表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
救世の三姫  作者: 絶華 望(たちばな のぞむ)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/89

20.村人会議

 桜とエナが家に帰ってから、村人たちは村長の家の前に集まっていた。村長の家の前には焚火が作られ、それを囲むように村人たちは輪になっていた。村の子供以外は全ての人間が集まっていた。

 カイが話を始めた。

「知っての通り救世の三姫ミリアが復活した」

 その言葉を村人たちはじっと聞いていた。

「みなも知っての通り、宿った魂はただの女の子だ。あの子は優しすぎる。戦いには向かない。それでも、彼女を旗印に戦いたいという者は居るか?」

 カイは皆の顔を一人一人見た。村人たちはカイの目を真っすぐに見返していた。

「カイよ。そんな人でなしがこの村に居る別けねぇだろ」

 声を上げたのはカイの親友ゲンだった。

「そうだそうだ。あんな気立てのいい子を戦争の道具に使えるわけがねぇ」「あんな優しい子に戦争なんて無理だ」「俺達で匿ってやろう」

 ゲンの声に賛同する声が続いた。カイはここまでの反応は予想できた。しかし、村人達に隠し事はしないという制約をたてている以上、桜から聞いた事実も話さなければならなかった。

「これは、桜から聞いた話だが、プラントFで虐殺が行われたそうだ」

 この言葉を聞いて、村人たちはざわめいた。

「プラントFは亜人たちに滅ぼされたんじゃないのか?」

 村人の一人が声を上げた。

「どうやら違うらしい。それを目撃したがゆえに桜は覇国から命を狙われている」

 村人たちの顔つきが変わった。激しい怒りの表情だった。

「もう限界だ!反乱を起こすべきだ!」「どうせ殺されるんなら戦って死ぬ!」

 若者を中心に戦いを主張する声が上がった。

「桜を旗印にか?」

 カイは静かに言った。

「違う!桜ちゃんは戦いに参加させない!これは俺達の戦争だ!」「そうだ!そうだ!」

「みなの気持ちは分かった。では……」

 カイが話をまとめようとした時、その場所に桜とエナが姿を現した。

「桜、どうしてここに……」

 カイは怪訝な表情で見た。カイが話をつけると言った時、桜は安堵していた。ここに来る理由が無いのだ。

「僕は月読です」

「月読って補助機能の方か」

「はい」

 月読は淡々と答えた。

「反乱を起こすのは待っていただきたい」

「なぜだ?」

「今は、まだその時ではないからです」

「どういう事だ?」

「僕には覇国を打倒するプランがあります」

 月読の言葉でみなが静まり返った。

「桜は戦争を望んでいない」

 カイが代表して月読に質問を投げかける。

「知っております。その上で言わせてもらいます。このままでは桜は遠からず反乱の旗印にされてしまいます」

「なぜだ?」

「それが熾天使の狙いだからです」

「反乱を起こさせるのが目的なのか?」

「いいえ、人質を増やし、桜を無力化させるのが狙いです」

 その言葉を聞いてカイは言葉を失った。桜の優しさを熾天使が利用しようとしている。

「くそみてぇな作戦だな」

 ゲンが怒りをあらわに言葉を吐き捨てた。

「防げないのか?」

「無理でしょう。防ぐタイミングはすでに失われました」

 カイの質問に月読は淡々と答えた。

「どうしたら良い?」

「桜の為に死んでくれますか?」

 月読の言葉にみんな固まってしまった。その沈黙を破ったのはエナだった。

「私はお姉ちゃんの為に命を懸ける。それで、誰も悲しまなくていい世界が来るのなら死んでも良い」

「エナ。命を懸けるって意味は知っているのか?」

 カイはエナに優しく質問した。

「知ってる。お爺ちゃんとお祖母ちゃんが私にそうしてくれたから」

 エナの純粋な言葉は村人たちの心を打った。エナの境遇はみな知っていた。幼くして両親も祖父も祖母も友達も全て失った子だと。その子が言っている。命を懸けて戦うと……。

「俺も命を懸ける」「私も懸けるわ」「わしもじゃ」

 村人たちは次々と声を上げた。

「では、作戦の概要を話します」

 月読は村人達に覇国に勝利するための作戦を話した。そして、最後にこう付け加えた。

「この作戦は桜に知られてはなりません。知ったら彼女はあなた達を生かす為にこの村を出ていくでしょう」

「この村に約束を破るやつは居ねぇ。それは保障する」

 ゲンが胸を叩いて言い放った。

「それにしても、君は桜と違って優しくないのだな」

 カイが月読を真っすぐに見つめて言いった。その目には、月読を非難する色は無かった。

「ええ、桜が優しい分、僕は冷徹に出来ています」

「だが、そのおかげで勝つことが出来るのなら、君は補助機能として正しい。君はそのままでいてくれ」

「頼まれずともそうします。僕は桜を守らねばなりませんので」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ