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救世の三姫  作者: 絶華 望(たちばな のぞむ)


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24.授業の変化

 農作業が始まっても、月読主催の魔法の授業は継続していた。それは、村人たちからの要請で継続されていた。

 物理学や科学の基本的な説明は一通り終わっていたが、もっと魔法を上手く使いたいという村人たちの要望で継続されていた。

「月読先生。天使型が銃撃を行ってきたときに有効な防御魔法はありますか?」

 その質問はエナからだった。先日、覇国の機人から襲撃を受けた時から、エナの質問はどうやったら機人を倒せるかという質問になっていた。

 桜は、授業を聞きながら、エナに戦ってほしくないと思いながらも、強くなりたいというエナの意思を尊重していた。

「状況によって対応は変わります。戦闘継続時間が短い事が予想される場合は、魔力の消費を抑えつつ防ぐ方法が推奨されます。具体的には銃弾の運動エネルギーは銃弾の質量が小さいゆえに微々たるものです。なので射線上に運動エネルギー消失の壁を具現化させるのが簡単でしょう」

「分かりました。では、戦闘継続時間が長くなる時はどうしたら良いですか?」

「その場合は、思考を加速させる魔法と身体強化の魔法を併用して、銃弾を躱すほうが魔力の消費を抑えられる場合があります。特に戦闘時間の予測が出来ない場合は、この方法しかないでしょう。ただし、魔力の消費量は莫大なものになる事を留意してください」

「ありがとうございます」

 エナは授業では月読と話す時に出来るだけ丁寧な話し方をするようにしていた。なぜなら、他の村人たちが月読の事を先生と呼び、尊敬しているような話し方をしていたからだ。

 自分だけ月読と親しいからといって、馴れ馴れしい態度をとることは出来なかった。

「月読先生。私、熾天使に勝てますか?」

「勝つ方法はあります。ですが、それは生身の人間のままでは命を賭けて魔力を前借するしか方法がありません。僕はそんな方法を教えたくない」

「私、熾天使に勝てるぐらいに強くなりたいです!」

「分かりました。命を削る事なく熾天使に勝つ方法はありますが、まだ教える事が出来ません。ですが、時期が来たら教えます」

「分かりました」

 エナはこういう時に食い下がらなかった。なぜなら、月読が言う事には全て理由がある事を知っているからだ。

「他に質問がある方は?」

 月読の問いかけにカイが挙手をした。

「カイさん。どうぞ」

 月読が指名する。

「魔法の授業も良いが、後で実戦形式の戦闘訓練をお願いしたいんだが良いか?」

 その質問に誰よりも驚いたのは桜だった。

「どうして、戦闘訓練が必要なんですか?」

 桜は月読から体の主導権を奪って会話に割り込んだ。

「その質問は桜ちゃんか?」

「はい」

「この前、約束しただろう?守ってやるって、その言葉に嘘はねぇ。守る為に強くならなくちゃならねぇ。月読先生は人を強くする方法を知っている。だから、教わるんだ。桜ちゃんを守る為にな」

 カイは力強く言った。

「ずるい!エナも月読先生に教わりたい」

 エナが追従すると、他の村人たちも一斉に言い出した。桜はカイがみんなに何を言ったのか知らない。でも、みんなが桜を守る為に強くなろうとしている事は分かった。桜に責任を負わせるのではなく、桜に責任を負わせないために強くなろうとしていた。

 その気持ちを桜は否定できなかった。

(月読。みんなの願いを叶えてあげて)

(畏まりました)

「分かりました。では、魔法の授業の後で、戦闘訓練も行う事とします」

「じゃあ、一番は俺で頼む」

 そう言ってカイは笑顔を浮かべた。


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