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ゲーム風異世界でハンターライフ  作者: クドウ
兼業ハンター生活一年目
49/110

コジロー初迷宮



 迷宮前に到着すると、コジローがすでに待っていた。

 さすが。遅刻とか絶対にしなさそうなタイプだよねぇ。


「おはよう、コジロー。お待たせ」

「お早う。本日はよろしく頼む」

「こちらこそ。紹介するね。私のWメイド、前衛のサオンと後衛のオネエ」

「あ、僕、Dクラスのアルスケッチ・ファーマーです。一応、魔法メインです」


 コジローが加わるからどうしようかな。

 うーん、私とオネエが回復役、荷物持ちと解体に徹するか……。


「よし、じゃあ今日は十階に行こう。サオンが索敵、警戒。投擲か魔法指示、のちコジローで。数が多かったら分担してね。今日は私とオネエは回復と解体に徹するから」


 コジローがいるのは今日だけだし、一日くらい我慢しよう。その分明日がっつり狩るよ!

 

「む。意外と明るいんだな……」


 コジローがきょろりと辺りを見回す。


「それに思っていたよりも広い」

「迷宮の壁って魔石で出来てて、これが発光してるんだって」

「ほう」

「広さもねー。広いから戦い易いよ。倶楽部の時と同じくらい動けるし」


 倶楽部でもたまに軽業を使っているので、コジローももちろんそれを見ている。私より動きが小さいコジローなら、戦い難いということはないだろう。


「それは良いな」


 コジローが感心したように頷く。


「あ、います。えっと、三匹なので魔法で」

「はい! 《前方、雷撃!》 えっと、止めはコジローさん、お願いします?」


 初戦はすんなりと終了。

 まぁそうだよねぇ。

 コジローは刀術だけで言えば私より上だし、私たちが余裕な階層は余裕なはず。ソロになると話は別だけど……。


「その場で解体するのか? 血の匂いでモンスターが寄って来ないのか?」

「迷宮のモンスターは寄って来ないらしいよ。肉じゃなくて魔力が餌なんだって。人間の持つ魔力と迷宮の魔力、どっちが好きかはモンスターによって違うらしいけど」


 私も詳しくは知らないんだけどね。生物の講義でちょっと聞いただけだし。

 血が出ないモンスターもいるけど、どうせなら全部血が出ないモンスターなら汚れずに済むのになぁ。


「迷宮の外のモンスターは肉食が多いらしいけどね。まぁ解体って言っても、スキル設定してたら五分くらいで終わったりするし」


 逆に持ってなかったら数時間かかることもあるだろうし、大変だよね。解体は必須だわ。


 コジローの分の袋はないので、四つの袋がいっぱいになった時点で引き上げ、売却して戻る、を繰り返した。途中昼休憩を東ノ島通りのラーメン屋でとった時以外、迷宮に潜りっぱなしだ。頑張ったおかげでなかなかの稼ぎ。五分の一をコジローに渡した。取り分は要らないと言われたけど、譲ったとはいえ、私とオネエはほとんど働いてないし。


「今日は助かった。有難う」

「いえいえー。これでスランプ抜け出せればいいんだけど。じゃあまた明後日、学園でね」


 コジローと別れたあと、蝋や画材を買い込んで一旦寮に戻る。今日はスケッチに色々頼むものがあるのだ。


「じゃーん!」


 私の籠手だ。


「ここにねー、ドラゴンの炎みたいな感じで模様描いて欲しいの」


 本当は魔糸蜘蛛クラウドにしたかったんだけどね。防具にクラウドついてたら、使い難い気がして。一瞬ガードするのを躊躇いそうっていうか……。


「ドラゴンの炎……」

「魔法でもいいけど、とにかくかっこいい模様!」


 え? そんな難しいこと言ってる? スケッチが頭を抱えているんだけど。


「スケッチさん、あの、あんまり気にしなくて良いと思います。いざとなったら描き直せば大丈夫ですし……」

「そ、そうですよね……」


 サオン、ナイスフォロー。スケッチが安心したように笑った。


「あとはちょっと調整を。こちらつけてみてください」


 オネエがスケッチに胸当てを渡す。最終調整をするらしい。

 問題なかったようなので、そのままスケッチに渡す。これで明日から使えるね! 防御力も上がったし、もうちょっと下に行ってもいいんじゃない?





 十一階以降となると、モンスターの種類もがらりと変わるらしい。解毒剤や傷薬、回復薬も多少高いものを買い揃えた。

 スキルも見直し。スケッチが入ってから使ってない魔法スキルは外して、回避スキルを設定。軽業と使い分けする意味があるのかはわからないけど。ダッシュやジャンプもまだ伸ばしたい。目指せ縮地。

 サオンとオネエのスキルもちょこちょこ入れ替え。特にサオンは軽業を覚えたから空きが出来ている。魔法と武器を除外するとスキルって意外と少ないな。


「よし、こんなもんかな」


 魔法も武器も苦手だから、目指せ斥候タイプで。罠関係はまだ使わないかえら除外して、体術とか虫以外担当ってことで解体も設定してみた。短剣がもう少し上がったら他の武器に変えてみようかな。レイピアとか斧とか……斧なら投擲出来る?

 


 十一階に降りると、何となく空気が変わった気がした。


「来ます! スケッチ、魔法を!」


 サオンが早口で指示を出す。中型犬位の大きさのモンスターが中々の速さで飛び付いてくる。


「うわっ」

「ちっ」


 サオンが舌打ちしただと……。

 速さに対応出来なかったスケッチに変わり、サオンがナイフを投げた。腹に刺さり後ずさったモンスターの首を止めに切り落とす。


「す、すみませんっ!」

「まぁ今のはしょうがない。ああいうスピードの早いのが多いってことは頭に入れといて」

「はい」


 でもこのレベルがいっぱい出てくるなら楽しそう!

 私とサオン前衛にして止めをスケッチにした方がいいかも。


「私も投擲設定して、サオンと二人で前出るわ。スケッチは魔法で止めにしよう」

「はい」

「私がそのまま斬り殺すこともあるから、とりあえず指示待ちで」


 この指示もなぁ。

 ゲームとかだとすんなり連携出来るよね。あれ何で?


 



「やー、今日は楽しかった! 最高!」


 私のレベルが六になった。すごい。


「死ぬ……」


 特訓時と違い泣いてはないが、ぐったりとしている。

 あれくらいじゃ死なないよ。貧弱か。貧弱だった。


「まぁまぁ、スケッチもレベル上がったし! 新しい魔法も覚えたでしょ?」

「それは……そうですけど……」

「素材売ってくるから、スケッチはそこで休んどいて」

「はい……」


 スケッチはぐったりとベンチに座り込んだ。サオンも一緒にお留守番。

 私とオネエは一緒に素材を買い取ってもらいに、売買所へ。



「ずいぶん深くまで潜るようになりましたね」


 素材の買い取りで雑談をするのは初めてだ。

 話し掛けて来たのは、いつもここにいる金髪の女性。二十代前半くらいか、華奢で可愛らしい感じの人だ。今まで挨拶位はしてたけど名前も知らない。


「実はそのランクでここまで稼いでいるパーティはいないんですよ」

「あはは、まだFランクですからね」


 ハンターは低ランクの人ほど早くランクを上げたがる。難易度も低いし、さすがにFだとかっこ悪いし、早くEに上がろうとするだろう。迷宮に潜るとお金は稼げるけど、ハンターランクを上げるための依頼クエストはほとんどないから、依頼を優先する人の方が多いだろうし。

 私だって学園さえなければ、もっと依頼を受けていると思う。


「ふふふ。これだけ稼げれば将来安泰ですね。皆さんはちょっと目立ってますし、絡まれないように気を付けてくださいね」


 え? 目立ってんの? 絡まれるの? それフラグ?

 今日からスケッチは家まで送って行くか。私ならまず真っ先にスケッチ狙うわ。いや客観的に見たら女三人の方が狙いやすいか?


「今日から彼を送ってから寮に戻りましょう」


 おっと、オネエも同じ意見か。

 実際、スケッチが絡まれると逃げ切れないだろうしね。しかもまだ現金渡してないからなおさらヤバイ。金を出せ、ありませんからのフルボッコだ。

 私たち三人は絡まれても正直逃げ切れる、というか、ねぇ? 


「貴族なのに絡まれるかな?」

「貴族に見えませんから。それに逃げ切れると思っていれば絡んで来てもおかしくありません」


 そりゃそうだ。

 ばれなきゃ貴族相手も怖くないよね。端っから格下だと思ってるから絡んでくるわけで。


「じゃあお姉さん、ありがとうございました」

「こちらこそ、いつもありがとうございます。私、アディと言います。これからもよろしくお願いしますね」


 さて。スケッチを抱えて帰ろうか。




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