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ゲーム風異世界でハンターライフ  作者: クドウ
兼業ハンター生活一年目
48/110

九階



「さて……」


 迷宮前に集合し、私は気合を入れて皆を見回した。


「今週は九階に行ってみたいんだけど、どうかな? まだ早いかな?」

「いえ、良いと思います」


 オネエが賛成してくれたので、今日は九階に行ってみよう。わくわくするね!

 転移で十階まで下りて、そこから一階上がってみようか。慣れたら十階に戻ってもいいかな。で、さらに慣れたら十一階。

 今までの迷宮は、はっきり言ってちょろかった。ちょろかったけど、ゲームと違い命がかかっている。私は死ななくても他の人は死ぬし、気を付けるに越したことはない。

 今日は使わないかもしれないけど、地図の続きを買い足してから迷宮に向かった。


 階層が変わっても、大きな変わりはない。中には泉があったり森になってたりと不思議な空間もあるらしいのだが、それはまだまだ先のようだ。

 ただ天井や高くなり、通路の横幅も広くなり、モンスターの大きさが少し大きくなっている。大きくなると狩り甲斐もあるけど、素材が溜まるのも早そうだ。

 先週と同じでサオンが警戒と投擲、スケッチが魔法で牽制、止めに私、オネエがフォロー。サオンの索敵が優秀で、大きな怪我をすることもなく、さくさく進む。


「うーん……素材もけっこう溜まったし、十階ちょっと回って一回戻ろうか」


 こうなってくるとやっぱりもっと大きな容量の素材袋が欲しいよね。

 

「あ……セリカ様、大きい気配があります」

「本当だ!」


 今までで一番大きな気配だ!

 春に狩った猿くらいかな?


「私一人で狩りたい! 譲って!」

「え、僕はいいですけど……」

「よろしいのではないでしょうか。もちろん危なくなったら手を出しますが」

「ひゃっほい! 行ってくるー!」


 テンションあがるわー!

 刀を片手に走る。他のハンターに獲られても困るしね!


 モンスターは二足歩行の河馬だった。あくまで見た目のイメージが、である。

 興奮しているのか、唸り声を上げて突進してきた。それを横に避けて跳び、そのまま壁を走る。背後を取って一閃。

 浅いな。 

 振り返りざまの一撃を後ろに跳んで躱す。

 けっこう固いみたいだし、眼球を狙うか。

 距離をつめて目を潰す。止めは頭部。

 予想より時間が掛からなかったなぁ。

 オネエと二人で解体して、入りきらなかった素材は手に持つ。解体スキルって本当に便利だ。止血出来なかったら垂流しで上に行かなきゃ行けないんだよね。


「今までの迷宮で一番大きな獲物ですね」

「だよね。これからはこういう大きさもっと増えるのかな」

「そうですね。十一階からは多いようですよ」


 楽しみだなぁ。手ごたえはなかったけど、上の方にいる虫に比べれば、全然楽しめる。あれ、何か楽しめるって危ない人みたいだな。


「革は売らずに何か作りましょうか。魔糸蜘蛛クラウドの糸もありますし」

「それいいね!」


 魔糸もけっこう溜まってきてるしね。


「何かリクエストはありますか?」

「この革は何に向いてるの?」

「防具でも小物でもいけますよ」


 うーん……。革の鎧と胸当ては持ってるんだよね。

 革の量的にそんなに作れないし、小さいものの方がいいよね。


「籠手とかどうかな?」

「いいですね」


 オネエの賛成を得られたので籠手に決定。

 防具じゃなくて小物ならボディバッグとベルトも欲しい。でもこれは海月とセットで必要だからまだいいかな。


「スケッチも何か作る?」

「いいの?」

「籠手にする? それとも他の?」

「何がいいかな?」

「胸当て持ってないなら胸当てにする? オネエ、足りるかな?」

「足りますよ。胸当てと籠手にしましょう」


 革にカービングとかもいいよね! 下絵はオネエが無理ならスケッチに描いてもらえばよくない? あ、でもカービングって薄くなる分防御力下がるかな。それならスケッチに絵を描いてもらった方がいいかもしれない。

 使う分の素材は寮に、売る分の素材は売ってしまい、一旦昼食休憩だ。

 迷宮内に何か持ち込んで食べることもあるけど、それだと荷物が増える。どうせ素材がいっぱいになって戻ってくるのだから、その時に食べた方が無駄がないということで、最近は専ら迷宮外で食べている。

 そんなわけで今日は蕎麦屋。鴨南蛮って美味しいよね。


「セリカさんのあれ、すごいですね」

「あれってどれ?」

「あの壁を走ったり跳んだり」

「軽業か。もうあれ覚えたくて覚えたくて毎日ぴょんぴょんやってたからね! スケッチもいつか覚えられるはず……」


 私やサオンに比べて、スケッチのスキルは上がり方が遅い。言っちゃあ悪いが、根本的に運動神経が悪いのだと思う。

 サオンは獣人にしては運動神経が悪いらしいけど、身体能力が普通の人よりいい分、やっぱり伸びがいい。

 

「あれを僕が?」

「うん? ステップとジャンプとダッシュが200になったら軽業が派生するから」

「200って……」

「あると便利よ?」

 

 覚えるまでに枠が三つも埋まって不便だけど、覚える価値はあると思う。ただスケッチの場合、卒業後になりそうなんだよなぁ。今みたいに私がスキルの入れ替え出来ないと不便すぎる……。


「枠が足りないなら外してもいいよ。あくまであれば便利なだけで、ないと駄目なわけじゃないし。むしろ設定してない人の方が多いし」

「気長に……頑張ります……。それにしてもセリカさんって物知りですね。軽業なんてスキル、初めて知りました」

「そうなの? 本に載ってたけど」

「本に? ……もしかしたら秘蔵書なのかもしれないですね。あんまり他言しない方が良いですよ」


 そうなの? 取説以外も天使の用意した本だったっけ? 特別製? 気をつけないと。


  


 休み明け、コジローが無事ハンターになったと報告を受けた。

 予想通りソロでも良いらしいし、講習も三つだったそうだ。一応初日だけ一緒に迷宮に行くことになった。色々打ち合わせしておかないとな。コジローに自由設定のことをいうつもりはないし。

 あとは恨みがましい目で私を見ているアカネをどうにかしないと。ちょっと手合わせをして、問題ないようだったら推薦状を書こう。

 しかし私も新人なのにこんなに推薦状を書いて大丈夫なのか。何も言われないってことは駄目じゃないんだろうけど……。


「というわけで手合わせしよう」

「何がというわけで、よ!」

「察してよ。コジローがハンターになったから、アカネもハンターになりたいんじゃないかと思って」

「……それと手合わせの何の関係が?」

「ハンター試験って推薦状がいるのよ。さすがに腕前も知らないで推薦状は書けないから」


 というわけで、放課後人目のない場所で手合わせしてみた。コジローより弱くてスケッチよりだいぶ強い、かな。ハンター試験は余裕で受かりそうだから推薦状も書ける。パーティ縛りがあってもなくてもコジローにお奨めするつもりだから問題ないし。

 アカネは敏捷性に優れた前衛タイプだから、サオンとタイプが同じだ。コジローも同じなんだけど、サオンより私よりなんだよね。回復の必要のない浅い迷宮なら、この二人の相性はいいと思う。この二人なら十階でも余裕だと思うし。


「気配察知持ってるよね」

「それが何よ」

「いやコジローが持ってないから、パーティ組むなら持ってた方がいいじゃん? だから確認。コジローにアカネと組んだらって提案しようと思って」

「はあああっ!?」

「そんなに驚かなくてもいいじゃん。人数多くても邪魔だけど、一人だと効率悪いし。二、三人ってちょうどいい人数だと思うのよね」

「コジロー様と、一緒……」

「コジローって攻撃特化だから、アカネが補助系のスキル持ってるとぴったりじゃない? 試験に受かったら補助系のスキル、増やしてみたら?」

「コジロー様と、一緒……」


 あ、だめだ。聞いてないわ。

 私は手早く推薦状を書いて鞄に突っ込み、アカネを置いて倶楽部に向かった。




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