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救世の三姫  作者: 絶華 望(たちばな のぞむ)


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27.皇麗美

 月読との約束も果たし、レミは月読によって変わった日常の中に居た。大きな変化だったが、桜はあまり気にしていない様だった。これも月読の言った通りになった。

 明らかにおかしいお守り様の存在や戦闘魔法に特化しつつある魔法の授業、それに戦闘訓練。どれをとっても反乱の準備としか思えない出来事なのに桜は疑いすら持たなかった。

 どれもこれも桜を守る為に行っていると説明されれば納得していた。だからこそレミは心配だった。桜は簡単に騙される。人が良いと言えば聞こえが良いが、月読が居なかったら彼女はどうなっていただろうと心配になる。

 そして、カイルの事を少し良いなと思い始めている桜の気持ちにも気づいていた。妹として兄の事は尊敬している。からかったりするが、それは面白いからであって侮辱しているわけではない。

 兄は真面目で融通が利かない。奥手でシャイで自分の気持ちを口に出せない性格だった。だから、レミは兄が口に出せないことを代わりに言うようにしていた。

 あの時は、桜も初対面でカイルを異性として意識はしていなかった。だが、戦闘訓練での兄は妹の目から見てもカッコよかった。少し安心もした。だが、相手は機人だ。子供は産めない。産めない理由が想像していたものとは違ったが、産めない事には変わりが無かった。それを兄は承知の上で桜の事を想っていた。

「世の中上手くいかないもんだな~」

 と独りで言っていたが、レミ自身の恋愛事情も問題含みだった。この村の男は真っすぐな人間が多い。というか真っすぐな人間しかいない。レミにはそれを魅力的だと思わなかった。

 もっと知的な男性が好きだった。それは兄のような、月読のような存在だった。どちらも結婚できないという問題がある。

 だが、月読が希望を持てるような事を言っていた。彼が教えてくれた覇国に勝利するための作戦の中にレミの希望があった。

 その為に今のうちに女子力を高めるつもりだった。家事全般は既に問題ないレベルだ。残りはアイドル的要素が必要だと思っていた。だからこそ、魔法の授業で月読に質問をする事にした。


「月読先生。他人を治療する魔法ってあるんですか?」

「ありますよ」

「では、教えてください」

「畏まりました」

 こうしてレミは治癒魔法を習得した。

「月読先生。他人を強化する魔法ってあるんですか?」

「ありますよ」

「では、教えてください」

「畏まりました」

 こうしてレミは強化魔法を習得した。


 準備は整った。後は自分に相応しい殿方をゲットするだけだった。レミは想像する。自分に二つ名がつくとしたらなんと呼ばれるのか夢想した。癒しの姫、魅惑の姫君、そんな名前がつくことを夢見ていた。


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