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救世の三姫  作者: 絶華 望(たちばな のぞむ)


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29.宮工玄

 ゲンは悩んでいた。カイとカイルは昔から戦闘訓練を積んでいた。それは、王族の末裔として武術を継承していたからだ。一般人の自分は戦闘訓練などしたことが無い。

 だが、桜の役に立ちたかった。覇国の横暴にはゲンも腹を立てていた。どうにかして戦う方法が欲しかった。だから、ゲンは月読に聞いた。

「なあ、先生。俺は武術を習ったことがねぇ。それでも機人に勝つことが出来るか?」

 ゲンの質問の答えを多くの村人が知りたがっていた。

「条件は限定されますが、勝つ方法はあります」

「どんな方法だ。教えてくれ!」

「遠距離からの狙撃です」

「狙撃って、授業でやった鉛玉を飛ばすやつか」

「その通りです」

「だが、火薬ってやつが必要なんだろ?」

「火薬の代わりに魔力を使えば可能ですが、条件があります」

「条件?」

「普通の銃弾の速度で撃ちだしても機人には通用しません。撃ちだしの速度は最低でも音速レベルでなければ魔法で防がれてしまいます」

「それなら、魔力さえあれば可能な気がするが」

「魔力の量が問題です。音速ともなれば莫大な魔力が必要となります。そうなると継戦能力に不安が残ります」

「どうしたら良い?」

 月読は魔力の消費量をシュミレートして、答えを導きだした。

「照準を手動で行い。百発百中が実現できれば、実用レベルと言えるでしょう」

「照準を手動っていうと?」

「銃身と弾は魔法ではなく本物を作り、照準は手動で行うのが良いでしょう。音速の弾丸を魔法で軌道修正するのは魔力の消費量が大きすぎます」

「なるほど、正確に狙う技量が必要ってわけだ」

「その通りです」

 ゲンは納得するのと同時に、自分にも戦う方法がある事を喜んだ。

「訓練の仕方を教えてくれ」

「畏まりました」

「俺もその方法を知りたい」「私も」「ワシも」

 他の武術の心得の無い村人たちも月読の示した方法ならできそうだと勇気づけられ、我も我もと手を挙げた。


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