罠解除練習中
それぞれの第一目的を考慮した結果、私とアカネが先頭に立ち、探索と罠解除を行うことになった。モンスターの気配を察知したら、コジローとスケッチが誘き寄せて対処する。その間私とアカネは罠の警戒もしないといけないからね。地図があるから罠の位置はわかるけど、間違って発動させてしまわないようにしないと。
そして解体は私。アカネとコジローはあまり解体はしていないらしく、パラメータも少ししか上がっていない。けっ、ボンボンめ。
武器や防具の新調をせず、手入れは実家持ちの二人にあまりお金は必要じゃないらしい。コジローの場合欲しいのは実力だ。アカネはコジローの役に立つことだしね。
そんなわけで解体後の素材は費用を引いて残りはくれるらしいので万々歳。一応分けようって言ったんだけど、コジローがいつも世話になっているから、と譲ってくれた。コジロー、イイヤツだな……。
さてさて、罠はどこかなー?
あ、怪しい場所発見。
「アカネ、あそこ罠ある?」
指を差し、地図を持つアカネに問いかける。
「何でわかるの!?」
「勘?」
何でって言われてもね。何となくありそう! って感じがするのだから仕方ない。
罠解除が上がれば罠の位置がわかるようになるってことかな? 今は何となくだけどいずれ確実にわかるようになるのかも。
「パラメータが上がればわかるようになるのかもね」
「そうなったら地図要らずね……」
迷宮内の罠は、人為的なものでなければ地図に載っている通りの場所にある。つまり地図さえみれば罠に引っ掛かる可能性は低い。解除出来なくても避ければいいんだしね。
まぁ罠の問題がなくてもマッピング面倒だし、地図はあった方がいいと思うけどね。未踏破の迷宮に入れるようになればマッピング技能とかも必要になるのかな。
罠を見つけて解除して、モンスターは二人に任せて……を繰り返し数時間。罠解除のパラメータはすぐに100を超えた。さすが実践、上がり方がすごい。アカネも順調に上がっているようだ。
「最後まで簡単な罠しかないみたいね。初心者の練習にちょうどいいわ」
今のところ、難易度の高い罠がある場所に行くことはないんだけど、いつか未踏破迷宮に潜りたいよねー。まだまだランクは低いけどさ。
迷宮の罠は、迷宮の造りの一部。つまり破損は無理。そこに魔力を通して一時的に解除する。完全に罠解除のスキルがないと無理な部類だ。基礎みたいに改造出来るのかもしれないけど、難易度はものすごく高いだろうなぁ。現段階では無理だろう。
「この迷宮はボスいないんだっけ。思ってたより簡単に終わっちゃったね」
「せっかく来たのだし、もう一周しよう」
人気がないのは知っていたけど、なるほど。モンスターは強くないけど罠はあるし、旨味は少ないか。虫は素早いから刀や剣の練習にはちょうどいいけど、ハンターはわざわざ練習とかしないしね。ここに潜るなら王都の方がどう考えても稼げる。ただしある程度深くまで潜る必要はあるけど。
迷宮の中で一泊して罠解除のパラメータはがっつり上がった。カラフルな昆虫たちの素材も結構溜まったし成果は上々。
「というわけで本日の成果ね」
オネエに換金したものを渡す。特に目ぼしい素材はなかったので全部換金済みだ。
「どう? 家はいつごろ買えそう?」
「収支報告を作成しましたので、どうぞ」
オネエ多彩だなー。経理も出来るの?
「節約すれば三ノ月にぎりぎり買えると思いますが、税金の関係上、四ノ月まで待った方がよろしいかと」
「税金の関係上って?」
「敷地の広さによって金額は変わりますが、支払いは年に一度、三ノ月にありますので」
えー、年に一回って分割ないってことか?
「三ノ月に買ったら三ノ月に税金を払って、四ノ月に買うと次の三ノ月まで税金なしってこと?」
「はい」
「額は?」
「いつ買っても税額は同じです」
「月割にならないってこと? それっておかしくない?」
「公平ではないと思いますが国の決めたことですので。少なくとも王都はそういう仕組みのようですよ。ですので四ノ月が一番土地・建物が売れます。逆に空家が出るのは二ノ月が多いですね」
それって二ノ月に引っ越せば税金なしになるってこと? あ、でも一ヶ月家無しだと生活できないから宿代が必要になるってことか。
だから家を空けることの多いハンターは家持ってない人が多いのかな? 宿代の方が安上がりになりそうだもんね。
差し迫った事情がなければ四ノ月がいいに決まってる。ちょうど就職シーズンでもあるし、最初は宿を取って四ノ月に家を買う人が多そうだな。結婚するのも四ノ月狙う人が多いかも。
収支表を見ながら考える。
やっぱり迷宮っていい稼ぎになってるよね。ほぼ週末だけなのにもう二百万越えてるんだ。
おっと支出は武器がダントツか。家を買うまで新しい武器は買わないようにしよう。
「こちら参考資料です」
参考資料は家の広さ、間取りと価格の載った一覧表だった。
「まだ先になるのでその時新しく資料は集めますが、相場を知るためにまとめました」
「ありがと」
どうやら日本に比べかなり安いようだ。かなり狭い中古だけど200万くらいからある。中古ってどれくらい中古なのかね? この世界には地震も台風もないので、正直ぼろくてもいけるんじゃないかと思う。セキュリティは魔道具だし、広さがあればいいんじゃない? 自分たちで改装してもいいしさ。
「広さだけで考えますと、300万から600万と言ったところでしょうか」
「ボロくてもいいけど五部屋は欲しいかな」
私たち三人の部屋と蜘蛛部屋と武器庫。贅沢言うなら和室とかトレーニングルームとか欲しいけど。
「五部屋では足りなくなると思いますよ。それに貴族の屋敷は古いと良くないと思いますが」
「まぁ貴族になれたとしたら綺麗に改装しよう。貴族になれなくて家出ハンターになる可能性もあるんだし」
ハンター上がりの貴族なら家はぼろくてもいいんじゃない? 見栄とかいらなくない?
それに実は動く城が欲しいんだよね。実際王都で動くと大惨事だから無理だけど、ああいう継ぎ接ぎされたロボっぽいの、かっこいいよね。実家みたいな洋館より秘密基地風の屋敷にしたいなぁ。
モンスター素材でかっこよく改造とか楽しそう。ハンターの家っぽくていいよね! 広さが確保出来るんであればツリーハウスとかテント風も憧れるんだけどさ。
「とりあえず四ノ月一日に買おう」
「そうなりますと節約が必要となりますので、厳しくさせて頂きます」
「……厳しく?」
「えぇ。とりあえず新しい武器はしばらくお控えください」
「……はい」
それは私もそうしようと思ってたからいいんだけどさ。
武器の他にも遠出、高めの外食も控えよう。ダーツの的の費用、倶楽部費で賄えるかな……。
「では三ノ月の間に目星が付けられるよう、資料を集めておきますね」
「うん、お願い」
思ってたより早く家が手に入りそうで良かった。節約は必要だけどね。
ちょうど良い家が手に入るといいな、広さとか場所とか。東ノ島通りに近くて部屋数多め、広い風呂台所付き! オネエの手腕にかかっている。期待。
「あと、こちらですね。特注の鉄球を受け取って来ました」
「あー、ありがとう! 次の三連休はゴーレムね!」
ようやく来たか!
次の三連休はー……来週か。楽しみだ。




