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プロローグ

 




 この世の全てを天秤にかけるとしたらどうなると思う?


 唐突に聞かれ、彼、雅臣は聞き返した。


「それってどういう意味?」

「その言葉通りよ」


 ぴ、と人差し指を立て、日和が唇だけで笑った。

 放課後の教室。窓から差す光が嫌に眩しかった。


「この世の全て…親も、友達も、恋人も…全部を天秤にかけたら、どうなると思う?」


 日和はまた繰り返し彼に問うた。けれどもまだ分からずにクエスチョンマークを乱舞させている雅臣に苦笑して、彼女はまた口を開く。


「例えば…そうね。一人の命と、百人の命を天秤にかけたとして…どうなると思う?」


 日和はまた意地悪く笑った。


「え、そりゃぁ…百人の方に傾くんじゃないのか?」

「その一人を殺すことになるとしても?」


 雅臣の戸惑いを余所に、日和はどんどんと話を進めていく。


「雅臣が言っているのはそう言う事よ?……でも、貴方の感情がそこに入ったらどうなる?…そうね。貴方の大好きな誰かと、顔も知らないその他百人。

 ……貴方の天秤は…どっちに傾くかしら?」


 にっこりと笑った日和に、雅臣は何も言えずに閉口した。

 ただ漠然と、そんな帰路には立たされないのだろうと平々凡々の人生を16年間歩んできた雅臣は思っていた。そんな事は、起こる筈がない、と。








 そんな記憶を思い出し、雅臣は思い切りため息を吐いた。そこには不安と恐怖が入り混じって、むしろ開き直った感情が見え隠れしている。


 相田雅臣、17歳。

 ただの普通の高校生である。

 しかし今、彼がいるのは上下左右全てが真っ白の、平衡感覚の無くなりそうな、色々な意味で頭が痛くなりそうな部屋の中だ。

 目の前には卵状の、ぬいぐるみくらいの大きさの、未確認物体。



『ヤァヤァ!!これ以上ない程に、不幸で幸運で、理不尽な運命の家畜どもよ!』



 「ソレ」が喋っているのを聞いて、雅臣はこれが現実であることに眩暈がした。


 

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