ソロEランク試験
今週は振替休日のおかげで二日通えば休みになる。別に学園生活が苦なわけじゃないけど、休みが多いと嬉しいよね。
しかも講義なしの実技のみである。放課後は久しぶりのダーツ倶楽部とソロ迷宮で平日を過ごし、土曜日はいよいよソロEランク試験を受ける。
「ではセリカさん。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
アディさんが試験官につき、迷宮にいるモンスターの討伐が試験内容だそうだ。三体同時のシチュエーションらしいけど、ちょっといまさら感が。ハンター登録の試験と同じじゃん。さすがにモンスターの強さは違うと思うけどね。
「パーティで潜るのと、ソロで潜るのは違う……と言いたいところですが、セリカさんはすでにソロで潜ってますものね。戦い方を見るので勝てば良いというわけではないですけど」
え、勝てばいいんじゃないの?
じゃあ落ちるかもしれないじゃん。落ちたらポイントと試験料が無駄になるから嫌なんだけど!
「してはいけない戦い方があるんですか?」
「難しく考えなくて大丈夫ですよ。魔道具頼りだとか危なっかしいだとかそういうことがなければ基本受かります」
なら大丈夫かな?
「魔法の使用は制限ありますか?」
「ありませんよ。ただ魔法を使うならバランス良く使わないと不利ですけど」
バランスよく? オーバーキルは駄目ってことかな? それとも弱点の魔法を使ってないと減点とか? ……今回は使わない方がいいかも。
「次に遭遇する三体を討伐してください。ただし、モンスターに先制を譲ってください」
「わかりました」
防御か回避を見るってことかな。
この迷宮でよく見かける、中型犬サイズの鼠が三匹。飛び掛かって来るのを避けて斬り付ける。急所を狙って一撃死狙い。
うん、あっさり。
「はい、お疲れ様です。次はギルドで対人戦になりますので戻りましょうか」
「はい。対人戦ってアディさんとですか?」
「本当は先輩ハンターなことが多いんですけどね、今回は他のギルド職員です」
ギルドの人……私は受けてないけど講習の教官かな? 対人戦の相手をするくらいだし強いんだろうけど、先輩ハンターの方が楽しそうだよね。ちょっと残念。
ギルドの実技講習をする部屋で対人戦は行われる。ハンターの仕事に対人はほとんどないけど、不測の事態に対応できるようにってことらしい。まぁ、高ランクにならないと緊急要請はないみたいだけどね。
「ルールは簡単で相手が気絶か降参宣言すれば勝利となります。武器は木剣で大丈夫ですか?」
「大丈夫です」
アディさんから木剣を受け取る。軽く振ってみたが、特に問題なし。
対戦相手は三十代くらいの男性で、筋肉隆々タイプではなく細マッチョ体型だ。
「始め!」
開始の合図と共に雷撃を放つ。防がれた。実戦で魔法を防がれるのは初めてかもしれない。新鮮だね!
魔法が防がれるならやっぱり木剣で攻撃か。一気に間合いを詰めて、素早く突く。……あれ?
「そこまで!」
ええー……。
「おめでとうございます、セリカさん。合格です。ランクの書き換えを行いますのでお掛けになってお待ちください」
アディさんが行ってしまった。この人放置で大丈夫なの? とりあえず回復かけておく?
「ごほっ……回復魔法まで……申し訳ない」
「いえいえ。すみません、喉狙っちゃって」
もうちょっと安全なところ狙えば良かったね。ついついね!
「しかしすごいスピードだった」
「ありがとうございます。あ、魔法をバランスよく使わないと不利ってどういう意味ですか? さっきアディさんに言われたんですけど」
「ああ……試験では状況に応じた魔法を使わないと減点対象になる。たとえば火魔法が効かないモンスターに火魔法を使えば減点だ。武器の使用でも明らかな弱点があるモンスター相手に無駄な戦い方をすれば減点対象になるが」
おおう……。鼠で良かった。初見のモンスターだったら弱点がわからなくて減点されてたかも。これはやっぱりモンスター学取らないと駄目かなー。
戻って来たアディさんからソロランクが書き換えられたハンター証を受け取った。ソロランク、E。次はDか。もう一つレベルが上がらないと受けられないけど。
その前にパーティランクも上げたいな。レベルが揃わないと無理だけど、ポイントためてるうちに上がりそうだし。迷宮もいいけど依頼も受けるようにしよう。
翌日、無事合格したことをスケッチに報告した。
「今回の試験は迷宮でモンスター三匹同時と対人戦だったんだけどね、魔法を使うなら弱点になるような魔法じゃないと減点なんだって」
スケッチは魔法主体で行くつもりだったから結構キツイ。私に比べてモンスターの種類も特性も知ってるから大丈夫だと思うけど。
「モンスター側からの攻撃になるから、とりあえず回避上げよう。魔法での防御も出来るように両方鍛えて行こうね。あとは対人戦かー……私くらいスピードが出るようになれば勝てると思うけど」
「それはさすがに無謀だと思う……」
ダッシュのパラメータが上がればいけるんだけどなー。
「どっちにしてもレベルが上がらないとね。先にオネエとサオンが試験受けて対人戦の攻略方法研究してもいいし」
スケッチは三人の中ならオネエの戦い方が一番近い。オネエが先に受ければ対策も練り易いかもしれない。
「とりあえず今日の目標は十五階からニ十階で先頭はスケッチ。魔法でも殴っても良し。サオンはスケッチのフォロー、殿オネエでいつも通り。危なくなったら声掛けるから下がって交代。そんじゃ行くよー!」
十五階まで転移。さあレベル上げ頑張ろう!




