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発達障害と受験勉強  作者: 小島 剛
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実例:社会学的な調査 その2

 調査の結果については逐一書かないが、印象的だったのは、月の収入が2万円、支出が2万5千円(貯金もある)の学生も「満足」と回答していたことである。「よく月に2万円で生活できるなあ」が実感であったが、満足だというのである。この学生はインタビューにも答えてくれたので聞いてみると、


 「キッチンの湯沸かし器でお湯を沸かし、トイレまでホースでお湯を引いてシャワーを浴びる」

 「食事は生協で摂るが、午後2時半になると半額の弁当が売りに出るので、それを狙って買っておく」

 などの涙ぐましい努力をしているのである。


 結局、私は、以下の3点を提言した。

「医療・入浴・洗濯・食事など、きめの細かい生活支援の必要」

「奨学金の選考など競争に関する事象についての徹底した情報公開」

「留学生の就職など、京都大学の外部に訴えて満足度を上げる必要がある事象があること」である。




 さて、ここで強調しておきたいことは、これが全く「正解」ではないということである。この調査の「客観性」を疑わせる要素はいくつも挙げられる。

・41.6%しかアンケート回収率がないこと。

・研究対象の選び方が、ランダムではなく、偏っている可能性が否定できないこと。

・自由記述やインタビューの解釈など、主観が入る余地があること。

・調査実施者である私の関心によって、調査対象が「偏向している」こと。

 などが挙げられる。




 だが、わたしは自分が間違えたとは思っていない。そもそもこのアンケート調査を自分で回答してみると30分以上かかる。「調査される迷惑」というものもきちんと考えておかないといけない以上、回答を強制することはできない。


 数字だけを独り歩きさせて、それだけから結論を見出すと大抵間違える。だから主観が入る余地があるからと言って自由記述やインタビューを避けるべきではない。


 そもそも私が偏った人間であり、一番困窮していそうな人間にこそ、一番手厚い手当てが必要だと信じて疑っていないこと。逆に言えば満足していて経済的にも不満がないなら放っておいてもいいのである。



 

 つまるところ、これでいいのかと聞かれれば「これでよかった」のである。私の論考は、


京都大学国際交流センター、2009、『京都大学における国際交流の現状と発展に向けての問題提起』


 に所収されて発表されている。

 「何が正解か」は予め有るのでは無い。自分で作るといった方が良いのである。そのためには学問の方法それ自体の限界や、自分と言う人間がどのような関心を持っているのかをしっかり自覚しておく必要がある。

 こういう学問をするにおいて、

 「次のア~オの中から最も適切なものを選べ」

 的な問題を解いて、たくさん「正解」した者が優秀という行動様式に何か意味があるとでもいうのか?


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