イカレ帽子屋のお茶会
「ここですか……?」
「ああ」
双子と別れてから十数分後アリシアはついに帽子屋の屋敷に辿り着いた。
そこは人気のない森の中、その建物はとてつもない存在感を放っていた。
「凄いですね…………」
思わず口からそんな言葉が出るほど帽子屋の屋敷は浮世離れした豪邸であった。
「はぁ?これくらい普通だろ」
「これを普通だというあなたはおかしいですよ」
堂々とそびえ立つ門に、バラが美しく咲き誇る広大な庭園。
その圧倒的な存在感にも劣らない豪華絢爛な屋敷。
どう見ても一般的な屋敷ではない。
「あぁ?何言ってんだよ。それを言うならあの城の方が普通じゃねぇだろ」
確かにそれはそうだが根本的に国家の象徴たる城と比べることが間違っていると気づいてほしい。
城はその美しさと大きさで国の財力や権力を示すもので、他国にへの牽制である。
そんな建物と比べること自体普通ではない。
「お坊ちゃんか」
「ああ?」
「いいえ、なんでもありません」
明らかに機嫌が悪くなったので、これ以上機嫌を損ねるのは避けたいアリシアは曖昧に濁した。
「どうぞごゆっくり今日届く茶葉を楽しんでください」
「……は?」
「紅茶、届くんですよね?
紅茶好きのあなたならとても楽しみにしていたんではないですか」
アリシアの言葉にレインはあっけに取られたように目を見開いて動きを止めた。
そんなレインの姿がおかしくて思わず笑を零した。
「とりあえず、無事屋敷まで送り届けましたので帰りますね」
そう言って帰ろうとした時レインがアリシアを呼び止めた。
「……おい」
「はい」
「…………お前、どーせ暇だろ」
「いきなり失礼な人ですね。
忙しいですけど」
「そうだろ暇だろ。
茶、入れてやるから庭園で待ってろ」
人の話など聞かずレインはそう言うと屋敷へ入っていった。
「……意味がわからない」
困惑を隠せないアリシアだったがこれで無視して帰るのも後味が悪いので大人しくレインの指示通り庭園に足を踏み入れる。
美しい薔薇が咲き誇る道を歩くこと数分、ガレージが見えてきてアリシアはそこにあるチェアに腰を下ろした。