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ゲーム風異世界でハンターライフ  作者: クドウ
兼業ハンター生活一年目
44/110

遠足

 


 ゴールデンウィーク後半は迷宮を堪能した。結果が今目の前にあるお金である。ちょっとウハウハ。

 スケッチの講習が今日ギリギリに終了したので、来週末から迷宮に潜れる。今は講習終了の報告を受けたところだ。

 スケッチのスキルを学園用に戻さないとね。


「便利だね……」

「でしょ。あ、スケッチも観察設定してるんだね」


 しかも私より高い。200超えってすごいよね。いつが誕生日か知らないけど、約一年でしょ?


「絵を描くのにあるとちょっと便利なんだ」

「なるほどねぇ。あ、平日の特訓はもう終わりだけど、倶楽部を頑張ってね。週末には迷宮に潜るから」


 スケッチは剣術倶楽部と馬術倶楽部に入っているようだ。

 騎士志望でこの二つに入っている人はかなり多い。


「うん……」

「何かあったらAクラスに来て。倶楽部はダーツ倶楽部と武器愛好倶楽部よ。わかってるだろうけど、ハンターとか迷宮とかスキルの話はこっそりね」

「どっちも聞いたことない倶楽部だね」

「どっちも人数少ないし、人気もないから。あとお願いがあるんだけど、これに魔糸蜘蛛描いてくれない?」


 以前授業で作った掛け時計だ。

 

「この花のとこにね、ちょこんと描いて欲しいの」

「いいけど……。そういえば前にも魔糸蜘蛛が何とかって言ってたね」

「そう! 飼ってるの。クラウドっていうんだけど、果物が好きで上げると飛び跳ねて喜ぶの。かわいいでしょ?」

「う、うん」


 サオンが何とも言えない表情をしていたが気にしない。スケッチの返答がぎこちなくても気にしない。

 スケッチと別れた後、貯まったお金で忠誠の指輪を買った。これで魔法の誤射も安心だ。いや誤射しないように気を付けるし、気を付けてもらうけどさ。

 残りのお金で半弓や虫除けの薬剤、投擲用の武器等細々としたものも購入する。


「あ、このゴーグルかっこいい!」


 盗賊スタイルにゴーグルは欠かせないよね。


「へぇ。素材が蛇の目ん玉だって」


 何かかっこいい。


「ここジャンクコーナーですけど、大丈夫ですか?」


 ワゴンの中に微妙なものがたくさん入っている。型落ちとか不人気品とか、とにかく値段は安い。このゴーグルも魔道具としての性能はないようだ。


「でもこれ色も好き。あ」


 製作者がリェーン・パウペルだ。

 もしかしたらこのワゴン品は地方製作者の製品が多く入ってるのかもしれない。


「うん、買おう。これに合わせて服も欲しいなぁ。夏は海月獲りに行きたいね」


 魔道具として使えなくても目の保護くらいにはなるだろう。盗賊スタイルしたいなぁ。


「良いですね。海月の素材でショールを作ると日除けにもなりますし」


 それはいい。ぜひ夏は北方に行きたいものだ。





 ゴールデンウィーク明けの今日は遠足だ。

 遠足っていうかバスハイクならぬ馬車ハイク? それともピクニックか?

 新入生同士の交流を目的をしたものだが、貴族に遠足ってどうなのか。何十台もの馬車が学園に集まり、移動が始まる。

 行先は見晴らしの良い丘の上。麓に馬車を止め、少し登った場所で昼食を食べるそうだ。

 ゲーム内はさらっと流されるだけのイベントだ。しかし主人公のパラメータが一定以上になっていれば、シルヴァン様と出会うことになる。

 この遠足は班行動で四人班。私はもちろんフェリシー様と一緒で、オマケ二人も一緒。つまり、私が主人公に出会う可能性もあるのだ。ちょっと楽しみ。

 

 班ごとに馬車に乗り込む。しかしこれだけの数の馬車はどこからやって来たのだろう。全部レンタル?

 外の景色を見ながら、鳥や動物を探す。

 あ、兎だ。

 狩りたいなぁ。うさぎおいし。


「セリカ様、うさぎです! かわいいですね」


 かわいいのは貴方です。

 兎を抱っこするフェリシー様、いいと思う。

 しかしあれだわ。

 もはや兎はかわいいものじゃなくて狩るもの、食料だ。このズレはもうどうしようもない気がする。


 見晴らしの良い丘の上で、テーブルとイスがセッティングされる。レジャーシートじゃないのかよ!

 個々の用意になるので、レジャーシートの人の方が多い。もちろんレジャーシートと言っても、キャラモノだったりレインボーだったりはしない。ハンターご用達の休憩所に敷く魔道具の浸水防止の布だ。


「セリカ様もこちらでどうぞ」

「……恐れ入ります」


 私は一応レジャーシートを持って来ているのだが、他三人がテーブルセッティングだからね……。一人レジャーシートに座るわけにもいくまい。

 昼食の準備は食堂で作られていて、それを配られる。もちろん三人は食堂の用意したものではなく、お抱えの料理人が用意してくれているようだ。

 フェリシー様と一緒にいられるのは嬉しいが、こういう時困るな。


 昼食後はゆっくりと景色を楽しみながら、紅茶とブラウニーを頂く。フェリシー様お抱えの料理人の作ったブラウニーはさすが絶品だ。

 アルベール様とシルヴァン様は他の男子生徒と乗馬や狩りをするそうだ。さすがに連れて来ている馬は少ないので、参加する生徒は限られている。

 他にもよくわからんスポーツをやってる人、剣術の手合わせをしている人など様々だ。

 あぁ羨ましい。なぜ私は女子なのか。女子は皆大人しく座ってる。


「セリカ様は狩りもなさるのですよね」

「えぇ。お兄様が連れて行ってくれるのです」

「そう、ですか……」


 浮かない顔をしている。


「どうかなさいましたか?」

「二年生になると、キャンプがございますでしょう?」

「そうですね」


 二年の夏には戦闘訓練を兼ねたキャンプがある。

 それまでに習った魔法や剣術で動物やモンスターを狩るのだが、大したことはしなかったはずだ。

 

「私、生物を殺したことがございませんの……」

「怖がらなくても大丈夫ですよ。確かに実践を積むためのキャンプですが、討伐は任意ですし。女子生徒は参加しない方が多いはずですよ」


 ゲームでは主人公と数名は参加していたけど、強制ではなかった。私は参加するつもりだけど、フェリシー様は参加しなくていいと思う。騎士やハンター志望ならともかくね。


「きゃっ!」


 テーブル横を歩いていた女子生徒が転んだ。

 顔面から突っ込んでしまい、起き上がると鼻の頭と額が赤くなっていた。

 栗色の髪は肩までの長さ、そして後頭部に赤のリボン。まさに主人公ヒロインちゃんではないか。


「大丈夫ですか?」


 フェリシー様の使用人がそっとハンカチを差し出した。こういうシチュエーションって使用人がいればやっぱり使用人になるのね。


「ありがとうございます! あ、私、カメリア・カナリアと言います!」


 デフォルト名ってそんな名前だったっけ。

 あれだな、何と言うか子犬系だわ。猫派の私としては好みじゃないなぁ。一にフェリシー様、二にセリカ、三メリル。メリルにはまだ会ってないけどね。


「私はフェリシー・フラヴィニーですわ。怪我はない?」

「大丈夫です! 丈夫さだけが取り柄ですから!」


 おう、私完全に蚊帳の外。いや別にいいけどね。ヒロインちゃんは見たかったけど、友達になりたいわけじゃないし。

 ヒロインちゃんはぺこぺこと頭を下げてから、丘の上に走って行った。見覚えのある少女のところだ。


「豪快に転んでましたねぇ」

「そうですわね。お鼻が真っ赤でした」


 名乗ってないけど、これが初対面ってことになるのかな。

 ヒロインちゃんの背中を見送っていると隣の少女と目があった。神学の時に見掛ける、サポートキャラの少女だ。まだ話したことはない。

 何か気になるんだよねぇ。向こうも私を気にしていることがわかるし。よくある話だと私と同じでこっちの世界に来た人かな、と思ったけど、天使はこの世界には誰も来ていないと言っていたはずだ。逆ハーレムのエンドがないからって。


「どうかなさいました?」

「アルベール様が戻って来ましたよ」

「わかりませんわ。セリカ様は目がよろしいのですね」


 ……顔は見えなくてもあれだけ猛ダッシュで近付いてくる赤髪が、アルベール様じゃないはずがない。







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