白い・・・熊?
ティンダロスの猟犬を倒した後、正確には「食った後」だが、二人はそのまま寝てしまった。
目が覚めたトオルは自分の布団で寝ている子犬のような女の子の扱いに困っていた。
勝手に入ってきた事を怒るべきだがイーヌイが居なければ死んでいた。
命の恩人であるイーヌイを雑に扱う訳にもいかず布団にそっと寝かしておく。
「んー・・・むにゃむにゃ。トォールゥー、子供はねー、五人くらい産めるよー」
「おい起きろ!変な夢見てんじゃねぇ!」
二人は居間へ行くと家族が揃ってテレビを見ていた。
「あら、トオル。母さんは前のお猿さんの手の方が可愛いと思うわよ」
「お!トオル!いかした手になったな!」
「兄ちゃん・・・、中二病はもう流行らないよ」
「・・・予想通りの反応だわ、俺の左手にもっと興味持ってくれよ。で、みんなでテレビ見てどうした?なんか面白いニュースでもやってんの?」
テレビを覗き込んだトオルの目に飛び込んできたのは鉄製の頑丈な檻、そして。
「イーヌイ、あいつ。アニマキヤの世界の奴じゃねぇのか?」
「あ!シマちゃんだ、なんで檻の中に?」
檻の中にいたのは180センチはありそうな大きな女の子。
大きいのは高さだけでは無い、腕も足も体も筋肉でがっしりと幅があった。
白色の毛皮、頭には丸っこい耳、お尻にも丸っこい尻尾が生えている。
そして何より、胸もガタイに見合うほどの巨乳だった。
「なんか白熊みたいな子だな、知り合いか?」
「うん、シマちゃん。すごく強いから都会の方に配属されたはずだよ」
「・・・だろうな」
映し出された頑丈な檻は所々ひしゃげていた。あの子がやったに違いない。
「母さん、このニュース、どういう事?」
「最近ここのドラゴンの他にも各地で変な生き物が目撃されてたらしくてね、この子は喋る化け物として捕獲されたんだって、お肉の入った檻の中で捕まってたらしいよ」
「アニマキヤの人ってアホなのか?・・・母さん、これ生放送?」
「え・・・うん、そうみたい」
トオルはテレビ画面に自分の左手を当てる。
ティンダロスの猟犬の皮を奪った左腕はその能力も一緒に奪っていた。
トオルの腕はトオルが確認可能な範囲で時空を超える。
トオルの左手はまるで水面に手を差し込む様にテレビ画面へと沈んでいく。
消えたトオルの手は遠く離れた檻の出入り口付近から生えていた。
当然テレビ局は騒然とし、その手をカメラで捉え続ける。
「お、良いぞ。見やすい、助かるわ」
トオルはテレビ越しに自分の手の位置を確認すると檻の錠に手を伸ばした。
錠は太い鉄の丸棒を差し込んであるだけだった。強度を考えれば妥当だろう。
トオルはその丸棒を引き抜いた。
「よし、これで後は勝手に逃げるだろ」
トオルは自分の手を元に戻す。
これには流石に両親も驚くだろう、トオルはそう思っていた。
「すごいわトオル!女の子助けるなんて偉い!」
「良いぞぉ!トオル!それでこそ我が子だ!」
「いや!他に驚くとこあるよね!?」
妹だけが驚いてくれた。
テレビ画面には逃げた獣人が映り、中継が切られた。
それを確認するとトオルとイーヌイは今日のパトロールに出かける。
そしてパトロールは何事も無く終わり、二人は家路に着く。
イーヌイ曰く「こんな平和な日が続く予定だった」らしい。
しかしこの日の問題は家に着いてから起こるのであった。
家の前に立つ大きな人影、白い毛皮の女の子。
大きな手に太い爪、トオルを見下ろす程の長身。
トオルはその女の子に見覚えがあった。
今朝テレビで見た檻の中に居た白熊みたいな女の子だった。
「おお!ダーリンおかえり!匂い追ってきた!今日は助けてくれてありがとーなー。いやぁ、意外と近いとこで良かったわぁ」
「え!シマ・・・さん?」
「名前知ってるんか?シマで良いよぉ、ダーリンの名前も教えてくれよぉ」
「ダーリン言うなし、俺の名前はトオルだ」
「トオル!良い名前だぁ、そして良い男だぁ、優しいしなぁ、うんトオルに決めた。トオルの子供産んでやるよぉ、六人くらいでどうだ?」
「ちょっと!シマちゃん、トオルは私が先に手を出してたんだよ!」
すかさずイーヌイが間に割って入る。
「お。イーヌイちゃん、お久しぶりぃー。トオルはイーヌイちゃんの男だったかぁ。でもまだそういう仲じゃない様に見えるなぁ、私にもワンチャンあるなぁ?うふふふふ」
「無いよ!・・・トオル、私七人頑張る!七人産んであげる!」
「・・・どっちもねぇよ、勘弁してくれ」
けものハーレム