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ゲーム風異世界でハンターライフ  作者: クドウ
兼業ハンター生活一年目
42/110

手伝い




 ナビール魔法学園に、下駄箱はない。校舎内も靴のまま入るからだ。よって、果たし状が入っていたのも下駄箱ではなく、ロッカーの中だった。

 鍵はかけているけど、隙間から差し込まれていた。執念だな。

 果たし状は昼休みに倶楽部棟の裏にて待つというものだ。面倒だけど、行かないとさらに面倒そうなので行くことにする。


「よく逃げずに来たわね」


 腕を組み、私を睨みつけるアカネ・アマミヤ。


「で?」

「決まってるでしょ! コジロー様に付き纏わないで!」

「だから付き纏ってないと」


 面倒な女だな! 


「私に言わずにコジローに言えば? 食堂であの席を使わないでくださいって」


 いきなり私があの席を使わないようになったら、何か感じ悪いじゃん。


「とりあえず聞きたいんだけど、アンタはコジローに異性の友人を作らせたくないの?」

「コジロー様の傍にいてコジロー様を好きにならないはずがないじゃない!」


 うわぁ……。


「いや私婚約者いるし、好きにならないから」

「口では何とでも言えるでしょ!」

「そう言うと思った。なので、ちょっと付き合ってもらう」

「え?」

「力尽くで」

「え?」

「大丈夫大丈夫、怪我はさせないから。たぶん」


 仕込んでおいたロープを取り出す。魔力を通し、自由に動く魔道具のロープだ。


「ゴー」


 ロープが戸惑うアカネの背後に回り込み、体に巻き付き始める。


「えっ!?」


 まさかそんなことをされるとは夢にも思っていなかっただろう。というかそういうロープを知らなかった可能性もあるな。抵抗する間もなく、いとも容易く捕獲完了。

 ふはは、楽勝楽勝!


「しばらく黙っててね」


 にっこり笑って布を噛ませた。 





 うわぁ、目立つ。すごく注目されてるけど、誰も話し掛けようとはしない。そりゃそうだ。こんな怪しい人に話し掛けようとは思わないわ。

 助けてもらえないアカネ、カワイソウ。


「何をやってるんだ?」

「今日からこの子も一緒にどうかなと思って」

「縛り上げて無理矢理連れてくるのは感心しない」

「無理矢理じゃないから大丈夫。コジロー、解いてやってくれる? 私は二人分の昼食持ってくるわ」

「~っ!?」

「コジローが解きやすいように、大人しくしててね」



 二人分の食事を持ってテーブルに戻ると、アカネは観念したのか大人しく待っていた。顔を真っ赤にして俯いている。ストーカーは純情らしい。


「お待たせ。日替わりにしたけどいいわよね」


 有無を言わさずトレイを押し付けると、私はアカネの隣に座った。


「二人は同郷よね? 顔見知り?」

「多少は。とはいえ、挨拶程度だが」


 幼馴染とかではないのね。


「なら自己紹介は必要ないわね。東ノ島通りの話が出来る人は貴重だと思って」

「確かにそうだな」


 アカネはコジローをちらちら見ながら、大人しく食事をしている。コジローがいれば絡まれないし、面倒じゃなくていいな。


「別に今まで約束してたわけじゃないけど、どうせなら人数は多い方がいいし。アカネもこれからここで食べましょうね?」

「それはいいな。せっかくの同郷だ」


 コジローに肯定されれば断れまい。これでしばらくは大人しくなってくれるだろう。

 私は無事平穏を手に入れた。





 と、思っていたら私の後をつけてくる人物がいる。

 隠れているのかいないのか、よくわからないけどバレバレだ。曲がったふりをして待ち伏せた。


「何か御用かしら?」

「あ……」


 スケッチ少年だった。

 先週いじめちゃったから、もう話し掛けて来ないと思っていたので予想外だ。


「…………」


 早く言えよ。


「倶楽部に行く途中なので、用事がないなら行きますよ?」

「あっ……」

「はい」

「…………」

「うっぜぇ。早く言え」


 つい手が出た。ちょっと頭を力込めて掴んだだけだけど。眼鏡が落ちてないからセーフだ。


「痛い痛い痛いですっ、言いますから言いますからあああああ」

「で?」

「う、うぅ……こ、この前、返り討ちにしたいなら、手伝ってくれるって……」


 頭を押さえ呻きながら、ぼそぼそと話し始めた。


「あぁ、あれか。手伝うって言っても私は直接手を出すつもりはないわよ? 特訓の手伝いならするよってだけで」

「特訓の手伝いって、その、アデュライトさんは……」

「セリカでいいわ。とりあえずスケッチはどうなりたいの? 私で手伝える特訓ならいいんだけど、目指すものが違うと手伝えないから」


 手段を選ばないならいいんだけど、正攻法オンリーとか言われると困る。


「僕は、剣術が全く駄目なんだけど、弓も槍も苦手で」


 あぁ、うん、苦手そうだよね。


「潔く魔法一本に絞れば?」


 ここは騎士学園ではなく、魔法学園だ。

 剣術が苦手でも問題ない。実技は馬術や杖術もあるんだし。


「魔法の才能、あればいいんだけど……まだ習ってないからわからないし」


 入学試験は魔法の才能は関係ないしね。魔力量は量られたけど、それだけだ。



「とりあえず、最終目標は何? 何を目指してるの?」

「騎士に、なりたい……」

「実技からっきしなら魔法からアプローチしないと無理よね。魔法だけで騎士になることは可能なの?」


 レベルが上がれば身体能力が上がるというわけではない。スキルパラメータが上がれば補正が掛かるものはあるけど。


「魔法だけじゃ無理なんだ。前は魔法士団と騎士団が別だったけど、今の騎士はどっちも出来ないと駄目だから……」


 そうなるとやはり実技は必須か。

 スケッチの剣術を見る限りじゃ、かなり厳しい。


「剣、槍、弓以外じゃだめなの?」

「入ってからはわからないけど、入団試験にまずそれがあるから」


 避けて通れないわけか。


「あ、ハンターから騎士になるケースがあるじゃない?」

「え、うん」

「それと普通に騎士になるの、どっちが可能性高い?」

「どっちも、難しいと思う……」

「難しいと思う理由を述べよ」


「親が騎士なら、在学中にハンターのEランクまで上がったら、騎士になれる制度は確かにあるよ。でも、Eランクなんて無理だよ」


 Eランクか……。私の目標よりも低い。ハンターはDランクで一人前、Eランクだとあと一歩。学生でEなら充分なんだろうけど。なので在学中にEランクは不可能ではないと思う。私自身はいけると思っている。


「Eランクってソロ?」

「うん」


 やっぱりソロか。パーティランクならいけると思うんだけど、ソロだと厳しいかもしれない。前衛のソロと後衛のソロってだいぶ違うし。支援だけ出来てもソロのランクは上がらない。


「まぁ何事もやってみないとね。ハンターの方なら、手伝ってあげられるけど、条件があるわ」

「どんな……?」

「私の秘密を教えるわ。それを黙っていることが一つ。もう一つは、あの二人に絡まれたら言い返すこと」

「え?」

「口約束じゃ信用出来ないから忠誠の指輪を使う」

「え」

「忠誠を交わすわけじゃなくて、契約書代りに使えるから」

「いやそれは知ってるけど……。あれ、すごく高いよね?」

「ハンターになったらどうにか稼げるから大丈夫」


 訝しげな様子のスケッチに、きっぱりと答える。


「それに、言い返すって……」

「それはもっと簡単。剣が下手って言われたら他の方法で騎士になるって宣言して。貴族位持ち出して来たら校則知らないのかって言って」

「そんなこと言ったら……」

「まぁ喧嘩売ってるような言い方しなくていいわよ。柔らかい言い方に変えてもいいけど、我慢して受け入れるのはやめて」

「……わかった。頑張るよ、僕」


 少し迷いながらも、スケッチはぎゅっと拳を握り込んだ。




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