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ゲーム風異世界でハンターライフ  作者: クドウ
兼業ハンター生活一年目
81/110

魔法院からの視察




「魔法院所属のシェープスト・ヴァローナ氏です。皆、失礼のないようにね」 


 魔法院の視察に来たのは、眼鏡をかけたきつめの顔立ちの若い男だった。まだ二十代かな? 視察ってけっこう上の人が来るイメージだったんだけど、若いなぁ。やり手なのか貴族位が高いのか。

 しかし無表情具合、眼鏡、顔立ちとセバスチャンとキャラ被ってる! 思わず吹き出しそうになってしまう。危ない危ない。

 

「何か?」

「いいえ、何でもございませんわ」


 淡々とした抑揚のない口調がさらに被る。もしや血縁じゃあるまいな。黒髪のセバスチャンと違って銀髪だから違うだろうけどね。あれか、2Pキャラ。


「では後ろに席をご用意しましたのでどうぞ」


 シェープスト・ヴァローナが席に着いたところで講義が始まる。


「では何か新しい成果が上がった人は発表を。……ないなら前回の続きからでいいかな?」


 ナビール祭の反省はもう終わっているので、今は次にやりたいことの話を進めている。ナビール祭では火に色をつけたので、今回は水と光。色付けシリーズだ。何の役に立つわけでもないんだけどね。ただのお遊びである。発表の場もない。卒業する親しい先輩がいるなら卒業式にサプライズ的にやってもいいと思うんだけどいないからね。唯一の親しい先輩である武器愛好倶楽部のカイ先輩は二年生だ。他の先輩は三年生もいるけど全然話さないからね。

 色々試してみて意見を言い合いながら形にしていく。今日はコップに溜めた水が上に吹き出るようにした。その都度色を変えるようにしたので中々綺麗だ。ただ段々と水が飛び散って減っていくので周りが水浸しである。


「これナビール祭とかでやるならバケツにして、バケツ隠さないとね」


 こんなの見えたら台無しになるわ。





「いかがでしたか?」

「皆さん大変優秀なようですね」


 おぉ、褒められた。不真面目だとか低レベルだとか言われなくて良かった。


「皆さんにはぜひ魔法院に来て頂きたい」

「ぜひ!」


 エフィムが勢いよく立ち上がった。せっかく今まで大人しかったのに台無しだ!

 しかし社交辞令なんぞ言いそうにないタイプなんだけど、本気で言ってんのかね。それならエフィムとメリルにとってはいいことだよね。何だろう指名? 逆推薦?


「君たちは?」


 私とスケッチの方を見ている。


「とても光栄なお話ですが、私は卒業後すぐに嫁ぐことになっておりますので」

「僕も、騎士になるつもりなので……」

「……君は騎士よりも魔法院に来る方が良い。騎士には向いていない」


 ほぼ初対面の相手に言われ、スケッチがショックを受けている。見た感じがインドアとかひ弱そうとかそういうことだろうか。


「そ、それでも騎士になりたいので……」


 その答えにシェープスト・ヴァローナは大きな溜息を吐く。そしてソフォス講師の方に視線を投げる。ソフォス講師も溜息を吐き、頭を振った。何だ?


「話がわからない子たちではありませんので、正直に話した方が良いと思います」


 うん? どういうこと?


「そうですか……。君たちが優秀だというのは本当です」


 そりゃどうも。一介の学生に多大な評価を頂きまして。


「このままだと魔法院の研究成果の先を行きそうなくらいに」


 え?

 えー……? それは言い過ぎじゃないだろうか。さすがに専門機関の研究には敵わないと思うけど。


「もちろんこちらが先に始めた研究で君たちが先を行くことはないでしょう。ですが君たちが先に研究を始め、こちらが後に始めた場合はその限りではありません。いつ始めたかどうかではなく、発表が早いか遅いか、それが問題なのです。先に良い成果を出されてしまうと魔法院の予算が減少し、人数減らさなければならなくなるなど様々な問題が発生します」


 研究の発表とかあるの? ナビール祭のことじゃないよね? それってこっちが発表しなきゃいいだけなんじゃないのか。

 疑問はあるが話の腰を折ることになるので黙っておく。


「最悪の場合は魔法院の経営自体が危うくなる可能性が出てきます。ですので皆さんには今すぐ魔法院に在籍して頂きたいと思います」


 話はわかった。魔法院に所属していれば先に発表されることはないし、むしろ手柄も魔法院のものだもんね。だけど今すぐってどういうこと? 魔法院って学園卒業後に行くところじゃなかったっけ?


「アルスケッチ・ファーマー君。騎士になるのならば、それまでの間で良いので魔法院に所属してください。セリカ・アデュライトさんも卒業までで良いので」

「所属して、何か義務のようなものは発生しますか?」


 これ大事。

 学費とか会費が必要だったり、魔法院に出向かないといけないようなことがあるなら正直遠慮したい。時間があるなら今は迷宮に使いたいし。


「君たちに関しては研究を発表する時に魔法院所属の人間だと示してくださればそれで良いです」

「我ら二人は卒業後、そのまま魔法院に入れるのでしょうか!?」

「もちろん。歓迎致します」


 エフィムが快哉を叫び、メリルもうっすら微笑んだ。進学か内定かよくわからないけど、おめでとう。良かったね。


「とりあえずデメリットはないと考えていいですか?」

「ありません」

「では途中で辞めたくなった時はどうすれば?」

「それは困ります」

「こっちも困ります。途中でデメリットが発生した時、辞められないとなれば所属は無理です」


 学園的にも所属した方がプラスになるだろうから、所属したいのは山々ですが。途中でトラブっても困るじゃん。本職に会う事はなさそうだけど、スケッチがいじめられたりとかさ。


「デメリットが発生しないよう、最大限に気を付けます。何かあったら遠慮なくおっしゃって下されば全力で解決します」

「そう言って下さるのはありがたいですが、やはり辞められる保障がなければ所属は出来ません。そもそも辞めた場合研究は発表しなければ良いと思うのですが」

「発表せずに研究成果がそのまま眠ってしまうのも頂けません。……デメリットが発生し解決が臨めない時のみ、辞めてくださって結構です」


 向こうが折れたことで、とりあえず所属決定。そうまでして必要なものかね? 正直研究で本職よりいい発表なんて早々出来る気しないんだけど。

 実力よりも発想が珍しいのかな。それならまだ理解出来る。小さい子が突然大人を驚かせるようなことを考えたりするしね。


「それから余計なお世話でしょうが、アルスケッチ・ファーマー君。君は本当に騎士に向いていない。卒業後も魔法院に所属することを考えた方が良い」


 あ、スケッチ涙目。

 初対面でそこまで言うってすごいな。私もスケッチは魔法院の方が向いてるって思うけど、この人は何を根拠に言ってるんだろう。


「確かにスケッチは騎士より魔法院の方が向いていると思いますけどね。スケッチは騎士になりたくて、そしてなることが出来る」

「すごい自信ですね?」

「貴方こそ」


 ついつい口を出してしまった。また余計なことを……とちょっと自己嫌悪。


「私は看破スキルを持っています。アルスケッチ・ファーマー君は魔法院に来るべきだ」


 看破!?

 気になってたスキルだ。スキル大全に詳しいことが書かれていない謎スキルの一つだ。取得方法は看破すれば覚えるって書いてあった。わかるか!


「別に魔法が得意な騎士がいてもいいでしょう。本人がなりたいものになればいい」


 向いてなくても目指したいって言ってるんだからいいじゃん。夢が叶おうが破れようがそんなの本人の自己責任でしょ。向いてないからって向いているものを強制しても悔いが残るだけじゃない? 向いてる方に進むのは夢が破れてからだって遅くない。いや騎士にはなれると思ってるけどね?


「僕は、向いてなくても、騎士になりたいので」


 この人もさ。

 そんなにスケッチを魔法院に残したいならギリギリまで待てばいいのに。在学中にさりげなくアピールするくらいで、タイミング考えようよ。今こんな風に言ってもいい気持ちはならないでしょ。

 それから魔法院についての説明が始まった。エフィムとメリルは熱心に、スケッチは真面目に、私は半分聞き流し。うん、いつも通りだね。必要なことがあればスケッチがあとで教えてくれるだろうから大丈夫。




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