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ゲーム風異世界でハンターライフ  作者: クドウ
兼業ハンター生活一年目
56/110

北方旅行③

 



 この世界の各地に迷宮はあり、ハンターであれば入ることが出来る。

 ただし迷宮内未踏破の階層は上位ランクのハンターが地図を作製するまで入れない。今回のストロフィラの迷宮はオネエ曰く、いつもの迷宮より若干モンスターが強いらしいので楽しみだ。

 ついでに何かいい素材ないかなぁ。



 迷宮は薄い水色の鍾乳洞だった。鍾乳石、ぽきっと折りたい。折れないけど。折ったらダメだけど。

 横の溝には水が流れており、空気がひんやりとしている。内部が明るいのは王都の迷宮と同じだ。この迷宮は全体的に斜めになっており、奥へ行けば行くほど傾斜が急になる。階段で下って行く構造ではなく、奥行きがある感じだ。全体面積で言えば王都の迷宮よりかなり狭い。


「イソギンチャクが生えてる!」

 

 なぜこんなところに。

 溝の中にイソギンチャクが生えていて、水の流れに揺れている。


「これって取っていいの?」


 壁や鍾乳石と同じ扱いだろうか。

 迷宮の壁は削り取ることは出来ないけど、このイソギンチャクはどうだろう。


「やってみましょう」


 オネエが躊躇いなくイソギンチャクにナイフを当てた。


「切れませんね。ということは、迷宮そのものなんでしょう」


 迷宮って一体……。


 初戦闘は爬虫類だった。

 鮮やかな青色をしたサンショウウオのようなモンスターだ。海辺の迷宮なだけあってそれらしいモンスターが多いようだ。見慣れないモンスターにスケッチが興奮気味なんだけど。いいから戦えよ。またサオンに舌打ちされても知らないよ。

 モンスターが強いとは言っても向こうの五階層レベルがこっちの一階層レベル、というくらい。あくまで比較すればの話で全然苦戦はない。つまらない。

 でも苦戦するときはソロがいいな。他の人がいると動き難いし死なれるのも嫌だし。帰ったら一人でどこまで潜れるか、こっそりやってみようかなぁ。

 

 海蛇モンスターや海鳥モンスターを片付けながら奥へ進む。

 大きな貝のモンスターは貝殻がなかなか……。何を作ってもらおうかな。

 

 進んで行くと水場に着いた。


「迷宮内に泉があるなんて……」


 スケッチの感嘆した声に、目の前に広がる泉を眺めた。イソギンチャクがわっさりしている。


「泉? 海じゃないの?」

「波はないですよ?」


 確かに波はない。でもイソギンチャク生えてるし。

 試しに水を舐めてみた。


「何飲んでるんですか!? 危ないですよ!」

「大丈夫大丈夫」


 死にはしない。

 

「とりあえず塩水みたいよ」


 塩辛い。これが塩湖ってやつかな? テレビでは見たことあるけど実物を見るのは初めてだ。


「モンスター来ます! いっぱい!?」


 サオンの焦る声に顔を上げると、海の向こうにモンスターの群れが見えた。どうやらこちらに向かって来ているようだ。


「スケッチ!」

「はいっ!」

「オネエもスケッチが魔法撃った後にお願い」

「承りました」


 魔法二発で生き残ったモンスターが散り散りに向かって来る。距離のある後方モンスターにはオネエとスケッチで魔法を打ち込んでもらい、右手前が私、左手前はサオンという風に担当。

 弱くてもこれだけ数がいると楽しいな!


「すいませんっ、魔力が尽きます!」

「杖に切り替えて真ん中!」

「はいっ!」

「あたしもそろそろ魔力が尽きます」

「オネエは左お願い。ちょっと行ってくる」


 浅いし、投擲もあるし、いける!

 奥のモンスターのところまで一直線に走ろう。まぁ浅いところまでだけど。深いところはさすがに動けなくなるし。


「はっ!?」


 と思ったら水の上走ってる。


「何これ!?」


 塩湖って浮くんだっけ? そのせいか? 思わず笑ってしまった。

 便利だから今はいいや。そのまま水の上を走り遠方のモンスターから斬りつけていく。

 あ、でもこれ止まると沈みそう。常に走り回りながら攻撃とか体力ヤバイ。ヤバイけど何これ楽しい!



 と、楽しんで殺戮しまくって陸地に戻ったらサオンに涙目で怒られた。何でだ。

 検証のためにすごく浅い場所をスケッチに走ってもらったら、落ちた。あれ? 塩湖って浮くんじゃなかったの? スケッチが濡れた靴を不快そうに見つめ項垂れていた。ごめんって。

 念の為靴を脱いでサオンに走ってもらったら、今度は成功した。スケッチが無理でサオンが出来るなら軽業スキルの影響かな? 武技アーツの中にそういうのあったっけ? 状況に応じて自動発動なのか?


 大量のモンスターになるので、スケッチにも解体を設定。四人がかりで解体していく。


「あ、スケッチ、そっちの解体してみて」


 スケッチがこれですか、と言いながらモンスターに近付く。


「あ、それじゃなくて、隣の茶色」

「……セリカさんって」

「ん?」

「モンスターを名前で言わないですよね」

「……そうだね」

「もしかして、覚えてないんですか?」

「ばれちゃあしょうがねぇ」

「ばれますよ!」

「くっ……! スケッチの癖に生意気だ!」

「意味わからないです」


 ばれてしまっては仕方ない。別に隠してたわけじゃないけど、モンスターの名前と形が一致しないのだ。似ているモンスターの区別がつかない。もうちょっと形状違えばわかるのに。


「そんな風だと来年苦労しますよ」

「モンスター学取らないからいい」


 二年次の座学の中にモンスター学があるのだ。だけど最初から苦戦することがわかっていてその教科を取ろうとは思わない。下手にモンスター学取ってAクラスから落ちたらお母様が怖いじゃないか。


「必須じゃないですけど、ハンターなのに良いんですか?」


 そうなんだよねぇ……。ハンターとして一番有用な座学がモンスター学だと思う。困ったものだ。

 スケッチの呆れた視線を無視して解体を終わらせた。



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