とある場所にて
「おや、君がここにいるなんて珍しいですねぇ」
クラークは目の前の男にそう声をかけた。
だか目の前の男は振り返りもせず目の前のものから目を離さない。
「明日は雨ですかねー」
「お前何をした」
「はい?」
不快感を隠そうともしない態度でクラークをにらみつけた。
「何をしたと聞いてんだよ」
「別に、何も?」
「時間が進みすぎてる」
その言葉にクラークはわざとらしく驚いて男が見ているものに近ずいた。
「ああ、そう言われれば接触しましたねぇ」
「…………は?」
「いやぁ、偶然あれと出くわしまして」
覗き込んだそこにはひとつの懐中時計と……
「お前ふざけんなよっ」
男はクラークの胸ぐらを掴むと殺気の滲む眼差しで睨みつけて声を荒らげて叫んだ。
けれどそれに怯えを見せるクラークではない。
いつものように人好きする笑顔で不気味に笑う。
「このためにあいつらが……」
「知りませんよそんなこと」
薄気味悪い仮面の笑顔が突如消えて、素顔が顔を覗かせた。
「僕は認めません。
あんなの…………あの人じゃない」
「当たり前だろ。
あれはあいつじゃないんだ」
「僕は未だに“僕”が消えればいいと思ってます」
その言葉に男はクラークの肩を掴んでその頬をクラークが倒れ込むくらい力いっぱい殴った。
「お前最低だな。
あいつの決意を無駄にしてまでそんなに死にたいのなら、1人で勝手に死んでろ」
「…………」
「どうせ死ねないんだろうけどな」
男は最後にそう言ってクラークに見向きもせず部屋をあとにした。
毛先にかけて色が濃くなる独特の色味をもった男の髪が光に照らされて色濃くクラークの瞳に映る。
「……僕は、間違ってない」
俯きそう呟いたクラークの声は男に届くことなく静寂に飲み込まれて消えた。




