プロローグ
死後の世界に輪廻転生。そんなことに夢を見る人間は現世に満足できてなく不満にまみれた人間なんだと思う。それは僕も同じだ。そんな人間が生まれ変わったとしても満足いく人生を謳歌できるとも思えない。
今を変えることを放棄し逃げ出した人間が生まれ変わったら立ち向かえると思えないのだ。そう、だから僕がしたこの行動は改善のための行動じゃないし、来世に期待をして行った前向きな行動ではない。
どうしようもない逃げの一手。来世になんか期待していない。
よく言うではないか自殺した人間は甦ることもできず無の世界でさまよい続けると。
僕は誰にも邪魔されないところで一人ただその世界に佇んでいたいのだ。
そう思って行動した僕にとって今目の前に広がるこの世界が無とは思えなかった。
夕暮れに揺れる僕の体と倒れた椅子。周りを見渡してみると僕がこれまで暮らしていたよく知る風景だ。
ただ一つ疑問が浮かぶとすれば僕の揺れる体のそばに一人。黒いスーツを着た女性が一人立っているということだ。
「初めまして、鳳桃李さま。今回あなたの魂を扱います死神のタナトスと申します。今回の死についてこれからのご説明をさせていただければと思います」
これが僕と死神との出会いだった。