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ひとつむこうのこちらがわ  作者: 枝節 白草
16/18

狼族頭領

トオルとヒイラギとツバキは小さな森を歩いていた。

イーヌイによって書かれた地図を頼りにやってきたのだがこの場にイーヌイは居ない。

トオルに気付かれてしまっては面倒になるからだ。


そして、ゲートはすぐに見つかった。

これ見よがしに鎮座したゲートが堂々と口を開けている。


「このゲートでございますトオル様!」

「・・・間違いないな?」

「はい!このヒイラギ・シーベリアが見つけたものです!」

ヒイラギはちゃっかりと自分の手柄にしていた。


三人はためらい無くゲートを潜る。

その先に何が居ようと勝てる自信があった、仮にドラゴンに遭遇しても勝てる気でいた。

しかし、ゲートの先の光景は予想外のものだった。


広い草原、遠くには森、森、森。

辺りを見渡してみるがドラゴムート特有の巨大生物が見当たらない。


「おい、ヒイラギ、ここはドラゴムートなのか?」

「いえ・・・、ここは・・・、そんなばかな」

「ここはアニマキヤやね」

ヒイラギの代わりにツバキが答え、ヒイラギの顔が青ざめてゆく。


「ヒイラギ、このゲートはおまえが見つけたんだよな?」

「ひっ、申し訳ありません!実はイーヌイと言う奴が見つけたゲートです」

イーヌイの名前を聞いてトオルの顔色が苦々しく変化する。

「ヒイラギ、おまえの処罰は後だ。このゲートは罠だ、引き返すぞ」


ゲートに戻ろうとするトオルを遮る様に一人の初老の獣人が現れた。

近くに隠れていたのか、トオルが来る事を知っていたような素振りだ。

逆立った茶色く長い剛毛を纏った風格のある男。

その男に対し真っ先に反応したのはヒイラギだった。


「なんであんたがこんな所に居るんだ!俺らはもうあんたには従わないぞ!犬派が頭領だなんて元々気にくわなかったんだ!」

「やれやれ・・・、一応実力で勝ち取った地位なんだがな」


トオルはその男が狼族と関わりのある者だと理解し、自分への客だと判断した。

「あんたは誰だ?邪魔するなら殺すぞ」

「私の名前はベタン・マスティー。狼族の頭領だ。犬派の一族であるがゆえに反感も多くてな、今回の反乱の要因の一つだろう」

「で、俺に何の様だ?イーヌイに頼まれて俺を粛正しにでも来たのか?」

「逆だ、イーヌイに頼んで君をこちらへ誘導してもらった」

「目的は?俺と戦うつもりか?」

「私はそんな愚かでは無いさ。君との実力差くらい分かる。・・・率直に言おう、狼族の頭領としてアニマキヤに移り住んで欲しい。それで満足できないか?」

「できないな、話はそれだけか?」

「そうか・・・、ならば実力行使しかあるまい」


そう言うとベタンは軽く手を挙げた。

それを合図に遠くから獣人が二人ほど現れる。

一人は白い毛皮を纏った筋肉質な大男、虎を思わせる風貌だ。

もう一人はこれまた白い毛皮を纏った女性、額に大きな一本角、足には蹄がある。


その二人を見たヒイラギとツバキの様子が明らかにおかしい。ガタガタと震え出す。

「・・・ヒイラギ、あの二人は何だ?」

「は、はい。この世界の守護者です。二人も現れるなんて・・・」


筋肉質な方が声をかけてくる。

「あんたがトオルか、なるほどなぁ、俺らが呼ばれる訳だ。一人じゃきついわ。俺の名前はビャッコだ。で、こっちの角生やした女はテレサ。二人であんたをボコしにきた」

「・・・ちっ」

二人を見たトオルは舌打ちをした、相手が一人なら勝てる自信があるが二人も居ては分が悪い。


「おいヒイラギ、ツバキ、退くぞ。ゲートの前で邪魔してる犬を潰せ。俺はこの二人の相手をする必要がありそうだ。めんどくせぇ」

「狼族現頭領を・・・俺が・・・、ふっ、良い見せ場を作っていただき感謝します!」

「元々おまえの失態だ、負けたら殺す」

「ひぃっ、頑張らせていただきます!」

「ウチとばっちりやーん。ベタンのおっちゃん強さは本物やでー」


トオルはビャッコとテレサを交互に見つめる。

「・・・食っても不味そうだ」


「おー、おー、二人相手に勝てる気でいるのか。テレサは分からんが俺は甘くねぇぞ」

「・・・じゃあ・・・ビャッコ一人でやる?」

「ごめん、手伝ってくれ」

「・・・うん」


「うぉぉぉぉおおおオオオオオ!!」

ビャッコの雄叫びが開戦の合図を告げた。




実は戦闘能力だけなら狼より強い犬種と言うのもありまして、ベタンはチベタン・マスティフがモチーフです。

そして物語は割と後半戦だったりもします。

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