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ゲーム風異世界でハンターライフ  作者: クドウ
ハンターになるまで
12/110

ニューイヤー

 



 幼稚園の頃、好きだったアニメの影響で魔女になりたいと思っていた。幼稚園で、アパートの前で、箒やデッキブラシに跨って空を飛ぶ練習を欠かさなかった。本当にいつか飛べるはずだと信じていた。

 そんな娘を見て糞親父は言った。


「ばっかじゃねーの! 空なんて飛べるわけねーだろ、ばーかばーか! お前のかーちゃんでーべそー!」


 一語一句違わず正真正銘、幼稚園に通う娘に言った父親の台詞である。

 

「かーちゃんのヘソなんてしらねーっつーの! おまえがすてられたからだし! おじさまがいってたぞ! おまえが○○○○○の○○○からだって! ばーかばーか!」


「……すいませんでした」


 勝った。


 小学生になり、さすがに魔女の夢は諦めた。かわりに憧れたもの、それは忍者である。

 天井にひそんで吹き矢を放ち、手裏剣を投げたり、壁を走ったり、水の上を歩いたりしたいと思っていた。そこで手軽にお風呂場で水遁の術を練習することにした。

 一頻り練習し満足して顔をあげると、にやにやと笑う糞親父と目があった。


「ばっかじゃねーのー、今度は何だそれ? 忍者か? なれるわけねーだろ!」

「小学生の娘の風呂覗いてんじゃねー!!」


 シャンプーボトルを投げて怯ませたあと、激熱シャワーで撃退した。

 勝った。



 中学生ともなればさすがに現実的になる。刑事ものドラマの影響で刑事を目指そうと思った。


「ヤクザの娘がおまわりなんかになれるわけねーだろ! ばーかばーか!」

「お前がヤクザ名乗ってんじゃねぇよチンピラ風情がああああああ!」


 竹刀が飛んで、防具が飛び、窓ガラスが盛大に割れて大家に怒られた。

 引き分け。



 高校生になり現実を知った。警察官というものには身長・体重下限があるのだと。

 どっちも大幅に足りなかった。成長期の兆しもなく、泣いた。

 思えばゲームは逃避の一種だったのだろう。格ゲーと狩りゲーを中心にそれはもうはまった。RPGも楽しいが攻撃手段や攻撃箇所を自由に出来るゲームの方が断然楽しめた。



「そういうのをこじらせてこうなっちゃったんだなぁ」


 私はしみじみと呟いた。


「セリカお嬢様、何かおっしゃいましたか?」

「んー。懐かしい夢を見たなぁって」


 糞親父、どうしてるかな。おじさまにあんまり迷惑かけてなければ良いけど。


「アンジュお姉様はお元気かしら」


 十二ノ月の中旬に出発したが、結婚式自体はニューイヤーを越した明日。そのため両親は他のパーティーに出席せず、年末から南方に向かっている。兄姉たちは不参加。遠方に嫁ぐ場合はそういうものらしい。結婚式見たかったな。両親不在のおかげでジャーヴォロノク家のパーティーに参加せずにすんだことは嬉しいけど。


「南方はこの季節、過ごし易いと言いますから、きっとお元気でしょう」


 金髪巻き毛のメイドさんに淹れてもらったお茶を飲みながらのんびりと本を読む。ダンスの特訓が終わったから自由な時間が増えたのだ。


「そういえばそろそろダーヴィト様がお帰りになる頃ですね」

「そうなの。早ければニューイヤーに間に合うって言ってたんだけど」


 ダーヴィトお兄様が帰って来ないと狩りにいけない! この鍛え上げたスキルを自由に使いたいのに!


 そんな話をした次の日、ダーヴィトお兄様が帰って来た。


「おかえりなさい、お兄様! 私遠乗りに行きたいです!」

「ただいま、セリカ。……疲れてるから明日で良いですか」


 お兄様の目が死んでる。雪うさぎ狩りってそんなに大変なの?


「で、これお土産。雪うさぎの毛皮だよ。今年は付け襟が流行ってるんだって」


 ファーティペットか。いいかも。


「あとこれ」

「ナイフ!」

「解体用。今までリオン兄上の短剣借りてただろ? ちゃんと手入れ道具もセットだよ」

「ありがとうございます!」


 おぉこれは嬉しい! 解体用ナイフだって! じゃんじゃん解体するぞー!


「しかし……毛皮よりナイフに喜ぶ妹かぁ……」


 そんなに愁いないでくださいよ。




 翌日雪用のブーツを履いて、遠乗りという名の狩りに出発した。ダーヴィトお兄様しかいないのでスキルは自由に使える。馬から降りた辺りで馬術を外し使いたいスキルに変更した。今日は魔法もじゃんじゃん使おう。補助魔法も攻撃魔法も使いたい放題だ! ただし山中なので火魔法だけは使わないようにしておくか。


 気配察知でモンスターを次々発見し、乱獲していく。

 火魔法と神聖魔法の複合補助魔法で攻撃力、地魔法と神聖魔法で防御力、風魔法と神聖魔法で俊敏をそれぞれ強化し、全力で斧を振るう。

 ダッシュ、ステップ、ジャンプを駆使してヒットアンドウェイ。やばい楽しい!


「セリカがちょっと見ない間に凄まじいことに……」

「まだまだぁっ! 《前方、雷撃》!」


 うっわ、威力微妙! 一応痺れてはいるみたいだけど、やっぱりまだパラメータが低すぎだな。


「《前方、鎌鼬》!」


 おぉ、スプラッター……。

 しかしこれで一通り狩ったかな。モンスターの気配がほとんどない。


「これはちょっと……たくさん狩ったね」

「とりあえず満足しました。現役のハンターから見てどうでした?」


 量が多いので二人で解体を始める。


「セリカの戦い方って一人でうちのパーティの三役くらいやってるんだよね。ランクが低いうちはソロで充分やっていけそうだね」

「十五歳になったらすぐにハンターになってパーティを組みたいんですが……。休日にしか活動できないので、都合よくパーティを組めるかどうか」

「休日だけ?」

「はい。平日は学校がありますから」


 話しながらも手は休めない。解体がどんどん上がるのでちょっと楽しい。


「学校って、もう入学決まってるの?」

「まだですが。ユーリー様がナビールに入学するので、私も行くことになるかと」

「なるほどねー。じゃあそろそろ受験勉強か」

「……受験?」

「うん。ナビールは入学試験があるから。ハンターも試験があるけど、セリカなら大丈夫だろうね」


 W受験勉強とか。勉強自体、短大卒業してからしてないのに。


「ハンター試験はどんなものなんですか?」

「俺の時は弱いモンスターの討伐だったよ。種類はその時によって違うけど、大体そうみたいだね」


 弱いモンスターの討伐なら今でも受かりそうだ。一安心。


「ギルド職員が同行して、戦い方に危なげないかチェックされて、必要そうなら各種講習を受けて合格、って感じかな。講習は十種類くらいあるみたいだけど、俺の時は三種類受けたよ。……さ、こっちは終わったよ」

「はい、こちらも終わりです」

「じゃあこれを持って麓の村に行こうか」


 村は十世帯くらいの、本当に小さな集落だった。山の麓にあり、ほぼ自給自足の生活を送っているようだ。畑が広い。一応山の管理をしているらしいが、年配の方が多くモンスターがいるのに大丈夫なのか心配になる。


「お久しぶりです、ダーヴィト様」

「久しぶりだね。ちょっと獲物が多く取れすぎたからお裾分けに来たんだ」

「おぉ、こんなにたくさん! ……お二人で?」


 お兄様と私を見て、訝しげに眉をひそめる壮年の男性。代表者かな?


「いや、まさか。他のメンバーは予定があるから別れただけだよ」

「そうですか。ダーヴィト様、いつもありがとうございます」


 解体された食用の肉は今日明日食べる分だけ残され、あとは保存食になるそうだ。その保存食になる過程を教えてもらったり、少し見学させてもらったり、毛皮や爪、牙の加工とか色々見せてもらった。学園に入学したら生産系スキルの上がる部活に入るのも楽しそう。

 加工品は村で使う分以外は町で売るそうだ。料理スキル持ちの人がいて肉を熟成させてから作ってくれた料理を食べて屋敷に戻った。




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