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ひとつむこうのこちらがわ  作者: 枝節 白草
10/18

巨大な狼

「トオル!起きて!起きないとイタズラするよ!・・・あ、待って!やっぱイタズラしたいからもう少し寝てて良いよ!」

「イーヌイちゃん、ズルいよぉ、まーぜーてー」

「こればっかりは譲れないよ!正妻は私だよ!シマちゃんはアニマキヤに戻ればモテモテなんだから我慢するべきだよ!」


トオルは下半身に涼しさを感じて目が覚める。

「あ、起きちゃった。おはよー」

「何脱がしてんだこらぁ!」

「それどころじゃないんだよ!テレビ見てテレビ!」

「ごまかすな!!」


居間に逃げて行くイーヌイを追いかけてトオルも居間に着くと親が真剣にテレビを見ていた。

「どうした?また何かあったの?」

「あ、トオル!・・・って、その前に下履きなさい」

「・・・うわぁ!まだ履いてなかった!」


トオルは急いで脱がされたズボンを取りに行きまた居間に戻る。

「まったくトオルは・・・、どっちとヤったの?ちゃんと責任とってあげなさいよ?」

「ヤってねぇよ!」


仕切り直してテレビに目を移す。

今はほぼ全ての局で同じニュースを繰り返しているらしかった。

テレビには壊された建物や荒らされた地面が映っている。

建物には異常なサイズの爪痕、地面には巨大な足跡。


「なんだ・・・これ」

「都心に突然ビルより大きな獣が現れたらしいの。各地を走り回っては荒らしてるって話でね。猟銃でもビクともしないし、自警団の人たちも完全に萎縮しちゃってるみたい」

「まさか・・・、またドラゴンが?」

「んーん、狼なんだってさ」

「狼・・・」


トオルはイーヌイを見る。

「え?違うよ!アニマキヤじゃないよ。ドラゴムートだよ。・・・しかもかなり有名な奴」

「有名?強いのか?」

「うん、最強クラスの獣。狼族の間では信仰の対象になる事さえあるよ」

「名前は?」

「フェンリル」

「・・・俺の記憶が確かならそいつは北欧神話の架空の生き物だが?」

「うん、そのフェンリルだね。ただし架空の生き物では無いよ。昔はこのリアレタスに干渉しちゃう困った異世界生物もけっこう居たからね」

「まじかよ・・・、でも神話ではフェンリル死んでるぞ?」

「だいぶ脚色入ってるんじゃないかな。フェンリルはドラゴムートで生まれたし、リアレタスで少し暴れてまたドラゴムートに帰って行っただけだったはずだよ」

「神話なんてそんなものか、なんでわざわざ日本に来るんだよ」

「まぁ、元凶になった国だし?」

「日本のオタク文化で異世界物が流行ったせいだって言ってたな。勘弁してくれ・・・」


ふと、トオルは家の外が騒がしい事に気付く。

窓から外を覗くと町の人たちが集まっていた、みんなニュースを見たのだろう。

トオルは着替えると一人で外に出た。


「あ、トオル君。この町は大丈夫なの?」

「他の町では自警団みんな戦意喪失しちゃってるらしいけど、トオル君は大丈夫?」

「ドラゴンに襲われた次は巨大な狼?この町に来たら倒してくれよ!?」

「熊女いるだろ?あの化け物みたいな子なら狼倒せるだろ!?」

「そうだよ!そのために化け物達飼ってるんだろ!?」


トオルは頭をかく、一人で出てきて良かった。

みんなドラゴンの恐怖がフラッシュバックして怯えていた。

「あー、落ち着いて欲しい。流石に自衛隊が動いてくれるはずだ。あとイーヌイもシマも化け物なんかじゃねぇ。体が丈夫なだけで俺らと何も変わらねぇよ」


みんなはトオルの言葉にハッとした。

「あ、いや。本心じゃない。本心じゃないよ、言葉の綾さ」

「そ、そうさ。焦ってつい言っちゃっただけだよ。は、はは」

言葉を濁す声に混じって「おまえも化け物だろうが」と、聞こえた気がした。


トオルは自衛隊の動き次第だとみんなに伝えると集まって来た人たちを帰らせた。

「はぁ・・・、ままならねぇな」



トオルの読み通り自衛隊は動いてくれた。

相手は地面を移動する獣であるため戦闘機が導入されたのだ。

大きな的を空中から一方的に攻撃できるのだから自衛隊の勝利は確実だと思われていた。


しかし、攻撃が開始されフェンリルが本気を出すと状況は一変する。


およそ50メートルは有りそうなフェンリルの巨体が軽快に跳ね回る。

それは戦闘機の旋回よりも早く、跳躍は戦闘機の高さまで届いてしまった。

噛み砕く、叩き落とす。体当たりするだけでも戦闘機は墜落していった。


戦闘機は更に高度を上げてフェンリルの届かない位置まで移動したがあまり意味は無かった。

フェンリルが吠えるだけで大気が衝撃波となって襲ってくる。

更にフェンリルの体毛は一本一本が非常に強靱で大きなダメージを与える事が出来ない。

生き物として純粋に、理不尽なまでに強かった。


自衛隊が一時撤退を余儀なくされる、それは日本中が絶望に染まった瞬間でもあった。



「自衛隊、負けちまったな。シマ、あれに勝てるか?」

「冗談でしょぉ?私よりもあの空飛んでた機械の方が強いよぉ」

「そう、だよな」

トオルは自分の左腕を見る。

イーヌイはそれを不安そうに見つめていた。




肉食系女子、アニマキヤ人は積極的

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