2-6.初体験
最初の接吻は、鼻と鼻がくっついてしまって上手くいかなかった。おまけにルッグの体は屁っぴり腰の姿勢になっていた。お嬢さまの体に触れることを恐れていたからだ。
いきなり、ミイルンが「もうっ」と言って、少年を突き飛ばした。
「全然、駄目だわ。全く、駄目! 最初からやり直して頂戴!」
「駄目……と言われましても……お嬢さま……」
ルッグは何をどうしたら良いのか分からずに困ったような表情を浮かべた。
もはや理性は殆ど役に立たなかった。頭が、ぼうっとして苦しかった。
その一方で、目の前の美少女に対する情欲は熱く加速していった。
股間の一物は痛いくらい膨張してかちかちに硬くなってズボンを押し上げていた。
「何を怖がっているの? 私が怖い? ……でも本当は私を抱きたいんでしょう? 絶対に逆らえない、逆らってはいけない筈のお嬢さまを力づくで抱きしめて、滅茶苦茶にしてやりたいんでしょう? 下僕のくせに!」
そしてまた、あの、この上もなく魅力的で、この上もなく不気味な笑みを浮かべた。
「……良いのよ? 私の体を滅茶苦茶にしても……いいえ、むしろ出来るものなら、やってごらんなさい! この私を滅茶苦茶にして頂戴!」
言いながら、ミイルンは自分の方からルッグに近づいて行った。
自分の胸と下腹部を少年の体に擦りつけるようにして、爪先立ちに背伸びをして、両腕を少年の首に絡ませて引き寄せた。
そして笑い顔を作りながら、しかし目だけはギラギラと相手の顔を凝視した。
「ほら、こうやって、少し首を斜めにするのよ。鼻と鼻が、ぶつからないように、ね……」
そして、半ば恐怖半ば欲望を滲ませた少年の顔に、自分のほうから顔を近づけて行き、荒い息を吐く少年の唇に自分の唇を重ねた。
「……上出来よ……」
いったん唇を離して、自分より背の高いルッグを睨め上げるようにしてミイルンが言った。
「生まれて初めての接吻だったんでしょう? その割には上手く行ったわ……さあ、次は……」
言いながら、少女は手に持ったナイフの裏側で、少年の硬くなった股間の一物を下から上へ優しく撫で上げた。
「ズボンを脱いで……あなたの、その素敵なものを私に見せて。使い方は私が教えてあげるわ……さあ……」
ミイルンが、ゆっくりと自分のスカートをたくし上げた。
お嬢さまの太腿が徐々に……徐々に……露わになっていく。
理性が、白濁し、沸騰し、爆発した。
少年は無我夢中で少女の体をむさぼった。
* * *
全てが終わり、我に返って、ルッグは力なく立ち上がってズボンを履き、屋根裏部屋から出た。
戸を閉めるとき、階段の下り口から振り返って部屋の中を見ると、埃まみれになって床の上に寝そべっているミイルンの姿が見えた。
全身から力が抜けたようにグッタリと倒れているのに、こちらを見る目だけが爛々と光っていた。
床の上に投げ出された右腕の先には、相変わらずルビーを嵌めたナイフが握られていた。
その時はじめて、ルッグは、お嬢さまが情事の間ずっとナイフを握っていたことに気づいた。
呆けた顔で、しかし、目だけは強烈な意思の力を発し自分を見つめるミイルンの姿に我慢しきれなくなって、ルッグは急いで扉を閉めると、逃げるように階段を駆け下りた。




