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異世界に転生した平凡な私の非凡な日々~ドラゴンさんに懐かれました。  作者: もり


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83.庶民

 

「殿下、お疲れのところにこのようなお願いをするのは心苦しいのですが、一度外に集まっている民にお顔をお見せしていただけないでしょうか?」


 気脈修正が終わったとの報告を隊長さんたちにしたあと。

 もともとの経緯は隊長さんに先に話していたから、簡単にすんだんだよね。

 で、ちょっと一服的なお茶を飲んでると、隊長さんが申し訳なさそうに切り出した。

 うん。みんな王子様に会いに集まってるんだもんね。

 顔を見せたらすごく喜ぶよ。


「……なぜあのように民が集まっているんだ?」

「それがその……このたび殿下のご帰還を伝達魔法で報告したとき、興奮のあまり解放伝達で報告してしまったのです」

「それでか……」

「申し訳ございません」

「いや、謝罪は必要ない。ただよくあれだけ集まったな……」

「あの者たちはスクバの街など、この近隣に住んでいた者たちです。魔獣の被害が頻発し、やむを得ずこの地を離れることになりましたが、やはり故郷から離れがたいのでしょう。このたび殿下のご帰還の報を知り、居てもたっても居られなくなったようです」


 ノスリは笑ってるけど、困ってる。

 どうしても自分を――今まで頑張ってきたことを認められないんだ。

 ならいっそのこと責められたほうが楽になるのかな?

 そんなことはないよね。


「ノスリ、隊長さんの言うトオり、みんなに手を振ってあげタラいいと思う」

「コルリ、何を言うんだよ」


 あれ? みんなに――一般の人に顔を見せるってそういうことじゃないの?

 私だったら王子様に手を振ってもらえたらすごく嬉しいけどな。

 しかもこの国のために修行に出て、無事に帰ってきてくれた人だよ?

 この土地の魔獣の出没を減らすよう頑張ってくれた人だよ?

 王子様じゃなくても……うん。やっぱり英雄だよ。


「ノスリ、顔見せしナイの? 私だったラ嬉しいヨ。王子様の顔を見れタラ」

「……わかった」

「では――」

「ただし、コルリ、お前も一緒にな。俺の隣に立てよ」

「え!? 私は無理ダヨ!」

「殿下!?」


 いきなりノスリは何を言うかな。

 ほら、ノスリの答えに喜んだ隊長さんも騎士さんも驚いてるよ。

 私はただの一般人なんだから、みんな戸惑うに決まってる。


「今回のことははっきり言って、コルリのお陰だろう? コルリがミヤコちゃんと友達にならなかったら成し得なかったことだ。功労者はコルリとミヤコちゃんなのに、俺がみんなの前に出るわけにはいかないだろ」

「いやいや、ノスリが頑張ったカラだって言っテるじゃナイ。私はたまたまミヤコちゃんと仲良くなれたケド、ノスリがいなかったラ、学校でだっテ孤独だったし」

「殿下、おっしゃることはわかりますが、その方が殿下と並び立つのはどうかと……」

「ほらネ? それならミヤコちゃんと一緒にドウ? 私とツグミさんは傍で見てルヨ」

「私は必要ありませんわ」


 騎士さんだって戸惑ってるし、ツグミさんと一緒にちょっと離れて見てるよ。

 って、ツグミさんに拒否られた。


「ツグミさんは必要ナイってどういうコト?」

「私は今回の旅では何もしておりませんし、むしろ助けられた立場ですから。お二人とミヤコちゃんのお姿を遠くから拝見させていただきます」

「いやいやいや、そんナノおかしいヨ」

「そうだよ、ツグミさん。一緒に顔を見せればいいじゃないか」

「いいえ、できるだけ混乱は避けたほうが良いと思います。それにほら、私は父のこともありますから」

「あ、そうカ……」


 こんなに遠くまできてツグミさんの顔を知っている人はいないだろうけど、名前は伝わるかもしれないもんね。

 ノスリも理解したみたいで、それ以上は何も言わなかった。


「それナラ、私もあまり名前を知られナイほうがいいカラ、やっぱりやめとくヨ」

「コルリは大丈夫だろ? そのためにこっそり引っ越したんだし。長官が安全を保障してくれてるんだから」

「デモ、できるナラ迷惑をかけたくナイよ」


 ミヤコちゃんの力を得たいっていう王様たちから長官は私たち家族を庇ってくれたんだもん。

 もちろんミヤコちゃんには誰も逆らえないから、正確には平穏な生活を守ってくれたってことだけど。

 それに何より、私が王子様なノスリの隣に立つのは畏れ多いよ。


「コルリ殿、どうか私からもお願いいたします。殿下のお隣で皆にお顔をお見せしてくださいませんか?」

「フォーシン殿!?」

「隊長さん!?」


 隊長さんまで何を言い出すの?

 ほらほら、騎士さんだって驚いてるよ。


「できればミヤコ殿の背にお乗りになって皆にお顔をお見せになれば周知の事実となります」

「それナラ、ノスリだけミヤコちゃんに乗せてもらえばいいんダヨ」

「ミヤコちゃんが了承してくれるかどうかは別として、俺は一人でミヤコちゃんに乗せてもらうつもりはないよ」


 頑固だな、ノスリは。

 王子様の顔を見れたらみんな喜ぶし、きっと勇気ももらえるのに。

 でもそうか。頑固なのは私もかも。

 いつか……近いうちにこの国が正常になったら、ノスリとはお別れだから。

 その前に記念というか、思い出を作っておくのもいいかもね。


「わかった。じゃあ、ミヤコちゃんが了承してくれたらね」

「ありがとう、コルリ」

「コルリ殿、ありがとうございます!」

「だからミヤコちゃん次第ダヨ」


 大勢の人の前に出るのは緊張するけど、ノスリがすごく嬉しそうな顔をするから頑張ろう。

 隊長さんもそんなに喜ぶのは、ノスリを説得できたからかな。

 騎士さんはちょっと納得いかないって顔してるのは気になるけど、OKしちゃったし。


「ミヤコちゃん、起きてる?」

『もちろんである』

「あのね、これからノスリと私を乗せて、外に集まってる人たちの前に出てくれないかな?」

『お安い御用なのだ』

「ありがとう、ミヤコちゃん!」


 たぶんミヤコちゃんなら断らないだろうなと思ったけど、やっぱり嬉しい。

 ミヤコちゃんと――子猫と会話してるような私に騎士さんは不審そうな目を向けてた。

 うん、それは当然だよね。

 アウルがいればまた違ったんだろうけど、今の私は「うにゃうにゃ」言ってるようにしか聞こえてないのかも。


「ノスリ、ミヤコちゃんモいいっテ」

「そうか。ありがとうミヤコちゃん」

「ミヤコ殿、ありがとうございます!」


 ノスリと隊長さんのお礼を聞いて、ミヤコちゃんは満足そう。

 どうやら音でお礼を言われてるのがわかるみたい。


「じゃあ、行こうか」

「あら、ノスリさん。少しだけ待ってくださるかしら? コルリさんの準備が必要だわ」

「準備?」

「どこか一部屋お借りできれば、それほどお時間をとらせません」


 にっこり微笑むツグミさんはとっても綺麗。

 そんなツグミさんの要望に逆らえないかのように、隊長さんがすぐに対応してくれた。

 それで、私とミヤコちゃんはツグミさんと一緒に応接室その二みたいな部屋に入る。


「ツグミさん、準備っテ何をするノ?」

「もちろん、今以上にコルリさんを可愛くするのよ」

「……え?」


 ツグミさんは頭がよくて美人で控えめな素敵な人。

 だけど時々、驚かされることもあるんだよね。




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