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ゲーム風異世界でハンターライフ  作者: クドウ
兼業ハンター生活一年目
45/110

スケッチの初迷宮


「自分の魔力の動きを呪文によって動かすことで――」


 黒板に構造式のようなものが書かれる。魔方式というらしい。

 すべての魔法にはこの魔方式があり、呪文によりこの魔方式通りに魔力が動くと言われている。

 属性それぞれの法則、威力が上がれば長くなる方式。ここ最近の魔法基礎は板書の写しで忙しい。今までの講義と大違いで、すごく楽しい。

 スキルで覚えた魔法は、呪文を唱えることで魔方式を自動で動かすものなのだそうだ。


「スキルで覚えた魔法でなくても、この魔方式と魔力、呪文を合わせることで――」


 三つをを合わせる。

 言葉にすると簡単だけど、実行するのは難しい。

 スキルで覚えた魔法なら、呪文もなぜか覚えていられる。それ以外は暗記するしかないのだ。

 初期の魔法は簡単な呪文ばかりだけど、威力が高くなるにつれて呪文は長くなる。カンペはありだろうか。

 講義が終わった後、講師に質問してみた。答えは可。ただ魔方式の合わせ方も難易度が高いので、そんな面倒な真似をする人はほとんどいない。スキルを覚えた方がよっぽど早いからだ。それに条件が合わない人だと、うまく合わせられたとしても発動しないのだとか。

 私の場合はスキルの自由設定が出来るから、そこまで労力をかけて魔法を使う利点がない。対人戦の隠し玉には出来るけど、対人戦は専門外。基本ハンターの仕事に、対人戦はない。


「たとえばその魔方式や呪文の法則を解明できれば、新しい魔法を開発することが出来ますか?」

「まったくの新しい魔法は不可能です。魔法というものは、神に与えられたもの。神と同等の力を我々が持つことはあり得ません」


 まぁそうだよね、ゲームの設定にない魔法を作ることは出来ないよねぇ……。でも魔道具だって開発出来てるのにおかしくない?


「ただ、改造することは可能です」

「と言いますと?」

「たとえば着火の魔法。火の大きさは決まっていて、持続の時間は三秒ですね。ですが、魔力を意識して切れば、三秒たたずに消えます。改造はこれの応用で、火の大きさや形、温度、こういったものを多少変化させることが可能となります」


 魔法の改造か! それはちょっと楽しそうだ。


「ただその労力に見合った結果が得られるかと言えば、そうではありません」


 まぁそりゃそうだ。苦労して改造しなくても不都合はないし。


「魔法院では研究されていますけどね」

「魔法院?」

「魔法の研究をしている施設ですよ。少数ですが学園から進学する人もいますね」


 研究所? 大学院みたいなものかな?


「たとえば光魔法で、灯りを照らすだけの魔法が欲しければ、魔方式を覚えてスキルは違うものを設定した方が、スキル枠の節約になりますよね」

「そうですね。魔方式をすぐに合わせることが出来るなら有効な方法でしょう。ただ多くの人はそんな労力を掛けるならスキルを設定するか、魔道具を利用するでしょうね」

「んん~……便利は便利なんですよね。労力がすごいだけで」

「魔方式を合わせることが得意であれば便利ですね。極端な話、全魔法を魔方式で覚えてスキルは魔法に関係ないものを設定すれば手数は増えます。それに本当に極めることが出来れば、特殊な魔法もありますし……」


 次回からの講義内容に魔方式の合わせ方を入れ込んでくれるらしい。楽しみだ。ただ実技はなし。

 七ノ月からは属性別に分かれ、スキルを設定して実技がメインになるのだが、それまで実技はしないというルールがあるそうだ。

 これまでの講義で取得したスキルを中心に三つ以上を選ぶのだが、効率が悪いので全部受ける人はほとんどいない。

 全部選ぶと上がり方が早いことで、不自然に思われる可能性もある。少なくとも火と水はどちらか一つにしたい。

 神聖、時空、風、火は確定。あとは地か光でを悩んでいる。五種類なのは、週に十時間講義があるので、五種類だと二限ずつ使えるからだ。

 光は使い勝手が良くて好きだし、地は防御力を上げる補助魔法がある。両方取りたいけど、剣術、馬術、軽業、投擲、刀と五つは使いたいし。毎日教会に通っている振りをしてもいいけど面倒だしなぁ。

 投擲はダーツ倶楽部でしか使わないから、倶楽部前に教会に行っている振りをするか。サオンを呼びに行く時に教会に寄っていることにしてもいい。

 他にもいろいろあるけど他人のスキルをそこまで見ないだろうし。お茶淹れは別にスキル使って淹れてるわけじゃないし大丈夫だよね。いざとなったら「さっき教会に行きました」があるし。

 どっちにしろまだ一月以上先の話だしね。また今度考えようっと。

 





「本当にメイド服だ……」

「おはよ、スケッチ。だから防御力はあるってば。ほらこことか革も使ってるし」

「捲らないでええええ!」


 いやちょっと裾捲っただけじゃん。オネエはそういうの気にしないから大丈夫だよ。あ、面白がってさらに捲った。オネエってちょっとSだよね。

 スケッチの防具も何か欲しいなぁ。スケッチ、制服のローブだけなんだよね。後衛だし、浅い階層だと全然問題ないけどね。


「さてと。それじゃ今から迷宮に潜ります。気配察知はサオンに任せて、投擲か魔法かサオンが良いと思った方で、指示を出して。魔法は指示なしで撃たないこと」

「はい」


 スケッチがぎゅっと拳を握る。緊張しているのか、顔が強張っている。


「モンスターが目の前まで来たら攻撃していいけど、打撃のみでね」


 基本的に今日はサオンが先頭で次が私、スケッチ、殿がオネエで行く。私とオネエは逆でもいいんだけどね。



 休憩所まで小走りで進み、戦闘回数はゼロ。

 ここからが本番だ。スケッチの息が整うのを待ってから進む。


「前方、二匹です。えっと……魔法、お願いします?」

「は、はいっ!」


 ものすごくぎこちない。二人のやり取りを聞いて笑いをかみ殺す。

 スケッチの光魔法で動きが鈍くなったモンスターを切り伏せる。そのあとはオネエと二人掛かりで解体。解体は私の担当だったが、自由設定を打ち明けたことでオネエにも担当してもらうことになったのだ。サオンに覚えてもらっても、虫が出た時に困るしね。

 素材をオネエの袋に入れて先に進む。


「前方、三匹です。……魔法、お願いします」

「はい!」


 四人いれば袋も四つ持てる。スケッチを優先すると狩りや移動のスピードは遅くなるけど、往復する回数が減る分、時間の節約になる。


 今日は運がよく、魔石が多く採れた。素材の代金もいつもより多い。

 スケッチは身内じゃないので四分の一を渡すところだけど、立替えている諸々があるので当分報酬はなしだ。むしろ本来ならバックアップ代をもらう方らしいけど。


「一日でこんなに稼げるって……」

「袋代とか結構初期費用がかかってるけどね」

「ハンターの知り合いはいるけど、こんなに稼いでないと思う……」


 初期費用があるかないか生活基盤があるかないかで大分違うよね。

 在学中に貴族になる目途も必要だけど、家も必要だ。お金はいくらあっても足りない。


「明日はどうする? 私は予定があるんだけど、休養日にする? それとも三人で迷宮に潜る?」

「夏の北方行きの資金も必要ですし、可能な限り迷宮に潜った方が良いでしょう」

「わたしも迷宮がいいです」


 二人が迷宮と言うので、強制的にスケッチも迷宮だ。

 用事があるなら別だけど、疲れてるだけならば頑張ってもらおう。念のため癒しの魔法は掛けておく。


「あと三年近くあるんだし、Eランクも夢じゃないわ。頑張ろうね」

「はい!」


 今日の迷宮で手応えを感じたのか、スケッチは元気よく応えた。




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