26.皇海流
桜とカイの手合わせが終わった後で、カイルが月読の前に進んだ。左手には日本刀らしきものを持っていた。
「月読先生。手合わせをお願いします」
カイルはそう言って月読の前まで進むと深くお辞儀した。
(構いませんか?)
月読が桜に確認をする。
(どうぞ)
桜は断る理由が無いので承諾した。
「良いですよ。好きに攻めてみてください」
そう言って月読は自然体の構えを取った。カイルは日本刀を下段に構え月読を見る。その目は桜が知っている優しい目ではなく、獲物を狙う鋭い目だった。桜はその目を見て少しドキッとした。
「皇流刀術、水流の型、奥義、千変万化」
カイルは静かにそう宣言して、攻撃をしてきた。その動きは水流をイメージさせるような滑らかな流れる様な連撃だった。
月読はカイルの動きを見つつ最小限の動きで攻撃を躱し続けた。一方カイルは連撃を絶え間なく放ち続けた。その攻撃は川の流れの様に絶え間なく変化を続け予測が困難な連撃だった。そして、五分たったころにカイルは動きを止めた。
「ここまで、躱されたのは初めてです」
荒い息を吐きながらカイルはそう言った。
「良い攻撃でした。改良の余地はありますが、技の精度を上げるだけで良いと思われます」
「ありがとうございました」
カイルは嬉しそうに礼をした。そんなカイルに桜は声をかけたくなった。
「あの、カイル。とてもカッコよかった」
その言葉を聞いて、カイルは耳まで真っ赤になった。月読の言葉ではなく桜の言葉だという事はすぐに分かった。なぜなら月読はそんな事を絶対に言わないからだ。
「あ、ありがとう桜」
カイルはそれだけ言うとそそくさと逃げた。それを見たレナとレミはお互いを見てニヤニヤしていた。




