いつかめ(*>∀<*)さんさい!<パンパカパーン
「ロリちゃん、お誕生日おめでとー!」
「えへへ、ありがとうございます~」
そうです!今日はロリさんの3才の誕生日!
ホールの白いケーキを囲んで会社の同じ制作チームの上司さん達に祝ってもらってるみたいです、しかしなんで居酒屋?
「ささ!ロリちゃん火を消して!」
「ふー!ゴッホゴッホ!フィンセント・ヴィレム・ファン・ゴッホ!」
ロリさん……今のジョークは寒いですよ
「……おめでとー!わーわー!」
「じゃあロリ君から選んでいいよ」
「じゃあ~これでお願いします!」
ロリさんも社会人が板についてきましたね……なんか可哀想
「なんだ?一番小さいじゃないか~今日は周りに気を使わなくて良いぞ、大きいの選びなさい!」
「そうそう!ロリちゃん甘いの好きなんでしょ?」
「じゃ、じゃあお言葉に甘えてそれで」
ほんと歳の差が有りすぎるせいか、娘のように扱われてるんですねぇ
「しかしロリさんも3才ですか、なんか自分の子供の成長をみているようで涙が……」
「そういや高橋さん家は皆20歳以上ですもんね」
「そうそう、ロリさんぐらいの年齢の時は可愛かったんだけどねぇ、ロリさんはグレたりしないでね?おばさんショック受けちゃうから」
「ロリ君はないでしょ、まぁ反抗するってことも少しは覚えなきゃ隣にいるJさんに何されるか分からないですけどね」
「ふぐっ!わ、私はそんなことしません~だいたい、か弱いようj……子供に手を出すなんて愚かな人間のやること!ロリコn、淑女なら眺めて愛でるのです!」
Jさん、本当の淑女なら周りがドン引きするようなことを平然と熱く語りませんよ……当のか弱い子供もドン引きして目を点にしてますし
「まぁそういうことだから安心しなさいロリちゃん」
「ふっふっふ……"何がそんなことだから"なんですかな?淑女のJさんよ……」
ナイスディフェンス!……じゃなくて二人ともフォークでのちゃんばらゴッコはお止めなさい
「まったく……人の心を読む幼女は嫌いだよ」
「読む?ふっ、貴女からでる欲望を感じただけですが?なぜケーキのイチゴを最後まで残したと思っているんですか?」
「イチゴ好きな私に見せびらかすため……ハッ!悪趣味な幼女はもっと嫌いだよ」
「欲望を隠すのが下手すぎて、へそで茶が沸けちまうですよ」
「ほー?言わせておけば……」
「このフォーク一筋でなんでも食してきたフォーカーの私とフェイシングでも?」
こらこら、上司さんに怒られますよ!
「こらこらお前らお前ら」
ほら言わんこっちゃない……
「ルールを決めなきゃダメだろ」
そうそう……っていや、そこですか?
「たし……」
「かに……たらば蟹」
「ロリ君はイチゴを取られたら敗けでJ君はケーキの一部を削られたら負けだ、いいな?」
「くっくっく……愚かな人間だなですよ……3才になったニューロリの性能を見せてやるです」
「たかが3レベ、地上で3年しか生きてない幼女がこの30レベの私に勝てるとでも?」
煙が漂う店内の片隅、両者は椅子を向き合わせ静かにフォークを構えて空いている手はそっとテーブルに添える。
常人なら分からないが、今この場所に武術を磨いた達人がいたら腰を抜かしていただろう……
何故かって?もう戦いは始まっているからだ!両者の目から放たれる目線の掛け合い、お互いに緊張の汗がツーと一筋流れる。
でた、やっぱりこういう場面で出てくるんですね実況のお兄さん
「アッツ!!」
どこからともなく聞こえた男の声が戦いの火蓋を切った、先手をとったのは……
「遅いわよ若造」
30レベルのJさんだー!イチゴを狙い正確に真っ直ぐ伸びるフォーク、取ったと口角を上げた時だった。
「遅い」
3レベルのキュア・ロリ・イタリアンはフォークを弾いて方向をそらした。華麗なるフォーク裁きに誰もが固唾を飲む
「ふ、平成の長槍兵ってか?楽しませてくれるじゃない」
幾度となく響き渡るアルミ同士がぶつかり合う音は店内の音楽をかき消す
「ふぁ~、レベルってやつはあてになりませんなぁ、まだ風呂場で戦ったハエの方が強い」
「くっ……」
「感情的な攻撃は反って己を滅ぼすってね」
「そんな馬鹿な」
自分のフォークが視界にはいった瞬間、Jは周りの音がピタリの聞こえなくなる、驚き?絶望?いや、自分の愚かさで。
「そろそろ締めのお冷やとしますか」
どこまでも涼しげな彼女の、女らしい静かで華麗な一振りは、相手のフォークの先を簡単に叩き折った。
「まるで作られた戦い……」
高橋の言う通りだった。
正確かつ美しく相手を負かす、初めから計算していなきゃできない技だった。
これは戦いなど大層なものではなくロリによる起承転結がちゃんと設定された小説に過ぎなかった。
「私は始めっから……手のひらで転がされていたのか」
「転がる?私の小説ではそんな美しくない表現はしませんよ、正確には踊らされていた……です」
「嘘だあ!信じられるものか!」
「では美味しく頂きます」
悔しそうに顔を歪ます彼女の前で、ロリは煽るように、満面な笑顔でわざと味わう事なく飲み込んだ。
「あ、あのぉお客様……」
実況のお兄さんが満足げにいなくなったからやっと私の番……って困った表情で店員さんが来ましたよ
「その……店内のルールでフォークやお皿を壊した場合、二千円の弁償か2時間の皿洗いになりますけど……」
「素晴らしい戦いを見せてもらったから私が払おう」
「いやぁ……っとですね?壊した本人が払わなきゃいけないルールでして……」
ロリさん、「私?」みたいな顔をしてないで、貴女ですよ!二千円くらい持ってますよね?
「クックック……これが起承転結の"結"よ!まだストーリーは終わってなかったのだ!」
「で?ロリちゃんお金はあるの?」
「……Jお姉ちゃん」
「あらあら~?ないのぉ?ねぇ、ないのぉ~?」
ここぞとばかりに煽らないの!大人げないですよ。
この後、2時間の怒濤の皿洗いをして無事終電を逃しましたとさ……
―― HAPPYEND ――