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ゲーム風異世界でハンターライフ  作者: クドウ
兼業ハンター生活一年目
46/110

夏の予定

 



 翌日。

 三人を見送った後、学園の前でユーリー様と待ち合わせた。

 誕生日をプレゼントを渡すため誘ったのだが、ついでに出掛けようということになったのだ。前もだったけど、ユーリー様のお供がいるのでやはりデートという感じはしない。迷宮のメンバーからサオンまで抜けると不安で仕方ないので、ユーリー様には事前に知らせておいた。サオンは急病なんです、一人なのは仕方ないんです。いや本来なら病気でも来ないといけないんだろうけどね。


 ユーリー様のお気に入りであるパスタ屋で昼食を食べた後、洋服や小物などを見て回った。

 この世界の洋服は昔のヨーロッパを現代風にアレンジしたような感じだ。ナビール魔法学園の生徒は貴族なので、大人しめのドレスを着ている。日本で言えばちょっと派手なワンピースと言えないこともない。一番近いのは結婚式の二次会的なパーティー服か。

 日本だとかなり目立つ、ピンクのふりふりも珍しくないし、パンツルックが少ないことも特徴。反面、男物はシンプルにシャツとパンツ。ベストやニットはあるけどTシャツやポロシャツはない。

 そういやスニーカーもないな。サンダルはあるけど革製で、レインブーツもない。

 ユーリー様に似合うと言われた服はすべてかわいらしいドレスで、正直趣味が合わない。私が好きなのはセクシーな服である。この顔このスタイルでかわいい系は合わない。無理無理。セクシー系じゃなくてもせめてかっこいい系でお願いしたい。

 あとユーリー様は緑系の服はあんまり似合わないと思う。さりげなく違う色をおすすめしておいた。

 一通り見て回り、カフェでお茶。お土産にお菓子を買って帰ろう。プレゼントも渡せたし、目的達成。あとはクリスマスまでイベントなしだ。あー疲れた。


 

 帰って来た三人に報告を受ける。

 サオンのレベルが二になったそうだ。レベルが三になってソロランクがFになると、パーティランクもFに申請出来るそうだ。

 けっこう適当設定だな。まぁ簡単なのはFランクまでらしいけど。

 Eランクを目指すのは、全員のレベルが五になってからだ。一番下のスケッチが五になるのは……先が長いな。夏休みには間に合わないだろう。


「どうする? 何か食べてから帰る?」

「わぁい! パフェが食べたいです!」

「それごはんじゃないから」

「肉がいいですね」

「じゃあ今日は肉ね。パフェはまた今度食べにいこう。スケッチも」


 東ノ島通りの焼肉店に向かう。一日一回はお米が食べたいのである。

 サオンとスケッチは初めての焼肉らしい。オネエはビールとレバ刺しを、他はお茶を注文。

 乾杯したあと焼き野菜と各種肉、私の白飯も頼む。私がそうしてもらったように、サオンとスケッチにモンスターの肉の種類を説明する。


「このお肉、おいしいです!」

「このモンスターの肉は初めて食べたかも」


 おいしい肉は、売らずに寮で焼いて食べてもいいよね。簡易キッチンはあるし、野営グッズもある。夜営する機会があれば狙って狩るのもいいなぁ。オネエは内臓系が好きみたいだけど、ワームは嫌なんだよね。見た目似てるのになぜだ。

 オネエにはおかわりのビールを、サオンにはジュースを、スケッチには初の白飯を勧めた。別に日本食信者を増やそうとしているわけではない。

 心行くまで肉を貪り満足、満足。


「あぁ、そうだ。スケッチは夏休みの予定ある? ちょっと北方に行こうかと思ってるんだけど」

「特にないけど……北方? 何のためにいくの?」

「海月狩り。あと違う迷宮にも行ってみたいかなぁ」


 迷宮は各所に点在していて、迷宮ごとに造りもモンスターの種類も違うので、当然素材も違って来る。

 王都にある迷宮は一つだけで、現れるモンスターも珍しい種類は少なく、獣系が多いのが特徴。なぜかよく虫系に遭遇しているが、虫系はそんなに多くないらしい。たぶんもっと潜れば獣系が増えるんだろうね。

 私はゴーレムとかドラゴンとか大型のモンスターと戦ってみたい。どこにいるの?


「他にも良い依頼があれば受けたいですね。調べておきます」


 サオンが家事担当なので、服作りがないときはオネエが情報集めをしてくれている。


「馬車をレンタルしたり宿代もいるし、けっこう費用が掛かるから強制はしないわよ。残ってこっちの迷宮に潜ってもいいと思うし。一人だとあんまり下まで行かない方がいいと思うけど」

「うーん……費用がどれくらいかかるかわかったら教えてほしいかな」

「そうね。赤字になる可能性もあるし、この話はまた後日で」


 馬車レンタルはダーヴィトお兄様に紹介してもらおう。安いところないか手紙書いておこう。




 あれから数回魔法基礎の講義を受け、魔方式について詳しく学んだ。

 魔方式はそれを覚えるだけでは使えない。魔方式と呪文を合わせないとならないのだ。

 合わせるというのは、簡単に言えば呪文を唱えつつ、魔力で魔方式を描く。言葉にすると簡単なのだが、呪文を唱える、魔力の放出、魔方式を描くの三つを同時にするのはかなり難しいらしい。特に後ろ二つ。


「ソフォス講師は、スキルではない魔法をどのくらい使えますか?」

「長いことやってますが、二十もないですね」


 出来るなら教えてもらえるのだろうか。

 

「私はそれを覚えたいのですが、七ノ月以降も魔法基礎の授業を続けて受けることは出来ませんか?」

「そうですねぇ……確認してみましょう。……あぁ、魔法研究の倶楽部でも、それをテーマにしているところがありますよ」


 見学に行ったはずなのに、全然気が付かなかった。


「なかなか成功しないようですけどね。私はそれよりも魔道具制作倶楽部をおすすめしますよ。魔動車、作りません?」

「それも魅力的ですけどね。今のところ費用が集まりません」

「そこなんですよねぇ……」


 ソフォス講師は溜息を吐いて項垂れた。面接で熱く語るくらい、魔動車好きだもんね。

 いつかは作りたいと思うけど、プロを引き入れてなおかつ費用を稼いでからになる。置き場所もないので、先にそっちを用意しないといけない。在学中なら置き場所はあるけど、結局費用がねぇ……。どれくらいかかるのかな。講師の給料じゃ貯まらないくらい、費用が掛かるってことだよね。私がざっと考えただけでもかなりの額になる。



 翌日の放課後、ソフォス講師から魔法基礎の講義が継続して受けられることになったことが知らされた。ソフォス講師、仕事早い。

 どうやら私の他にも希望者がいたらしく、とんとん拍子で決まったとか。その希望者は私の他に二人で、Cクラスのエフィム・ツァープリャとBクラスのメリル・カイザー。

 ……どっちの名前も聞き覚えがある。攻略キャラとライバルキャラだ。エフィム・ツァープリャは一言でいえば研究大好き変人キャラ。攻略キャラの中で唯一の眼鏡でもある。メリル・カイザーは勤勉で無口無表情キャラ。

 何かすごく面倒な予感しかしない。フラグなの? そういうの要らないです、まじで……。

 まだ一月あるし、その間に気が変わらないかなぁ。無理だろうなぁ。

 スケッチから時計を受け取った後は倶楽部に行く予定だったんだけどなぁ。気分が萎えたので倶楽部はサボってふて寝した。




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