日溜り
抒情的な描写を目指して書いた小説です。随時添削する可能性もあるのであしからず。
燦然とした日光が、かれこれ一時間も半面を射続けている。賀茂は陰の雲が出来た天井へ仰向けに寝そべっていた。光が差し込んで雲は波のようにゆるゆると揺曳している。このままここで心地よく死にたいとも思う。賀茂は能天気な絵空事に耽りたかったのだ。
だが、がしゃんと凄まじい衝撃が刹那に平安を霧散させた。これで眼を覚まして、音の方へ振り向かなければならなくなった。土煙が微風に乗ってこっちに臭って来た。如何なる面白みも興醒めさせるこのからから。
賀茂は不機嫌さと鬱憤が堪った面持ちでずかずか向かう。雑然と散らばった段ボール箱と土の附着した書類と共に、そこに頭を抱え痛切な呻りを擦れ声で悔やむ者がいた。賀茂はこいつだと確信して今にも捕まえに掛かる狂人のような心持で一歩踏み出そうとした。が、不運なことにあの雑然とした障害物が城壁の如く取り囲んでいる。こんな軟弱な防壁は蹴飛ばすに限るが、理性と倫理が賀茂の頭に抑止を促した。それで賀茂は静観を決め、むくむくと立ち上がるさまを見守ることとした。癪な事だが。
光は頬を撫でるように陰を交錯させながら生暖かく照ってくれる。対照的に賀茂の背や雑多と出来上がった城壁で日陰に覆われているこの者を憐憫にさえ感じ始めた。正確には陰に埋もれて、動こうにも動けず呻吟するしかない惨状か。そう考えたら呻っていることにも納得がいくかもしれない。相変わらず動作が無く、ただ頭を押さえて呻っているだけなのだから。
賀茂は見かねて手を差し出そうか懊悩を廻りだした。手を出してはお節介かな。様々な憶測が賀茂の手を悩ませていた。日光を浴びている人間が日陰に埋もれている人間を刺激しようなどと。それでも恥など捨ててでも、厚顔無恥に思われようとも、道徳的良心の呵責による焦燥というただ一点に突き動かされ賀茂は手を陰へ突っ込んだ。
しかし、ぱしんと強い音が賀茂の耳に反響した。拒絶の反響なのかは判らない。と、陰が突如巨大な暗雲として賀茂の目の前に立ち昇った。畏れが賀茂の脳裏を冷やかした。暗雲はやがて立体的になり、賀茂に挑みかかる様に包み込んだ。賀茂は唯畏れに立ちすくんでいる。やがて、くっきりとした輪郭が現れる。そこには泰然自若の晴れ晴れしい顔をした青年が立っていた。日光が彼の頬で揺らいでいる。みずみずしい清らかな河がそこに顕著に見えた。賀茂の背には一段と心地よい日が当たっていた。
適当に書いた愚作なのでお世辞にも巧くはないですが、何か感想などを残していってくれるとありがたいです。