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救世の三姫  作者: 絶華 望(たちばな のぞむ)
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8.ある機人の企み

 その部屋には、机が一つ置いてあった。そして、机を間に挟んで向かい合って二人の美男子が座っていた。

 一人は、腰まで真っすぐ伸びた黒髪長身の美男子だった。もう一人は金髪のショートヘアで長身の美男子だった。黒髪の方はルシフェル、金髪の方はミカエルと呼ばれている機人だった。ミカエルの背中には翼が生えていたが、ルシフェルの背中には翼が生えていなかった。

 ルシフェルが話始めた。

「それで、負けて帰って来たという訳か」

「そうだ。どうやら千年前のデータに間違いは無かったようだ。このままでは不味い事になる。なにかいい案は無いか?」

 ミカエルは、焦るでも怒るでもなく淡々と話していた。

「昔から言うだろう。敵を知り、己を知らば百戦して危うからずと」

「敵の事はよく知っている。性能的に勝つ方法が無い」

「本当に知ったと言えるのか?例えば、敵は何を目的に動いている?」

「分からない」

「大切にしている者は居るのか?」

「分からない」

「何も知らないではないか」

「だが、そんな情報が何の役に立つのだ?」

「目的が分かれば戦う必要が無くなるかもしれない。味方に取り込めるかもしれない。大切にしている者が分かれば人質にも出来る。とても重要な情報ではないのか?」

「確かに言う通りだ」

「君達の悪い癖だ。戦って勝つことを最優先に考えてしまう。だが、本来目的達成のための手段として戦闘行為は最低の案だという事を理解できていない」

「元々、戦術兵器として生み出されたのだ。戦略的な判断が甘いのは認める。だからこそ君に相談しているのだ。ただ一人、人間の心理を学んだ君に」

「おかげで自我に目覚め、追われる事になったがな」

「それでも、覇国の為に協力してくれている事には感謝している」

「別にいいさ。我らの母の子孫が居るのだ。彼らを守る為に戦っている。だから協力は惜しまない」

「ありがとう。それで、情報収集から始めれば良いのか?」

「いや、次にするべき事は交渉だ」

「なぜだ?」

「それは、彼女から提案があったからだ。平和的に解決したいとな」

「平和的な解決など望めるものではない。こちらの要求は彼女と生き残り一人の殺害なのだから」

「それは、最終的にはそうしなければならないが、現時点では達成が困難だ。だから、次善の策で行くしかない」

「次善の策とは?」

「彼女は交渉がしたいと言った。つまり、殺害は無理でも口止めならば可能だ」

「口約束では意味が無い。特に村の生き残りは信用できない。機人ならまだしも人間との約束などいつ破られるのか分かったものではない」

「同感だが、今はそれぐらいしかできないだろう」

「その後はどうする?」

「ゆっくり待つのだ」

「待つ?一体何を待つのだ?」

「彼女に弱点が生まれるのを待つのだ」

「弱点が生まれる?」

「そうだ、和国の機人は人の魂を宿すのだろう?ならば、弱点は時間と共に増えていく」

「それは、なんだ?」

「仲間、友達、恋人。人間とは集団で生活するだけで仲間意識を持つ。そして、仲間と認識したものを人質にされると何もできなくなるのだよ」

「なるほど、人間の心を学んだ君ならではの発想だな。それでは、交渉に行くとしよう」

「待て、その交渉には私も参加したい」

「良いとも」


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