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ゲーム風異世界でハンターライフ  作者: クドウ
兼業ハンター生活一年目
57/110

王都の夏休み①

 



 それから数日間、王都にはいないモンスター討伐を堪能した。最終日はエリザーベトお姉様に別れの挨拶をし、お土産を購入。エフィムを回収して王都に帰宅。帰りも強行軍である。

 

 早く海月ストッキングが欲しいという理由で、オネエはしばらく作業に専念してもらう。サオンも疲れているだろうし、帰宅初日のハンター稼業はお休み。この隙に私はこっそり迷宮に潜るのだ。


 一人なので念のため、魔力回復薬など消耗品を多めに持つ。実は十五階以下に行ってみたかったんだよね。

 いずれは四人で行きたいけど、まだちょっと怖い。本気で動けないし、誰かが重傷を負うのも死ぬのも怖い。だから今日はしっかり偵察しておこう。

 十五階以下は、魔法を使うモンスターが多くなる。上の階層にも魔法を使うモンスターはいたが、大抵は瀕死になってから使うので見る機会がなかったのだ。


「クフフ」


 色々言い訳してみたけど、結局は自分がもっと強いモンスターと戦いたいだけだ。

 一人ならぎりぎりのところを攻めても、誰にも迷惑かからない。庇う対象もいないし、自分一人なら死の危険もない。

 地図を買って迷宮に潜る。最初から十五階に降りた。

 階段から離れるとさっそくモンスターの気配を感じた。自然と口角が上がる。振り返り、距離を取る。同時にナイフを投擲。

 腕で弾かれた。紫色の毛をした熊だ。私と同じくらいの体長だから、小柄な方なのかな?

 熊が走り寄り大きく腕を振るった。刀で弾く。そのまま逆に一閃。……斬れてない?


「おぉー、その毛皮って硬いの?」


 毛なのに! それとも皮か?

 十五階のモンスターだし、硬いなら新しい防具にしたいね。盗賊スタイルの材料にもなる。でも紫の毛皮ってちょっと趣味悪い? まぁ内側に使えばいいか。


「よっし、頂きますよっと」


 とりあえず目ん玉行くか。






 紫色の毛皮、薄緑の核、黒くて大きい角、赤い翅、魔石、などなど。

 初めて見るものばかりで用途はわからないけど、きっとオネエが何とかしてくれる。肉だけ売ろう。


「お久しぶりですね。今日はお一人ですか?」

「はい。他のメンバーは休暇中なので」

 

 肉を売るとアディさんが魔道具で種類を確認し鮮度を測る。当たり前の話だが、悪くなっていれば買い取ってもらえない。

 

「これは……お一人で十五階ですか。大丈夫でした?」

「はい、大丈夫です。まぁ装備品がちょっとやられちゃいましたけどね」


 切り傷はたくさん出来たし捻挫もしたけど、回復魔法で完治してるから余裕である。

 肉だけなのに中々の金額になった。もしかしたら高級肉か? 次回はちょっと食べてみようかなぁ。

 私が一人で迷宮に潜ったことはパーティメンバーには秘密でとお願いして、今日は武器屋に寄る。

 刀術スキルが夏の間に200を超えたので、次のスキルに入れ替えようと思う。杖かなー、鎌かなー、大剣かなー。うん、倶楽部で上げてる途中のハンマーにしよう! いずれは全制覇ですけどね?

 武器店で予算ぴったりな軽量型ハンマーを購入。あとはお土産に甘いものでも買って帰るか。


 

 

 寮に戻り汗を流したあと、食堂で夕食を済ませた。休暇中も生徒が残っているため、朝と夜は普段通り使えるのだ。

 サオンがお風呂に入っている間に、こっそりオネエの部屋に荷物を運んだ。


「ストッキングの試作、出来てますよ」

「ありがとう、試着してみるわ。あとね、これなんだけど」


 オネエの前に可哀想な防具たちと素材を並べた。オネエの視線が痛い。


「いやぁ、ちょっと」


 溜息吐かれた!

 

「まぁ良いですけどね。十五階、どうでした?」

「あぁ、やっぱり分かるんだ?」

「当たり前です。わからないのはセリカ様とサオンだけでしょう」


 スケッチもモンスターの種類とか、結構色々知ってるからなぁ。


「あれは手強いね。ちょっとスケッチは連れて行けないかなぁ」


 連れて行って見てるだけなら大丈夫だと思うけど。咄嗟の時に庇えない気がするんだよね。自分で避けるか防御って言っても、たぶん半分以上攻撃を受ける。

 この世界に明確なヘイトという項目はない。モンスターの種類によって、一番近くにいる人に攻撃を加えたり、最後に攻撃してきた人に攻撃したり、一番嫌な攻撃をしてきた人に攻撃したり。中には匂いや色に反応するモンスターもいるらしい。

 つまり安全な場所に待機して回復や補助だけしていれば、攻撃をされない可能性は高いのだ。


「でももうちょっと鍛えてからかな。それか大怪我覚悟?」

「さすがにちょっと可哀想ですね。もうちょっと鍛えましょう」

「そうね。十三階辺りでしばらく前衛に突っ込むか……。私が後衛すればいいし。ソロ試験の対策もしないといけないしー……」


 スケッチの鍛錬計画を立てていると、サオンがお風呂から出て来る気配がした。


「とりあえず防具の修繕お願いね。サオンには秘密で!」

「かしこまりました」




 お風呂上がりのサオンを捕まえて、ストッキングの試着をしてみた。

 以前は普段からストッキングやタイツを穿いていたので違和感はない。サオンもメイド服の下はタイツだし。


「すごいね。穿いてるように見えない」


 本当に透明なのだ。穿いてない状態で糸のない部分を見るとどこにあるのかわからないくらい。


「すごいです! これで防御力があるんですねぇ……」


 サオンが感嘆の声をもらす。

 確かに。これで下手な防具より防御力あるっていうんだからすごいよね。


「良さそうですね。ではこのサイズでもう少し作っておきましょう。あとはインナー用の採寸と、デザイン画のチェックもお願いします」


 おぉ、盗賊スタイル! かっこいいな! 小物もばっちりだ。


「さすがオネエ……!」

「ふわぁ、すごいです。でもこれ、良いのでしょうか……」

「バレなきゃいいのよ。上からマントも羽織るし知り合いに会わなきゃヘーキヘーキ」


 露出多いからね! 透明部分も布地あるから露出っていうのかわからないけど、一見露出だ。

 とりあえずはユーリー様と実家の関係者に会わなきゃオッケーなのだ。


「あとチャイナドレスもいいよね。こういう形で」

「あら、素敵なデザインですね」

「でっしょ? これは三人分作ろうよ。あ、スケッチのも作っちゃう?」

「え……」

「スケッチのはこうね。スカートじゃなくてズボンバージョン」

「あ、ですよね。びっくりしちゃいました」


 さすがにそんな嫌がらせはしないよ。まぁスケッチが着たいというならかまわないけど。

 いやいや楽しみ。オネエの作業が大変になるけどやっぱりおしゃれはしたいよね!




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