを共有しているわけではない。




 意図的に共有した情報。


意図的に共有しなかった情報。


その選択権は原初の良がすべてを握っていた。


ミルコの役割を知っている人間は誰もいない。


それは、ミルコ自身でさえ、である。






「これを見てごらん」


狂人が見せる資料。それは超人ジェリスの透視検査の写真だそうだ。


「真っ黒、なのか」


ミルコはその意味を考える。


「そう、X線も通さない。そこにあるのに、明らかに通常の人間とは違う」


通常の人間ではない。とは。


「それは、どういう」


狂人の笑み。


「そう、これがどういうことか」


椅子から立ち上がり続ける。


「X線が通らない何かがある」


それはそうだろう。


「それは。物理的にということなのか。我々が認識できないということか」


どういうことだ。


「X線で透過できないほど、あるいは透過できないように特殊な物質でできている生物と考えるかもしれない」


「それが妥当じゃないのか」


「弁証法的な発想と同じ矛盾に見えて無俊矛盾していない視点があり得るように、視点や認識の枠を超えることが必要だ」


「どういうことだ」


「外を理解する必要がある」


「外」


「3次元空間の我々が2次元と1次元を認識することはできる」


「その逆は難しいと」


「だが高さは存在する。それだがそれは、高さのない世界も存在している」


「どういう」


ミルコに狂人が笑いかける。


「研究だ。研究は我々の世界を知ることだ。我々の世界のルールを。構成物質を隅から隅まで知ることだ」


「我々の世界を知る」


「森の中からでは森を知ることはできない。外から眺める必要がある。中の構造を調べれば調べるほど、その外側の存在を確信し始める」


「外」


「口数が少ないぞ凡人。外の世界は確実にある。それはどうでもいい。中を知るための外だ。あくまでおまけ」


「生命の実は外の世界の何かでありおそらくその比喩。だからそれが使われたあの超人の体は中の手法では知覚できない」




 聞き耳を立てていた良二は何かを思い出した気がした。


知っていたことか。知らなかったことか。それがわからぬのに思い出すとは妙だが。


リョウジは良二として何かを思い出した。


我々の目的地ヘッケルバインとは何か。


教団第一首都ヘッケルバイン。


地図にしかないない架空の都市。


失われた幻想都市。


そうか。


それは我が古郷。


かつて日本と呼ばれた島国の中心都市東京。


教団の聖地。




始まりの場所。

ありがとうございます。

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