協力、そして新たな事件?
焦げる様な匂い、散らばった瓦礫、そして悲鳴。
会社に居た人達は残らず炭になってしまっているだろう。
遠くから、救急車とパトカーと消防車の音が鳴り響く。
トオルはただ、ただただ呆然としていた。理解が追い付いていかない。
「あ!トオル!良かった、トオルは無事だったんだね」
トオルに駆け寄る子犬の様な見た目の女の子、イーヌイがそこにいた。
「無事?無事だって?無事な訳あるか!車が、いや、車なんてどうでも良い!人が!たくさんの人が焼けたぞ!なんだこれ!なんだあれ!こんな光景・・・、そうだよ!なんで今更来てんだ、おまえがここの人達守るんじゃなかったのか!」
トオルはどうしたら良いのか分からない思いをイーヌイにぶつける。
イーヌイは泣きそうな顔で答えた。
「ドラゴンは・・・天災の様な物で・・・」
「ドラゴンが居た事知ってるんだな、おまえ、ほんとは間に合ってたんだな」
「ごめん!ごめんよ!でも、私だって怖くて、私なんて・・・立ち向かってもドラゴンのオヤツにすらならない・・・」
「・・・他の奴呼べよ、おまえいらないよ」
「ごめ・・・なさい。でも、ドラゴンに勝てるアニマキヤ人なんていなくて」
トオルは無言で歩いて家に向かって歩きだす。
イーヌイは付いて来ない。
トオルが振り向くと、イーヌイは必死で走り回っていた。
「誰か・・・誰か生きてる人いる!?」
イーヌイの耳がうめき声を聞き分ける。
「そこだね!待っててね!」
イーヌイは瓦礫を退け続ける。息のある人を探し、ひたすら瓦礫を退けていた。
トオルは本当は気付いていた、イーヌイが悪い訳じゃない事を。
「・・・くそっ、最低じゃねぇか、俺」
「イーヌイ!ここか!?ここに人がいるのか?」
トオルも瓦礫を退けるのを手伝うが人間が素手で退けるには無理があった。
トオルの手がボロボロになっていく。
「トオル・・・なんで・・・」
「ごめん、俺が悪かった。助かる人がいるなら一緒に助けよう!レスキュー隊が来るまでまだ時間がかかるかもしれない」
「トォールゥー、やっぱ良いー奴だなぁ・・・ぐすん、ぅぅー」
「泣いてる場合か、レスキュー隊来たらおまえの姿見られる前に帰るぞ、・・・一緒にな」
二人で家に帰ると母親が待っていた、トオルの姿を確認すると駆け寄ってくる。
「ああああ、良かった、良かったよぉー、トオルが行った方向で大きな事故があったって聞いて、気が付いたらイーヌイちゃんまでいないし、良かったよー、良かったよぉ」
家に入ると父親と妹が居た。
父親は会社をサボり、妹をすぐに連れ戻しに行ったらしい。
トオルは手を消毒し、包帯を巻いた。
みんなが落ち着いたところでイーヌイが口を開く。
「あいつは、ドラゴムートの生態系の頂点、ドラゴンだ。ドラゴンと言っても色んなのがいるんだけど、あいつはその原種、だからただ単にドラゴンと呼ばれてる」
「・・・あいつの行動は、悪意では無いのか?明らかに攻撃してきただろ」
「炎の事か・・・、あれはただのゲップだよ。お腹に溜まりすぎたガスを吐き出した。それがたまたま可燃性で、たまたま人が多く居た」
「そんなの有りかよ・・・、なんでここに来たんだよ」
「それはあいつにしか分からないよ、でも、来れるようになったから見に来ただけな気がする。あいつらはそういう奴らだから。つまらなかったから帰ったんだろうと思う」
「また・・・、来るのか?」
「しばらくは来ないと思う。ドラゴンは頻繁には行動しないんだ、ドラゴンの匂いにびびって他のドラゴムートの連中もここには来づらいはずだよ」
「もう一つ、気になる事聞いて良いか?イーヌイは、俺らのために来た人達の事をアニマキヤ?って世界に限定してたな?アニマキヤは友好的な世界って事で良いのか?」
「うん、アニマキヤはリアレタスと似たような気候で、同じ様に家族で暮らし群を作る。だから似た様な価値観持ってるし、リアレタスと仲良くしたいって人が多いんだ」
「そうか、よし。仕事無くしちゃったし、俺もイーヌイを手伝うよ。この世界の事まだ良く分からないだろ?一緒に行動した方が都合が良いはずだ」
「本当か!トォーオルー!」
「こら、抱きつくな!」
テレビはどこの局も今回のドラゴン騒ぎを報道していたが、証拠は携帯電話で撮ったような写真しか無い為疑問の声も多かった。
ダウンバーストと火災が重なった物として調査が進んでいるらしい。
それでも説明しきれず、ドラゴンの目撃者も非常に多い、世界は混乱していた。
そして、同時に違う何かも水面下で動いていた。
トオルはインターネットで異世界関連だと思われる目撃情報を見つけた。
それは電車にまつわる体験談。同じ経験をした人も複数いる。
電車に乗っていたら知らない土地の知らない駅に着いたというものだ。
降りてしまった人の書き込みは途絶えてしまっている。
降りなければまたいつの間にかいつもの路線に戻っているといった内容。
その誰もがそこで恐ろしい体験を語っていた。
時間の流れが違う、他の乗客がみんな寝てしまっている、駅の外から視線を感じる。
降りてしまった人達は太鼓や鈴の音を聞いたり、体の欠損した人間やおかしな言動の人間に会っており、途中から書き込みが消えてしまう。
いつもなら、良くあるオカルト話だと一蹴するところなのだが・・・。
トオルはイーヌイの意見を聞く事にした。
そうです、あの駅です。き〇ら〇駅です。
これからもそういうのリスペクトした内容挿んでいきます。
もちろんそのまま使うような事はしませんのでご容赦ください。