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ひとつむこうのこちらがわ  作者: 枝節 白草
3/18

日常の終わり

結局イーヌイを居候として迎え入れるはめになった。

話が嘘なら追い出すという条件付きだったがイーヌイは快く了承した。

しかし当然同じ部屋で寝る事だけは断り、イーヌイの布団を居間に敷く事となった。

はずだった・・・のだが。


トオルは爽やかな日差しと目覚まし時計の音によって目が覚めた。

まだ少し重い瞼を頑張って開けようとするが暖かい毛布がそれを拒む。

「あと・・・五分・・・」

今日の毛布はやたらとふわふわしており、丁度良いサイズの抱き枕まであった。

「あれ・・・俺抱き枕なんて使ってない・・・」

抱き枕を手探りで確認していると、ふいに抱き枕が動きだした。

「ん・・・んんん、あん。もー、トオルは意外とエッチな奴だな」

状況を理解したトオルの目が一瞬で覚醒し、布団から勢い良く飛び出した。

「イーヌイ!?なんでここに居るんだよ!」

「ん?知ってて触ってきたんじゃないのか?ほら、トオルのここ、・・・こんなに」

「朝の生理現象だ!」


騒いでいると、部屋の扉が開き母親が現れた。

「ちょっと、何さわいで・・・。あー、そういう・・・、朝からやめてよーもー」

「誤解だよ!」

母親はニヤニヤしながら部屋を退散していった。


「はぁー、・・・で?なんで俺の部屋に?」

「あー、居間に先客が居てな。私が居ると怖いみたいで、ほら、私居候じゃん?私なりにその先客に気を使ったんだよ」

「先客?」

「猫、ミースケって名乗ってた」

「会話できるのか、すげぇな。って、違う!気を使うなら俺に使ってくれ」

「もー、体触ってきておいて文句言わないでよー」

「不可抗力だ!」


一階に降りると妹と目が合ったが、トオルに対する軽蔑の視線が痛かった。


「じゃあ仕事行ってくるわ、イーヌイは母さんの手伝いでもしてろよ」

「お?付いて行こうか?護衛してあげるぞー」

「勘弁してくれ・・・」



トオルは高校を卒業した後就職した。

働きだしてからまだ日が浅く、まだ会社に馴染めていない。

イーヌイとのやり取りで家を出るのが少し遅れたため急いで車に乗り込んだ。


しかし、こういう時に限って道路は渋滞を起こす。

道の前の方がどうなっているのか見えない。

遠目に会社は見えているというのに車が進まない、車を置いておくような場所も無かった。

クラクションの音まで響きだす。

「やっべぇな、事故か?」

トオルもイライラしだしたその時、事件は起こった。


ボンネットに降ってきた丸太の様な物がトオルの車を凹ませる。

緑色のヤスリの様な物が無数に付いており車体を更に削り取る。

ガラスにもヒビが入りトオルは慌てて車を飛び出し、ソレが何なのか理解した。


ソレは、長大な尻尾の先端でしか無かった。

百メートルを超える巨大な爬虫類の様な生き物、背中に生えたコウモリの様な翼、頭には角が生え、大きく開いた口には鋭い牙が見える。

この生き物を何と呼べば良いのか、ファンタジーが好きな人ならすぐに分かるだろう。


「ドラゴンんんんん!?」


その後ドラゴンは渋滞した車を踏み潰し進んで行く。

逃げ遅れた人のいる車の中がどうなっているのか、考えたくも無かった。

そして、ドラゴンの口から霧の様な物が吐き出される。

次の瞬間、ドラゴンが一瞬だけ顎を閉じて歯を噛み合わせると火花が飛び散り、吐き出した霧に引火、とある建物を巻き込んで火の海が出来上がった。


「会社が!燃えちまった・・・」


ドラゴンの翼が高く持ち上がる、飛ぶつもりだろうか。

トオルはハッとした、あのサイズの生き物が巨大な翼を羽ばたかせたらどうなるか。

近くの建物を盾にし、すぐにしゃがみ込んだ。


ドラゴンの翼が空気を叩くと風圧で近くの民家が潰れ、瓦礫が飛んできた。

ドラゴンの巨体は、まるで何も無かったかのように空へと消えていく。


燃え盛る大地と、多くの瓦礫だけがそこに残っていた。

会社周辺全てが地獄絵図となり、トオルの日常は終わりを告げた。



ラ〇シャン〇ンよりも大きいのです

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