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救世の三姫  作者: 絶華 望(たちばな のぞむ)


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46.ルシフェルの企み④

 いつものように覇国の首都アバロンでミカエルとルシフェルは机を挟んで議論をしていた。

ル「事態は、急を要する」

 ルシフェルはミカエルに告げた。

ミ「間に合うのか?相手の準備がすでに整っていた場合、無駄死にだが」

 ミカエルもルシフェルと共通の認識を持っていた。月読が隠蔽していた情報、魔力の貯蔵と貯蔵した魔力を使用する事により、機人と対等以上に戦える人間の存在を確認したからだった。

ル「五分五分だろう。月読がこちらの動向をどこまで正確に予想していたのかは分からないが、最悪を想定するのなら、すでに準備は整っていると見るべきだが、そうではない」

ミ「月読が情報を隠蔽しようとしていたからか」

ル「そうだ、準備が整っているのなら隠す必要が無いからな。今すぐ全軍でもって攻め入る必要があるが、行けそうか?」

ミ「すぐには無理だ。貴族たちを説得するのに五日、そこから全軍を集結するまで一ヶ月はかかる」

ル「やはり、権天使の足の遅さに引っ張られるか」

ミ「だが、ドミーの報告を見る限り、権天使抜きだと火力が不足する恐れがある。時間はかかるが待つしかあるまい」

ル「あの、要塞を具現化する魔法か」

ミ「ああ、複合装甲の要塞を具現化している。鋼芯徹甲弾でも打ち抜けない。榴弾の熱も遮断する厄介な装甲だ。唯一神の白金の武器でなら突破は可能だが、神の白金で出来た武器を所持しているのは、座天使九人と熾天使四人の十三人しかいない」

ル「その人数で突撃したとして、相手の数は二千人。しかも、最悪を想定するのなら全て座天使並みに強い可能性がある」

ミ「我ら熾天使ならば、座天使に遅れは取らないが……」

ル「勝算が薄い。こちらがとるべき作戦は変わらない。最初から機人ミリアを倒す事だけを考えてきた。和人が強くなったとて、機人ミリアの脅威に比べればまだ対処は可能だ」

ミ「となると、やはり人質にしての一騎打ちか」

ル「最初から、それ以外に選択肢は無いのだ」

ミ「残った和人はどう対処する?」

ル「持久戦に持ち込めば勝てるだろう」

ミ「ふむ、魔力は無限ではないという訳だな」

ル「そうだ。強化された和人と機人ミリアが連携して戦った場合、我らは完全に敗北する。だが、機人ミリア単体と和人だけの部隊なら、どちらにも勝利は可能だ」

 ルシフェルは自分の作戦に自信があった。

ミ「君を信じよう。ルシフェル」

 ミカエルはルシフェルを信じていた。

ル「決戦は七月頃か」

ミ「そうなるな、だが君の提案のお陰で、まだ負けていない。勝つ可能性が残った」

ル「賭けだったが、座天使九体の出撃を取り付けてくれた君のお陰でもある」

 二人は信頼しあっていた。お互いに足りない物を補い合いながら、お互いの守りたい者の為に力を合わせていた。


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