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ゲーム風異世界でハンターライフ  作者: クドウ
ハンターになるまで
3/110

**の中にいる

 



 暗闇の中にいる。横たわっているようなので、起きようとしたらまず腕が壁にぶつかり、ついでに頭も打った。痛い。

 箱の中にいるみたいだ。声を出してみても、箱を叩いてみても、何の反応もない。どうしろっていうの。蹴破るか?いや待てよ。


「こういうときはあれか。ヘルプ! ヘルプコール!」

『はいはーい、お呼びですかー』


 コールというだけあって天使の姿はなく、声だけが聞こえる。


「私の今の状況は一体何? どうすればいいの?」

『あ、今は棺桶の中ですねー』

「は?」

『ぼんきゅっぼんの超美人さんが服毒自殺をはかりましてー、ちょうど体が空いたのでいただいたんですよー。時代はエコですから、再利用です!』

「ちょ、ま、え? これやばいんじゃない? やばいんじゃない? 燃やされるの埋められるのどっちなの、どっちも嫌です!!」

『埋葬は明日ですねー。今晩はまだ大丈夫です。今日はゆっくり休んで明日の朝神父さんに出してもらってください』

「え、それって死体が生き返ったことにならない? いいのそんなんで」


 アンデッド扱いでスタートとか嫌すぎる。


『教会に一晩安置するのは、神の奇跡待ちなので大丈夫です。生き返るのはむしろ喜ばしいことで、結構よくあるんですよー』

「何それ怖い」


 昔は生き返ることもあったらしいけど。仮死状態だとか心肺停止だとか脳死だとかどうのこうの。

 寝ている間に灰になってたら困るなぁと言ったら、天使が起こしてくれるという。お言葉に甘えて就寝。

 翌朝無事に起こされて、棺桶の蓋裏を叩いた。蓋がゆっくりと開いて、光が差し込む。うぅ、眩しい。


「セリカ・アデュライト様、おめでとうございます」


 三十代半ばくらいの金髪の男性だった。胸元にシルバーのプレートネックレスが光る。表面に大小の十字架が刻まれている。これどっかで……。


「お手をどうぞ」


 棺桶から無事脱出。私の名前はセリカ・アデュライトっていうのね。名前変わってない。苗字は……何となく聞き覚えがあるような気がするけど。


「ご家族の方を呼んで参ります。少しの間、ここに座っていてください」


 頷いて長椅子に座った。神父さんを見送ってから、ヘルプコール。


「ヘルプコール」

『はいはーい。無事生還、おめでとうございます!』

「ねぇ何かすごい違和感を感じるんだけど。世界間違えてない?」

『? ハンターになるんですよね、ばっちりですよー!』


 ステンドグラスの窓ガラスにパイプオルガン、重厚な赤い絨毯。神父さんの着ていた黒い服にネックレス。私のドレスのような服。何をとっても、私が望んでいた狩りゲーの世界観に削ぐ合わない。


「ちなみに、世界の名前っていうか、ゲームの名前は……」

『何言ってるんですかー! マジカルハンターハーモニーに決まってるじゃないですかー!』

「マジお前ふざけんな! 普通ハンターっつったら狩りゲーに決まってるだろそれ乙女ゲームじゃねーかよバカやろう今すぐ訂正しろ早くしろよおおおおおお!」

『えっ』

「えって何なの! まさか出来ないとか言わないよね!?」

『それが、あの……で、出来ません』

「何で!?」

『異世界転移はノルマ分の三十回の力しかなくて……さっき最後の一人を転移させちゃったんで、もう出来ないんです』

「ふざけんな! 神呼んでこいよ! 部下の失敗は上司がかぶるもの!!」

『むむむ無理ですよ! あ、ほら、この世界もモンスターいますから! 戦えますから!』

「それ私のこと戦闘狂だって言ってんの!?」

『間違ってないと……あ、いえ、ほらでもあの狩りゲーよりこの世界の方が死亡率低いですし! 魔法とか迷宮とかギルドとか定番の楽しみがっ!』

「私のオトリ返せよ!」

『オトリって酷い! 猫はいませんけど虎とか蛇とか蜘蛛とか、あっドラゴンとかいますし!』

「オトリは名前だし! 狩りゲーでもドラゴンいるしっ! 早く神呼べよ!」

『むむむ無理ですー! あっちと違ってペット自由ですからドラゴンとかも飼えますよ!?』

「ぐっ、それは魅力的だけど餌代どんだけかかると思ってんの? ふざけてんの?」

『何でそんなとこで現実主義なんですか!』

「あー……萎えた超萎えた。もうおうちかえるー」

『アデュライト家ですけどね』

「捻り潰してやろうか」

『こわい! なにこのここわい!』


 ひとしきり文句を言ってちょっと落ち着いた。


「はぁ……ゲームタイトルはっきり言ってなかったしね……。ハンターなんて単語、そこら中の漫画とかゲームに出てくるし」

『すいませんー、ちょうどセリカさんの前の女性がマジハンか歌王子かって悩んでで、そんでその前の女性もマジハンかバスケ漫画かで悩んでて、つい思い込んじゃいました』

「何それ。狩りゲーは秋に出たばっかで、マジハンとか売上爆死の一年前のマイナーゲームなのに……。狩りゲー希望者はいなかったの?」

『女性はゼロですけど、何人か男性が迷ってましたね。死亡率半端ない上に娯楽が少ない世界なので諦めてましたよ』

 

 娯楽。娯楽か。本はあるみたいだけどテレビはないよね。それを言ったら娯楽のある世界って限られてる気がするけど。日本ベースの世界の方が良かったかも。


『女性は現実的に考えてて安定した世界を選ぶ方が多いですね。マジハンを候補にいれていた女性は二人共、ハーレムエンドないからやっぱり却下で、とおっしゃってました』

「ハーレムエンドこそ現実的じゃないよね……」

『逆に男性は戦闘重視の方が多いですね。特に魔法とギルドランクがある世界が人気です』

「安定した世界って考えると、割とマジハンはあたりよね」

『そーですよー!』

 

 そんな喜色満面な声で……。私が悪かったよ、大人気なかったごめん。でも、でもさ、将来を左右する大事な世界選びじゃん……?

 マジカルハンターハーモニー、略してマジハンは、魔法と剣のよくあるファンタジー世界で、超イージーモードの女性向け恋愛シュミレーションゲームだ。

 主人公である下っ端貴族令嬢が、魔法学園に入学し、その三年間で誰かと恋愛し、卒業とともに結ばれる定番のストーリー。

 平日は勉強や運動コマンドでパラメータをあげ、休日は電話したりデートしたり遊びに行ったり出来る。好感度があがるとイベントが起きたり、さらに進むと個別のルートに入りエンディング。

 バッドエンドはなく、ノーマルエンドとして恋人が出来ないけどパラメータ別に進路が決まるエンディングが五種類、ライバルキャラとの友情エンドが五種類。サブキャラエンドはやってないから覚えてない。


「セリカ・アデュライトってことは、私、ライバルキャラの一人になったってこと?」


 ライバルキャラの一人、セリカ・アデュライト。金髪に何故か内側にピンクの髪が混じった不思議な髪色の、ちょっときつめの顔立ちの美少女だ。確かにぼんきゅっぼん。ヴィジュアルに合わず内向的な性格で、婚約者のことになるとちょっと性格の変わるお嬢様で、その婚約者を主人公に取られるかもしれないかわいそうな女の子だ。

 分岐するゲームなので、これからどのルートに乗るかわからない。しかし私には関係ないね。卒業後は全部ブッチして最強ハンターになるのだから!


「でも私が来なかったら、この子は死んだままだったんでしょ? シナリオ変わるじゃん」

『この世界は確かにゲームを元に創られましたけど、現実ですから。あくまでベースになっているだけです』

「ふぅん?」

『ゲーム内では人が死ぬことはありませんが、ここは現実なのでもちろん死ぬこともあるでしょう』

「そうね、この子も死んじゃったわけだし」

『あ、神父さんが戻って来たみたいなので切りますね。スキルとか特典とか、ゲームと違う部分なんかは取説見ればわかりますから。セリカさんの部屋の本棚を見てくださいねー』


 取説って……。



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