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救世の三姫  作者: 絶華 望(たちばな のぞむ)


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51.予定調和

 ルシフェルは、和国の布陣を見ていた。隣にはミカエルが居た。

「森で籠城か、森の中央にあるのは明らかに魔力の集積装置だな」

「そうだな、ルシフェル。あれを破壊するか?」

「簡単には壊せぬだろう。守っている者が居るはずだ。それに最初に倒すべき相手は機人ミリアだ。その後は持久戦に持ち込めば容易く勝てる」

「そうだな」

「ミカエル、君に交渉は任せる。と言っても、月読もこちらの思惑を知ったうえで乗ってくるはずだ。何も問題ない」

「ああ、四対一で戦い。僅差でこちらが勝つ」

「月読は僅差で我らに勝つと思っているだろうがな」

「その為の魔力貯蔵装置という訳か」

「そうだろうな。こちらが補助機能の使用禁止を条件にする事を見越して、代替となる魔力を貯蔵し使用する」

「だが、タネが分かれば問題ない。こちらもそれに備えるだけだ」

「そうだ。こちらには智天使が居る」

「では、行ってくる」

「気をつけてな。ミカエル」

「ああ」


 ミカエルは、ガブリエル、ウリエル、ラファエルを従えて、和国が布陣する森に地上から近づいた。覇国の機人達は森を半円で囲むように布陣している。もちろん、攻撃が当たらない距離だ。

 ミカエルたちが近づくと、和国の陣から一人だけ徒歩で進み出て来た。それは月読が操る機人ミリアだった。

「さて、これから決戦を行うという事で良いのかな?」

 先に問いかけたのは月読の方だった。

「まあ、そう言う事になるのだが、お互いに犠牲は最小限に留めたいと思っていると受け取って良いのか?」

 答えたのはミカエルだった。

「そうだ。犠牲になるのは僕だけにしたいと考えている」

「こちらも、熾天使四人で済ませたい」

「だが、条件を付けるつもりだろう?」

「ああ、こちらが犠牲を厭わずに戦えば、村人の大部分を殺すことが出来る」

(月読。それだけはさせないで)

(分かっています。桜)

「それをされては困る。何をしたら、村人を殺さずに敗北を認めてくれるのかな?」

「補助機能の使用禁止が条件だ。あれを使われては我らに勝ち目がない」

「いいだろう。こちらからも条件を付けたい」

 月読は補助機能の封印をあっさり約束した。理由は簡単だった。最初からエナに全ての補助機能を与えるつもりだったからだ。

 光の精霊はエナにとって役に立たないが、他の精霊達は全てエナにとって有益だった。闇の精霊は隠形を強化し、火の精霊は火力の増強、風の精霊は速度の向上、水の精霊は治癒能力の強化と体調管理、土の精霊は物理防御強化ができる。エナを勝利させる為、何よりもエナを死なせないために月読は、その選択を行った。

 そして、月読はその上で最後の条件を付けたかった。それは熾天使にとっても魅力的な提案だった。

「どんな条件だ?」

「お互いに殺さないという条件だ。そちらにとっても有益な条件だと思うが?」

 ミカエルは瞬時にメリットとデメリットを考えた。結果、勝利後の条件を付けるだけで自分たちにも月読にもデメリットが無いと判断した。

「いいだろう。その代わり勝利後の条件を付けさせてもらう」

「構わない。その条件だが、補助機能をそちらに預ける事と、武装の解除、そしてエナと僕の行動制限という認識で良いか?」

 月読はミカエルの回答を知っていた。

「それで構わない」

「他に条件は?」

「ない」

 ミカエルは簡潔に答えた。実際、お互いに殺さないという条件以外は全て想定内だった。

「そうか、なら交渉成立だ。僕が勝ったら、君達は敗北を認めて和国の独立を認め、僕と桜とエナに干渉しない」

「良いだろう。だが、我らが勝った場合、君の戦闘能力を封印し、エナは監視下に置かせてもらう。それ以外の村人は武装を解除するのなら命は助けよう」

(桜、この条件で良いですか?)

(うん。この条件なら良いよ)

 桜は勝っても負けてもエナも村人も助かると信じた。

「こちらも、その条件で問題ない」

「では、決着をつけよう」

 ここまで、ミカエルも月読もお互いに勝利条件を満たしていると思っていた。


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