表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゲーム風異世界でハンターライフ  作者: クドウ
兼業ハンター生活一年目
63/110

委員会




 十一ノ月にナビール祭というイベントがある。日本でいうところの文化祭に少し体育祭を混ぜた感じのイベントだ。クラス単位ではなく魔法実技や工作などの選択クラスごとの出し物と倶楽部単位の出し物を行う。

 一番の目玉は剣術大会と馬術大会なのだが、これは騎士志望の人が出場するものなので、私には関係ない。魔法は大会ではなく、芸術的見世物として発表されるようだ。

 ちなみに基本的に雑用の出来ない集団なので、自分たちでたこ焼きや焼きそばを作って販売することはない。お化け屋敷などもない。食堂とカフェは営業するし、外部から屋台も入れるらしいが……あれだ、これは文化祭というかただの発表会だ。授業参観だ。何が楽しいんだよこれ。

 ともかくイベントに付き物な実行委員会。これを押し付けられてしまった。委員会のせいで放課後の迷宮行きが減ってしまう。これって何かメリットあるの? 内申とか?

 断りたかったけどクラスの中で貴族位の低い人がなるのが暗黙の了解らしく、そうなると引き受けないわけにはいかなかったのだ。男女一人ずつということなのだが、ペアの男子生徒は話したこともない上に名前も知らない。いまさら名前なんだっけ? とか言いにくい。だってもう秋だよ? こっそりフェリシー様に聞いてみよう……。


 そもそもこの学園、生徒会が存在しない。まぁそうだよね。生徒会あってもどうせ実際に動くのはそのお供なわけだし。

 そんなわけで実行委員会の説明と司会は講師がするようだ。

 三学年の四クラス各二人で計二十四名。先輩に知った顔はなし。一年にはスケッチと、ゲームではサポートキャラだったシモナ・ベナークがいる。初日の委員会は自己紹介とナビール祭のざっくりした説明と委員会の主な仕事の話だけで終わった。

 委員会の仕事は受付業務と賓客のご案内といったところだ。こういうの、貴族位低い人じゃない方がいいんじゃないの? 特に賓客の案内って気に入られたらお得じゃん。挙ってやりたがったりしないのかな。

 腑に落ちないまま終了。いまさら倶楽部に行ってもなぁ。今日はもう寮に帰ろう。教室から出ようとしてシモナ・ベナークに呼び止められた。 うお、目立ってる。 


「セリカ・アデュライト様。貴方は……何者ですか?」

「何者って何かしら?」


 名前知ってんじゃん。


「貴方から、私よりも濃い神の気配がします」


 切羽詰まった表情で詰め寄ってくる。何か怖い。


「私は聖人の名を与えられ生まれた時から神に仕えるべく厳しく育てられました。それなのに……」

「はあ」


 わなわなと震えながら充血した瞳で見つめられると、何と言うかこう……きゅっと絞めたくなるよね。こっち見んな。


「あ、そうだ。私、奇跡で生き返ったことがありますけど」


 これだろ、神の気配っていうのは。


「それだけで……? 確かに奇跡を授かった方からは神の気配を感じますが、貴方ほどの人には会ったことがありません!」

「いやしらねーよ」


 おっとつい本音が。

 

「とりあえず何者って言われても知りません。奇跡の影響が強く出たんじゃないでしょうか。私にはわかりませんので失礼しますね」


 面倒くさい。これで終わりだといいけど、また絡まれそうな予感しかしない。ナビール祭が終わるまで一緒だと思うと憂鬱すぎる。

 どうしようかなぁ、ダーヴィトお兄様を通じてモナさんに相談してみるか? とりあえず王都に寄った時は連絡もらえるように手紙を書いておこう。教会関係はよく知らないから対応しにくいんだよねぇ……。

 鬱憤晴らしに武器愛好会で暴れて帰ろうっと。



 

 翌日珍しくユーリー様からお誘いがあり、学園外のカフェに行った。今回はちゃんとサオンも一緒なので、ユーリー様の使用人も合わせ四人。本来ならこれが正しい形、のはず。

 ただ今回、サオンが食べられないのがツラい。いい時と悪い時があるのはわかるけど、その差がわからない。その辺りの貴族ルールは本当に謎だ。

 サオンの目に晒されながらの甘いものはかなり食べ難いので、オープンサンドと珈琲で。お土産に甘いもの買って帰るから耐えてねサオン……。


「最近、仲の良い人がいるって聞いたけど」


 いや友達くらいいるし。確かに少ないけど何だそのやっと友達出来て良かったね、みたいな台詞は。

 顔には出さないけどちょっとイラっとした。とりあえず愛想笑いだ。


「えぇ、まぁ」


 っていうか誰のことだよ。

 敢えて言うってことは、アカネじゃないよね。

 数えるほどしか友達いませんが何か。クラスだと一人しかいませんけど何か。いや他のクラスをいれてもコジローとスケッチ、アカネの三人だけどね。

 しかもそれで終わりかよ、続き話せよ!

 気まずいので食べて誤魔化す。美味しいですね、と当たり障りのない会話。早く帰りたい。

 私が苛々していることに気付いたのか、サオンが心配そうにしている。いかん、気を付けよう。私、機嫌、悪くない!

 オープンサンドを平らげ、珈琲を飲み干す。ユーリー様も食べ終わっていたのでカフェを出る。


「どこか行きたい場所はある?」

「特にございません。ユーリー様はいかがですか?」


 ないって言え。帰るって言え。


「……寮に戻ろうか」


「はい」


 よし。




 翌日、鬱憤を晴らすかのように迷宮で暴れた。超楽しい。

 しかも私のレベルが7になったし。かなり順調にレベルあがってる。あとハンマーの上がり方がかなりおかしい。刀と剣より大分才能があったのか、週末で200行くかもしれない。それか魔法付与してその武器使うと急上昇とか? 検証してみたいな。

 スケッチもけっこう動けるようになってるし、十五階に行ってみてもいいかもしれない。長時間は無理だろうから、少しだけ試しに行ってみようか。土曜日は十四階辺りで、日曜日に十五階に行ってみようかな。よし決定。

 しかし最近苛々しっぱなしだな。短気は損気。良くないね、気を付けないと。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ