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異世界に転生した平凡な私の非凡な日々~ドラゴンさんに懐かれました。  作者: もり


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1.私について

 

 私が〝違う〟と感じたのは、物心がついた頃だった。

 何が〝違う〟のかと訊かれても、答えられはしなかったけど。

 それは違和感の正体がわからない以前に、言葉を上手くしゃべることができなかったから。

 五歳になっても私は両親やお兄ちゃん、そして周りの人たちが話す内容を上手く理解することができなくて、私自身も言葉にすることができず、片言しか話せなかったのだ。


 周囲の人たち――いわゆるご近所さんや一緒に遊ぶ子たちは、私のことを馬鹿だと思っていたみたい。

 だけど、両親とお兄ちゃんだけは違った。

 それはもちろん、家族の愛情もあったのだろうけど、一番の理由は私の行動にあったのだと思う。


 言葉は理解できなくても、行動パターンなら理解できる。

 両親は街でパン屋を営んでいて、家事や家業の手伝いをする時、次に何をすればいいのかをしっかり予測して先に動いたりしていたから。

 店番だって、六歳でちゃんとできるようになった。

 お金の計算を間違えることがなかったから。

 私が馬鹿だと思っている人たちの中には、たまに支払額を誤魔化そうとした狡い人もいたけれど、それを私は絶対に許さなかった。

 そして次第に街の人たちは私のことを馬鹿だとは思わないようになったどころか、七歳になった頃には天才じゃないかなんて言われるようになっていた。

 大人って勝手だ。


 七歳になった頃には、さすがに私も言葉を理解できるようになった。

 だから話すこともできるようになったし、さらには魔法まで使えるようになったから。

 両親が火を熾す時などはじっと見ていたけれど、まさか自分ができるなんて本当は思っていなかった。

 ただ両親が店で忙しくしていて、三歳年上のお兄ちゃんが晩御飯の支度をしていた時、窯に火を入れようと着火棒を取り出したお兄ちゃんを待たずに、私が魔法でひょいっと火を点けたのだ。

 お兄ちゃんはそれはもう驚いた。

 そして、急ぎ両親を呼びに行き、私が魔法で火を点けたと知った両親は、それはもう怒った。

 褒められると思ったのに。


 どうやら火は危ないということで、心配から怒りに変わったらしい。

 まあ、今なら気持ちはわからないでもないけど、あの時は理不尽だと思ったな。

 そして、今まで何気なく見ていた魔法――それがこの世界にはあるのだと、改めて気付いた時、今までの違和感の正体がわかったのだ。

 ここは〝私〟の知っている世界ではないと。

 そこで、はて? と首をひねった。

 〝私〟って誰?


 それから暇な時間帯に店番をしている時や、夜にお布団に入ってからずっと考えていた。

 あんまりにも考え込んでいたために、火魔法のことで両親に怒られまだ落ち込んでいるのだと勘違いしたお兄ちゃんが、自分のおやつを分けてくれたりした。

 お兄ちゃん、大好き。


 そして考えた結論——というより徐々に思い出した記憶。

 〝私〟は今の私の前に生きた〝私〟。

 その世界は、この世界と違って魔法はなかったけれど、とても便利な道具がたくさんあって、何不自由なく暮らせていたと思う。

 むしろこの世界より娯楽がたくさんあって、便利で自由で、でも満たされるということを知らなかった。

 その世界でいう〝私〟は今の私の〝前世〟だ。

 そう、私ことギンダ通りのパン屋の娘——コルリは、魔法の存在しない異世界――〝日本〟で生きていた記憶を持って生まれたらしい。




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