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10話 冒険者としての第一歩 後編

「……お前ら、ユニーク持ちだったのか」

 アラドのステータスを後ろから見ていたホーマンが感慨深そうにつぶやいた。


「ああ、一応はそうですね」


「珍しいな。この支部でもユニーク持ちは一人だけだ」


「そうなんですか?」


「ユニークスキルを持っている人間は少ないからな」

 

 ユニークというのは、特異能力のこと。

 世界に一つしか存在しないスキルのことをユニークと呼ぶ。

 一般スキルとは異なり、能力も特殊で、所持主ですらその能力のことを正確に把握していることは少ない。その代わり、効果は非常に強力であることが多い。



 一般スキルや魔法の多くは、後天的に習得する方法がある程度は体系化されている。

 たとえば鍵開けスキルを習得したいのであれば、実際にピッキングの練習をしたり、師匠となる人間から教わればいい。魔法を習得したいのであれば、詠唱呪文を記憶したりすればいい。

(ただし、一般スキルの全てが誰にでも習得できるわけではない。魔物言葉や、上級以上の魔法など、才覚が必要な一般スキルも存在する)


 しかしユニークスキルの場合は違う。

 多くの場合が先天的に習得していて、それは『才能』と言うべき領域。

 そして才能というのは、誰しもが持ち合わせているものではない。


 ユニークスキルの所持率はおよそ0.1%以下。つまり、1000人に一人ほどしかそれを所持している者は居ないという計算になる。


「羨ましいねぇ。どうりで強いわけだ」

 ホーマンはうんうんとうなずく。


「それほどでもありませんよ」

 アラドは笑った。

 

「かっかっか、謙遜するなよ。片腕であそこまで戦えるのは普通じゃねぇ」


 ホーマンの言葉に、アラドは機嫌を良くした。

 利き腕を失って以降、同時になくしてしまっていた自尊心を、少し取り戻した。


「それじゃあ早速なんですけど、仕事はありませんか?」

 アラドは元気よく立ち上がった。


「おう。お前ら新入りに任せる仕事は決まってる! これだ!」


 ホーマンはコルクボードから一枚の依頼書を引き剥がした。

 そして3人が囲んでいるテーブルにそれを置く。


――――――――――――――――

討伐依頼

討伐対象:ゴブリン 10匹

出没地点:リサカの街 北の街道


受注資格:下石級以上

報酬:30G

――――――――――――――――


 その依頼書を見て、アラド達三人は一瞬黙り込んだ。

 ミーシャ特に感想もなさそうに首をかしげ、

 アラドは神妙な顔でうなずき、

 そしてアーリンは……


「はぁ!? ゴブリン討伐って、舐めてるわけ??

 最下級(Fランク)モンスターの討伐なんて、やる価値無いでしょ!

 あと、報酬も安すぎ! なに!? 30Gって。

 三人でご飯食べに行ったらなくなっちゃうわよ!」


 アーリンはギルド中に響き渡る声で怒鳴った。


 が、アーリンの怒りも、ある意味当然だった。

 Fランクの魔物というのは、素人が武器を握っても勝てるレベルの強さ。

 すでに実戦を積んで力を持っているアラド達にとっては、あまりにも簡単すぎる依頼だというのは、間違いない。


「だがなぁ、下石級のやつに出せる依頼は今はこれくらいしかないんだ」

 

「じゃあ依頼なんて受けない」

 ぷい、とアーリンは子供のように拗ねてしまった。

 

「好きにしろ。でも、依頼を受けないなら一生ランクが上がらないぞ」


 簡単すぎる依頼を受けるメリットは薄い。

 ゴブリン10匹を狩るのに掛かる時間を考えれば、おそらく3人で適当な仕事をした方が30Gよりも遥かに多くの金を稼げるのは明白。

 しかし、ホーマンの言うことも正しい。

 冒険者ランクとは、ギルドに対する貢献によって上昇する。

 どんな偉大な冒険者であれ、最初はゴブリン狩りのような、簡単な仕事からはじめるものだった。


「依頼、受けます」

 それをよく知っていたアラドは、立ち上がって、依頼書を手にとった。


「おう、受けてくれるか」


「ちょっとアラド! 勝手に決めないでよ」


「そうは言っても、他に選択肢はないだろ?」


「むむむ……そうだけどさぁ」


「アーリン。コツコツ頑張ろうよぉ。30Gでも、けっこう節約すれば3人で一日分くらいの生活費にはなるし、毎日一個づつ依頼をこなしていけば、少なくとも生きていけるし」

 ミーシャはのんびりとした口調で言う。

 彼女はアラドとアーリンの二人とは違い、それほど野心も無かった。

 二人と一緒にいられるだけで幸せ。それが彼女の思考の全てだった。

 だからむしろ、彼女にとっては簡単な依頼というのは望むところ。


「ミーシャ、私はもっとガバッと稼いで、装備を集めて、どしどし強くなりたいわけ。コツコツ地道になんて嫌だ……って、まあ、言っても無駄かぁ」


 アーリンは大きく肩を落として、席を立ち上がった。


「勝手にすれば?」

 そう言って、アーリンは一人でギルドから出ていってしまった。


「あははは、気が強いのか、弱いのか、よくわからないねぇ。あのお嬢ちゃんは」

 ホーマンはその背中を見て笑っていた。 


「アーリンはそういう奴ですから」


 そう言いながら、アラドはそのまま正式にゴブリン退治の依頼を正式に受注し、ミーシャと二人でギルドを後にした。



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