救世の三姫

３４．村の秘密

　お守り様を着けてレミの元に戻ると、レミは嬉しそうにカナタを出迎えた。

「おめでとう。無事通過できたのね」

「ああ、だが、あの面接は何なんだ？あんなので何か分かるのか？」

「月読と名乗った彼女が救世の三姫ミリアよ」

「え？」

「だから、あなたが嘘を吐いたか判別して信頼できる人間か試しているの、嘘つきは弾かれるわ」

　カナタは驚いていた。月読が救世の三姫だったこと、救世の三姫が人間と遜色ない外見をしていた事、そして嘘を見抜く方法を持っている事に衝撃を受けていた。

「たったあれだけの質問で分かるのか」

「人間には見えないものが見えてるらしいわよ」

　カナタは言葉を失った。救世の三姫の性能は知っていたが、詳細な機能までは把握していなかった。

「それで、どうして救世の三姫の存在を隠しているんだ？」

「ちょっと複雑な事情があるんだけど、本人が救世の三姫だと自覚していないって言うのが最大の原因かな？」

「自覚していないのか？」

「ええ、だからこの村で、あの子を救世の三姫として扱う事はタブーなの」

「もし、破れば？」

「村を追放される」

「なぜ、そこまでする？」

「彼女を救世の三姫として扱えば、彼女が村を出ていくからよ」

「なるほど、自覚が無いっていうのはそういう事か」

「そう、だから救世の三姫抜きで私達は覇国に勝つのよ」

「勝てるのか？」

「勝てるわ。だって、救世の三姫ミリアが協力してくれるもの」

「言ってることが分からないぞ」

「救世の三姫として一緒に戦ってはくれないけど、救世の三姫ミリアの宰相の器としての機能は利用できるって言ったら分かるかな？」

「なるほど、理解した」

　カナタは理解した。救世の三姫ミリアは宰相の器だった。人民を指揮し戦うのは将の器の役目だった。宰相の器の役目は補佐、王に民を幸せにする方策を献上するのが役目だった。つまり、彼女を旗印にするのではなく勝つための助言を得て覇国に勝利する。

「やっぱり、あなたは理解が早いわね。どんな仕事をしてたの？」

「建築技師だ。城の設計図を書いていた」

「やっぱり、頭が良いのね」

「いや、そんなことは無いさ。周りに恵まれただけだ」

「謙遜するとこ大好きよ」

「面と向かって好きとハッキリ言われると勘違いするぞ？特に君のような可愛い女性がむやみに言う言葉ではない」

　カナタは顔を逸らして頬を赤らめた。

「勘違いしても良いよ。でも、遊びには付き合うつもりは無いから、ちゃんと父さんに交際を申し込んでね」

　そう言って、ほほ笑んだ。

「話がそれてる。まだ質問がある。このお守り様は何なんだ？」

　カナタは、逃げるように話を逸らした。あのままレミの話に付き合っていたら結婚を申し込む事になりそうだった。

「それたって良いじゃない。でも、話を戻すわね。それこそが人間が機人に勝つためのアイテムよ。詳しくは父さんから説明があるから聞くと良いわ」

「父さんってカイさんが君の？」

「そうよ」

　カナタは目を丸くした。あの筋肉から、この可愛いレミが生まれたというのが衝撃だった。

「全然、似てないんだな」

「私は母さんに似たのよ」

「そうか、そうだよな」

　そして、カナタはもう一つの事実にも驚愕していた。お守り様が切り札という事は、腰に下げているこれはとても大事なものだという事になる。それを貸与されたという事は完璧に信頼されたか、盗まれても秘密を暴けないものだから関係ないかだった。

　どちらにせよ。反乱軍は作戦にかなりの自信があるとみた。

「最後の質問だ。あの特別な少女は何者だ？」

「説明は難しいわね。私も全てを聞いている訳じゃないけど、簡単に言えば救世の三姫ミリアの妹よ」

「なるほど、一番近くで直に指導を受けているという事で良いのか？」

「その認識であっているわ。彼女が勝利の鍵よ」

「なるほど、大体見えて来た」

「さすがね」

　それから、カナタはカイから作戦のあらましと注意点を聞いた。こうして、カナタは反乱軍の一員となった。