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異世界に転生した平凡な私の非凡な日々~ドラゴンさんに懐かれました。  作者: もり


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12.帰宅

 

 びゅんびゅん通り過ぎる景色がゆっくりになったことに気付いて眼下を見れば、王都が視界に入ってきた。

 といっても、上から見たことはないから確実ではないんだけど、お城が見えるからね。

 それからお城以外に煌々と明かりが灯されているのは、たぶん学校だ。

 魔法と松明で光を灯し、厄災の被害を調べているのかも。

 これはまずい。このまま降りたら、目立ってしまう。


「ねえ、ミヤコちゃん! あっち! あっちのちょっと暗いけど、広場になっている所わかる?」

『ふむ、小さな森の手前のか?』

「そうそれ! あそこに降りてもらえる?」

『了解したぞ』


 私は美少女ミヤコちゃんに、お姫様抱っこされたまま、街のはずれの公園を指した。

 あそこは確か、夜には魔獣が出てくるとかで、この時間に人はいないはずなんだよね。

 魔獣といっても、軍が出動するほど狂暴なものではなく、ちょっと魔力が強い人なら倒せたりするらしいから、私でもやればできると思う。


 力の強い魔法使いは、時にはその程度の魔獣を魔法で縛って、使役したりもしているらしい。

 いわゆる使い魔というやつだ。

 学校でも上位クラスの何人かは、使い魔がいるみたいだけど、私はあんまり好きじゃないんだよね。

 魔法で縛るってことは、無理やりってことで、なんとなくいい気分はしない。


 そういえば、イスカ様にも使い魔がいるって聞いたな。

 その時には、「さすがイスカ様!」って同志みんなで盛り上がったけど、恋は盲目だよ。

 嫌だと思ってたことまで許せるんだから。

 うん。あの時の自分の言動が怖い。


 まあ、私もたいがい勝手だよね。

 自分の理想を押し付けてアイドルにして、理想と違ったから怒るなんて。

 明日はみんなとファンクラブ解散式とともに反省会をしよう。


 そうこう考えているうちに、ミヤコちゃんが公園に降り立った。

 ふわりと着地も優しく、私をそっと地面に下ろしてくれる。

 くうー! ミヤコちゃんが男子だったら惚れてるね。


「ありがとう、ミヤコちゃん。それじゃあ、ちょっと歩くけど、うちまで行こう!」

『うむ。歩くのだな』


 私の言葉に素直に頷いてくれたミヤコちゃんだったけど、そこで気付いた。

 歩かないといけないのに、ミヤコちゃんの靴がない!


「ごめん、ミヤコちゃん。歩くには靴が必要だったね……。私のだと大きすぎるし、靴下だけでも……って、それも気持ち悪いよね。私が履いたものなんて。何かないかな?」


 きょろきょろと公園を見回したけど、当然何かあるわけもなく、いっそのこと今度はわたしがおんぶして行こうかと考える。

 そこに、ミヤコちゃんが不思議そうに首を傾げた。


『靴とは何だ?』

「ああ、靴っていうのは、これ。これがないと歩く時に足の裏が痛いでしょう? って、今も痛いんじゃないかな?」

『足の裏? いや、まったく。我の表面は鋼以上に強固であるからな』

「それはドラゴンの時でしょう? 今のミヤコちゃんは柔らかいもん」

『ああ、それはまやかしだ。今は人間の姿に変化しているために、コルリはそのように感じるかもしれんが、我にとっては元の姿と感覚はなんら変わりがない。よって、足の裏もちっとも痛くなどないぞ』

「……そうなの?」

『うむ。だから早くコルリの家に行こうではないか』


 えっと、よくわかんないけど、とりあえず大丈夫ってことだよね?

 何となく、ミヤコちゃんの小さな足には申し訳ない気がするけど、仕方ない。

 では、お言葉に甘えて、そのまま行こう。

 みんな心配しているはずだからね。


 ミヤコちゃんと手を繋いで、できる限り急ぐ。

 感覚的にはドラゴンと変わらないと聞いていても、走らせるのは申し訳ないし、やっぱり私がおんぶするべきか……。

 ミヤコちゃんの小さい足ではなかなか前へと進めなくて、もどかしい思いをしていると、ミヤコちゃんが繋いだ手を引っ張って立ち止まった。


「ミヤコちゃん、どうしたの? やっぱり足が痛い?」

『いや、そうではない。ただコルリは急ぎたいのだろう? ならば、また飛んでいけばよいのではないか?』

「あ、ごめんね。気を使わせちゃった。でも街中だと目立っちゃうから、さっきみたいにはいかないんだ。ありがとう、ミヤコちゃん」

『ふむ。コルリは我を甘く見ておるな。心配せずとも目立つことはない。よいか?』

「え? ええ、えええ!?」


 ちょっと自慢げに言うミヤコちゃんの言葉を理解する前に、ミヤコちゃんは私の手を強く握った。

 それから突然襲った浮遊感。

 思わずバランスを崩して転びそうになったけど、どうにか耐える。

 そしてよく見てみれば、私たちは地面の上を滑っていた。

 ううん。正確にはわずかに浮いていて、滑るように進んでいる。

 しかも猛スピードで。


「ミヤコちゃん!」

『どうだ? 便利であろう?』

「あ、うん。って、場所はわかるの?」


 もうこの際、目立ってしまうのは気にしない。

 だって、このスピードだと何かが通り過ぎた気がするって、みんなは思うだけのはずだから。

 遅い時間だから通りには人もまばらで、猛スピードでもぶつかることはない。

 それよりも行き先を――うちをミヤコちゃんがわかるのかが心配になった。


『だから、コルリは我を甘く見ておる。先ほどコルリの考えを読んだから、そなたが思い描いた道順は頭に入っておるのだ』

「ええ!? それって……すごいね!」

『そうであろう』


 猛スピードの中、ミヤコちゃんが自慢げに胸を張る。

 ああ、可愛い。

 頭の中を読まれたことについては気にしない。

 だって、なんかもう色々と許容範囲を超えているから。

 相手はドラゴンだしね。

 そして、あっという間に我が家に到着。


『ここで、コルリの道順は途切れておったぞ』

「うん。ここが私の家だからね」


 お店は当然時間的にも閉まってて、私はミヤコちゃんと手を繋いだまま裏口へと回る。

 それでもいつもなら通りにもう少し人がいてもよさそうなのに、全然いないのはひょっとして〝厄災〟が現れたから?

 どきどきしながら裏口のドアノブを握り、一度息を吸って、勢いよくドアを開けた。


「ただいマー!」


 わざとらしいほどに明るい声を出して裏口からキッチンに入ると、七人の顔が一斉にはっとして私を見た。

 その顔は信じられないとでもいうようで、ちょっと怖い。

 いや、心配をかけたのは私だ。


「……コルリ?」

「本当にコルリなのか!?」

「心配したんだぞ!」

「お姉ちゃん!」

「ドラゴンに食われたんじゃなかったんだね!?」

「奇跡じゃー!」


 お母さん、お父さん、お兄ちゃん、セッカにアトリ、そしておばあちゃんが私に駆け寄ってくる。

 狭いキッチンに置かれた大きなテーブルの向こう側では、ノスリが呆然としたまま私を見ていた。

 うん、本当に心配をかけたんだね。


「心配をかけてごめんね、みんな。でも、私は大丈夫だったよ」

「いったいどうやって戻ったんだ?」

「あれか? コルリが不味すぎてドラゴンに吐き出されたのか?」

「え? お父さん、ヒドイ」

「なんでもいいじゃない。無事にコルリが戻ったんだから」

「ところで、お姉ちゃん、この子は誰なの?」

「ん?」

「姉ちゃんのコート着てるぞ?」


 みんなが私の無事を喜んでくれている間、ずっと黙ったままだったミヤコちゃんに、セッカが気付いたみたい。

 目線が近いもんね。

 セッカの声に、みんなの視線が集まり、ミヤコちゃんは私の後ろに隠れた。

 やだ、可愛すぎるんですけど。


「えっとね、この子はミヤコちゃんっていうの。ずっと一人だったみたいで、今日から一緒に暮らしてもいいかな?」


 私の紹介に、みんなぽかんと口を開けた。

 やっぱりいきなり子供を連れて帰ってきたのはまずかったみたい。




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