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ゲーム風異世界でハンターライフ  作者: クドウ
兼業ハンター生活一年目
61/110

九ノ月②



 寮に戻りオネエの部屋に行くと、籠の中の魔糸蜘蛛が二匹になっていた。


「何これ。どうしたの?」

「気付いたら増えてました」

「雌……だったのかな」


 籠の中で小さな魔糸蜘蛛がちょこちょこと動いている。小指の爪位の大きさで、正直クラウドと並んでいても違う種類にしか見えない。

 しかし春に拾って秋に出産? 蜘蛛の妊娠期間ってけっこう長い? って卵生だよね。卵なんてあったっけ?

 うーん……。


「籠の隙間から入り込んだとか?」

「あり得なくはないですが、魔糸蜘蛛なんて希少種がこんな都会にいるでしょうか」


 確かに。

 森の近くっていうならともかく王都だしねぇ。


「まぁ何にせよ、いっぱい生まれなくて良かったね。サオン的に」

「そうですね。サオンに二匹になったことは伝えましたが、嫌そうな顔をして逃げられました」


 だろうね。

 餌とか果物のままで大丈夫かな。一応柔らかめの種類にするか……。牛乳もあげてみた方がいい?

 試しに柔らかめの果物を籠に入れて見ると、小さな蜘蛛がぴたりとくっついた。うん、小さすぎて食べてるかどうかわからない。わからないけど、動かないから食べてるんだろうきっと。


「よし、名前はレインにしよう」


 くもの子どもだし。

 大きさはいずれ同じくらいになるのかな? そうなると区別つかなくなるかも。首輪……無理だな。リボン? 蜘蛛にリボン?


「レインが成長したらクラウドと区別がつかなくなるよね」

「そうですね。クラウドもまだ成長してますから当分は大丈夫でしょうけど」

「え? まだ成長してんの?」


 毎日見てるから気付かなかった。そう言われてみれば大きくなってるような……。


「してますよ。資料によると過去最大の魔糸蜘蛛は人の頭部程と言われてます」

「でっか! サオンが悲鳴あげるね、それは」


 あとは過去最大がどこまで信用出来るかだよね。まだ発見されてないだけでもっと大きい可能性もあるし。


「サオンはこの部屋にほとんど来ないので大丈夫でしょうけど、その大きさが二匹もいたら作業場が狭くなりますね」


 サオンは蜘蛛が苦手だから、この部屋に来てもほとんど入らない。用事があるとオネエが移動することになっている。


「それまでに引っ越ししたいなぁ。学園卒業後は家を買うつもりだし、それまであんまり大きくならないで欲しい……」


 サオン立ち入り禁止の蜘蛛部屋とか必要?

 稼げるようになったら世話係とかも欲しいなぁ。今のままだとオネエの負担がちょっと大きいんだよね。部屋がないから使用人増やせないのがツライ。


「成長速度は解明されてないですからね」

「解明さえてないのかぁ。観察日記つけようかな」


 そんでモンスター学の研究者とかに売る、と。売れるかわからないけど。

 でも観察も上がりそうだしいいかもなぁ。うん、ちょうど今日生まれなんだし観察日記つけよう。





 テストの結果は個人別に渡された。おぉ、なかなかの好成績。これなら歴史は受けなくていいかな。

 これで一年の間は講義なし! 万歳! 空き時間は存分に一人で迷宮に潜ろう。休みの日は四人だし。


 テストの打ち上げというわけじゃないけど、なぜかフェリシー様と東ノ島通りに行くことになった。もちろんオマケ(アルベール様)もついてくる。

 東ノ島通りならではの服屋や小物屋を覗いた後、従業員が目の前で焼いてくれるタイプの鉄板焼きのお店に入った。セルフの店だと二人の使用人が動くのが面倒だからね。


「そういえばシルヴァン様がカメリア・カナリアさんとカフェにいるところを見ましたわ。お知り合いだったのですね」

「あぁ、あの赤いリボンのか」

「アルベール様もカメリア・カナリアさんとお知り合いなのですか?」


 いつの間に。

 着々とゲームしてるなー、ヒロインちゃん。この調子だと全員顔見知りかもね。


「まぁ! 知り合いと言っても少し話しただけですわ!」


 いきなり声を荒げたフェリシー様にびくっとしてしまった。フェリシー様が大きな声を出すのって珍しいな。


「そうなのですか?」


 カフェで談笑してて少し話しただけ……? んー、そんな感じはしなかったけど、フェリシー様ってシルヴァン様のこと好きなのかな。見た感じはすごくお似合いだよね。次期国王ではないけど王子だし、(ゲームでは)実力もあったし、フェリシー様のお相手として不足はなかろう。シルヴァン様相手なら邪魔はしない。でも変な男が近付いたら全力で潰す。寝込もうが魘されようが全力で潰す。


「おいお前今何考えてやがる」

「はい?」

「顔がこえーんだよ!」


 えー。失礼な。


「あ、焼き上がりましたよ。美味しそうですね」


 たまには高級店もいいね。霜降りステーキやばい旨い。海老も大きくてぷりっぷり。〆のバターライスも中々……。デザートはパフェがいいということで、お店を移動。でも大きいからフェリシー様は入らないんじゃないだろうか。

 予想通りフェリシー様は途中でギブ。まぁ嬉しそうだったからいいや。




 魔道具制作の時間はわりと自由に活動できるので、動く的を作ることにした。分からないところは教えてもらえるしね。魔法を込めた魔石も欲しいからいくつか試作して、残りの時間は的作り。

 改良案は二つあった。レールを足すか、規則的な動きに不規則な動きを加えるか。講師に相談したところ、レールを足した方が簡単だという。

 そんなわけで縦のレールを作ることにした。円も作りたいけどまずは簡単な縦からで。レールの基本素材は木材だけど、的を動かすための装置を裏に貼り付ける。この装置が魔道具だ。

 が、この装置に取り掛かる前にレールが完成しないと意味がない。これ意外とめんどいな! 木材を測って切る作業だけでも面倒なんだけど。簡単そうだと思ってたけど全然簡単じゃない。お蔵入りしてた木工設定したらガンガン上がってる。

 もう職人に依頼してしまいたい。何でリェーン・パウペルは王都にいないのか。売れるようになってこっちに出て来たり……ないな。王都で新しい職人を探す方が早い。早いか……?

 王都にいる職人は、比較的売れている。売れているということは、忙しいということだ。忙しい工房に特注依頼を出すと断られることも多く、金額もバカ高い。なので面倒な注文は人気のない工房や自作するという手段に出るわけなのだが……。

 そう考えるとあの注文、けっこう無理して頼んだんだろうなぁ。さすがジャーヴォロノク家……。

 苛々しながら時間いっぱいレール作りに勤しんだ。





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