32.最初の訪問者
プラントEでは、いくつかの変化があったが平穏な日々が続いていた。桜は救世の三姫ではなく、一人の少女として扱われていた。
そこへ、普段なら来ることのない旅人が村を訪れた。その旅人を見つけたのは、カイだった。旅人は中肉中背の中年男性だった。
「よう。見かけない顔だな?旅人かい?」
カイは気さくに旅人に話しかけた。
「いや、ここに救世の三姫ミリアが居ると聞いてきたんだ。本当に居るのかい?」
カイは理解した。月読の言っていた決戦に向けての覇国の作戦が開始されたのだと。だから、カイは月読の作戦に従い。行動を開始した。
「救世の三姫に会いに来たのなら残念だがその噂はデマだ。だが、覇国に反旗を翻したいと思っているのなら歓迎する。俺達は反乱を起こす準備をしている。食料はあまり提供できないが、食料を自前で準備できるなら歓迎する」
「そうか、居ないのか……」
旅人は残念そうにそう言った。しかし、暫く考えた後で旅人は再度問いかけた。
「救世の三姫無しで覇国に勝つ算段があるのか?」
「ああ、勝つ方法を用意してある」
「良いだろう。覇国の圧政にうんざりしてたんだ。どうせ遅かれ早かれ覇国に殺されるんだ。なら、戦って死にたい」
旅人は真剣な眼差しでカイを見た。
「分かった。歓迎する。だが、その言葉が本当か確かめさせてもらうが良いか?」
「ああ、もちろんだ」
カイは桜の元に向かった。それはお願いをする為だった。桜は農作業用の服を着て畑仕事をしていた。
「桜、月読先生に代わってくれないか?」
おもむろに現れたカイの言葉を聞いて桜は素直に従う。
「どうかしましたか?」
「月読先生にお願いがあって来たんだ。村への移住希望者が来たんだが人物鑑定をお願いしていいか?」
(桜、受けても構いませんか?)
(ちょっと待って)
桜は疑問に思った。自分の時には人物鑑定なんてされた覚えは無かった。なぜ急にそんな事をカイが言い出したのか疑問に思ったのだ。
「いいけど、なんで人物鑑定するの?私とエナの時はしなかったのに」
「ああ、元々してなかったんだが月読先生は人にものを教えるのが上手いだろ?」
「ああ、うん」
「それって、その人の事をちゃんと理解していないと出来ない事なんだ。だから、月読先生が大丈夫だと言ってくれるなら心強いなと思ってな」
「分かりました」
(月読、協力して)
(畏まりました)
桜は承諾した。桜としても一緒に暮らす村人が変な人だったり危険な人だったりしたら不安だと思ったからだ。




