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ゲーム風異世界でハンターライフ  作者: クドウ
兼業ハンター生活一年目
30/110

依頼

 



 迷宮に潜る準備をしていたら、面会の知らせが来た。何事かと思いつつ、来客室に向かう。


「セリカ、久しぶり。仕事は順調かな?」


 ダーヴィトお兄様とモナさんだった。


「順調ですわ。それよりもどうしたんです、お兄様?」

「一緒に依頼でも受けないかと思ってね。サリィの妹の手伝いに他メンバーが行ってるから、俺もセリカの手伝いが出来ればと思って」


 サリィさんの妹は今年サービオ学園を卒業し、友人と二人でパーティを組んでいるらしい。その手伝いでパーティを組むとなると四人の方が都合が良いということで、二人は抜けてきたのだそうだ。


「学園が始まるまでにちょっと遠出しないか?」

「それはいいですね!」


 サオンに遠出することを伝え、オネエを連れてギルドへ向かった。

 私とオネエは迷宮にしか潜ってないので、ランクは最下位のままだ。今回は臨時でランク上の二人が一緒なので、二つ上のランクを受けることが出来る。

 色々話し合った結果、片道四日程度の森へ行くことになった。受けた依頼自体は森の浅いところに生えている薬草の採取だが、お目当ては深部にいる魔糸蜘蛛。希少な糸を吐くことで知られており、今では個体数が減ってしまい、発見できる可能性は低い。他にも鉱石の取れるワームや、中々良い革が取れるモンスターもいるということで、ダーヴィトお兄様のおすすめ依頼だ。


「一番強いモンスターでロックワームかマイムーかな。油断するとそっちの子が危ないから気を付けて」

 

 そっちの子……オネエのことだろうけど、オネエはたぶんお兄様と同年代だと思う。色っぽいというか大人っぽいので、子って感じでもないし。


「どれくらい危ないのでしょう?」

「死者はたまに出てるね。Eランクならたぶん大丈夫、くらいのレベル」


 私とオネエのランクは最下位のG。全然足りてない。そんなものを相手にしようというのか。


「セリカはどう考えても大丈夫」

「オネエを守りながらでも大丈夫ですか?」

「大丈夫大丈夫」


 軽いな!


「大丈夫ですとも! 神に愛されしセリカ様に危険など及ぶものですか! もし何かありましてもこのモナが、命に代えてでもお守りいたしますっ!」


 モナさんは相変わらずモナさんだった。



 今回は普通の馬車なので、馬の休息を取りながら進んだ。必要以上に狩りはせず、予定通り四日で目的地に到着。先に依頼にあった薬草を採取し、保存用の瓶に詰めた。これで提出すれば初の依頼達成だ。Eランクの依頼なのにずいぶん簡単だな。

 森に入ると、モンスターの気配があった。

 芋虫、栗鼠、兎、鹿、蛇、数えきれないほどたくさんいる。迷宮よりも大分多い。

 

「ダーヴィトお兄様、何を狙いますか?」

「とりあえず奥に向かおう。向かってきたモンスターだけ狩って」


 わくわくしながら訊ねたのに、返って来たのはつれない返事だ。もっと狩ろうよ。

 ダーヴィトお兄様が先頭、殿はモナさんで進む。たまにモンスターが横切ることもあるけど、向かってくるものはいない。


「ワームがいるな。狩ろう」 

 

 ワームはでかいミミズだ。女の子に嫌われそうなモンスターだが、体内から鉱物が出ることが多いので、お金になる。


「今日の夕飯にしますか?」


 ワームは砂抜きすれば食べられると聞いている。鉄板焼きの店にはなかったが、クリスさんにはそう聞いているし、本にも載っていた。

 

「いや、肉食モンスターを釣る餌にしよう。女の子にはきついだろ」


 なるほど。オネエとモナさんはちょっと嫌そうな顔をしている。

 今気付いたけど、この四人だとダーヴィトお兄様のハーレムパーティに見える。実際は男女半々なわけだが、見た目だけは。


「うまく釣れれば良い革が手に入る。二人とも防具がないし、早く作った方が良いよ」


 確かにオネエの防具は優先的に欲しい。戦うようになったのでなおさらだ。

 サオンも荷物持ちをしてくれるなら防具が欲しいし、私の防具は学校の制服がある。一応あれは魔法士用のローブだ。ただ入学式前なので使うのを躊躇う。さすがに入学後が良いかな。


 ワームはその大きさからか、動きは早くない。攻撃も単調。ただ力が強いので直撃したら死ぬかもしれない。モナさんがサポート、他は武器で攻撃し、体力を削っていく。外皮が必要ないので気を遣わなくて良い。絶命したら今度は餌にしやすい大きさに刻みながら、中に鉱物がないか探る。

 鉱物が三つ出て来た。これを溜めて加工するも良し、売るも良し。今回は二つのパーティの合同なのであとで分けることにする。

 そのあともワームを狙って狩り、餌として撒きつつ様子を見る。


「なかなか釣れないですね」

「そうだね。一匹でも狩れれば防具三つ分くらい余裕なんだけど」


 かなりの大物らしい。楽しみだ。

 正直今まで、弱いモンスターばかりで手応えがなかった。物足りないのだ。もっと強いモンスターと戦いたい。数が多いだけなんて楽しくない。弱いモンスター複数より、強いモンスター一体と本気で戦いたい。


「……来るよ」


 気配察知で、何かが近付いてくるのがわかる。かなり大きい。


「餌を食べ始めたらモナが魔法で目眩まし。俺とセリカで突っ込む。モナが魔法を使ったら二人は下がってて。セリカ、革は傷付けない方がいいから、頭か心臓を狙って」


 餌を食べ始めたモンスターの目を、モナさんが光魔法で眩ませる。

 両手で目を押さえ暴れ始める。咆哮で耳がやられそうだ。


「猿?」


 モンスターは予想外の形状だった。肉食というから四足歩行型のイメージがあったのだが。

 頭と腕、足だけに毛がある気味の悪い風貌だ。大きさは象くらいだろうか。確かに防具を作るのに充分な大きさである。

 猿は目を瞑ったまま、我武者羅に暴れている。振り回している腕を回避しながら近づく。軽業があって良かった。木の上から頭を狙う。しかし腕に阻止され飛ばされる。着地。

 思ったより素早い。


「うーん、難しいね。革を捨てれば簡単なんだけど、それじゃ意味ないし」


 それはそうだ。革が欲しくて戦っているのである。

 

「多少傷がついても、うまく切断すれば革は取れるのでは?」

「量は減らしたくなかったんだけど、仕方ないか。腕と足を狙おう」


 それからは早かった。片足の腱を切断し、肩や腕を狙い、攻撃を封じる。ダーヴィトお兄様が囮になってくれたので、隙をついて頭を貫いた。私の剣は頭蓋骨も貫通する。剣の質が良いのもあるが、スキル様々だ。

 二人がかりで解体して、馬車に荷物を乗せる。馬車はもういっぱいだ。


「帰りの食料に鹿か何か狩って終わりかな。二人はここで待ってて、すぐ戻るから」


 お兄様と二人で再び森に入る。モナさんとオネエは解体スキルがないし、私は料理スキルもあるのでこの人選が良いのだ。


「鹿と兎がいるけど、どっちにする?」

「兎だと一匹じゃ足りないですし、鹿にしましょう」


 鹿なら一匹で足りるし。手早く首を落として血抜きする。調理しやすい大きさに切断し、熟成させる。熟成させれば自動的に血が止まるらしく、保存しやすい。


「あ」


 空から、というより木から蜘蛛が垂れ下がって来た。思わず手でキャッチ。

 

「ダーヴィトお兄様」

「うん……よく見えなかったから種類わからなかった。毒蜘蛛だったら困るし放そうか」

「でも図鑑で見た魔糸蜘蛛に似てました。毒は持ってないですよね」

「本当に魔糸蜘蛛ならね。殺せばわかるよ。解体すれば糸が取れるし」


 そっと手を開くと、やはり魔糸蜘蛛に見える。


「魔糸蜘蛛だね。逃げる前に仕留めよう」


 500円玉くらいの大きさの焦げ茶色っぽい蜘蛛だ。体はぽっちゃりとしていて手足は短い。普通の蜘蛛より可愛らしい。何かこれ、デフォルメデザインされてない?


「かわいい」

「……セリカ?」

「お兄様、私、これ、飼いたい」


 蜘蛛なんだし、餌は虫よね。虫ならすぐ手に入る。迷宮のコオロギの足でももいで来よう。

 再び掌で閉じ込めて、馬車に戻る。


「飼っても魔糸を上手く紡ぐとは限らないよ?」

「かわいいから許す」


 馬車に戻り、空いている袋に蜘蛛を入れた。布製なので呼吸は出来るはずだ。モナさんが若干引いていたが、ハンターだし悲鳴を上げたりはしない。


「それはどうするのですか?」

「飼います。私ちょっと餌を取って来ますね」

「セリカ、餌は俺が取ってくるから、夕食の用意を頼む」

「はい」


 火を熾し、鍋にスープと、鹿肉の串焼きを作る。デザートは森で採った果物だ。夕食を手早く済ませ、明日は日が昇り始めたらすぐに帰宅する。生臭い状態の馬車をあまり置いておきたくはない。

 蜘蛛に虫を食べさせて、ついでに果物もあげてみた。おぉ、食べた。もしかして何でも食べる?


「その子、魔糸は吐くんでしょうか」

「吐いてくれれば嬉しいけど、吐かなくても飼うわ。オネエは蜘蛛平気?」

「えぇ。モンスターに苦手な種類はいません」


 おぉ、頼もしいな。日本では虫嫌いな男も珍しくないのに。さてこの子は雄なのか雌なのか。それによって名前も変わる。帰ったらすぐ図鑑で調べよう。




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