6.ある機人の報告
領主の館の執務室に領主ミハエルと機人天使千百四番が机を挟んで向かい合っていた。
「ミハエル様、任務は失敗いたしました。略奪部隊は全滅し、村人も一名生存しています」
「何があった?」
ミハエルは取り乱すことなく冷静に質問した。
「ミリアと名乗る機人が現れ、村人を保護し、略奪部隊を魔法で全滅させました」
「ミリアだと?」
「はい、和人達の伝承にある救世の三姫の一人と同名の機人です」
「ジェシカ。それは本当なのか?」
ミハエルは天使千百四番を人が居ない所ではジェシカと呼んでいた。
「遠くから観察しておりましたが、伝承にある通りの性能までは確認できませんでしたが、少なくとも天使クラスと同等の動きはしておりました」
「それで、熾天使への報告は?」
「すでに終わっております。そして、直接実力を測る為、熾天使全員で向かうと報告を受けました」
「私への処罰は?」
「無しだそうです。今回の失敗の原因がミハエル様に起因するものではないと判断されました」
「そうか、複雑な気分だ」
ミハエルは、悔しそうな顔をしていた。
「ミハエル様は失敗したことがありませんでしたものね。イレギュラーによる失敗とはいえ、納得は出来ないのは理解しておりますが、今回は相手が悪すぎます。ご自愛ください」
「分かっている。勝てない相手に喧嘩を売って、お前を失う事に比べれば一回の屈辱などどうという事は無い」
「勿体なきお言葉」
「ジェシカ。君は俺にとって姉だった。母を幼くして無くした俺に愛情を注いでくれた。とても感謝している」
「私にとってもミハエル様は弟です。あなたの事は私が守ります」
「ミリアとやらが伝承にある救世の三姫ではない事を祈ろう」
「そうですね。覇国の安寧を脅かす存在など、あってはならないのですから」