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ゲーム風異世界でハンターライフ  作者: クドウ
兼業ハンター生活二年目
106/110

キャンプ~裏側~

スケッチ視点です



 六ノ月、中旬。

 ナビール魔法学園二学年では戦闘訓練を目的としたキャンプが実施される。

 これはそのまま戦闘訓練と、冬に行われる対校戦の代表者選出の場でもあるのだ。僕は全然狙っていないのだけど、エフィムが妙にやる気で基礎メンバーで出るつもりのようなのだ。僕はともかく、セリカさんは嫌がると思うけど、全然聞いてくれない。

 大体エフィムはいつも強引だ。上位の貴族が下位の貴族に無理を通すのは当たり前のことだけど、エフィムのそれはちょっと違うっていうか……。

 エフィムからペアを組もうと言われなかったので安心していたところに、友達から上位の貴族から伝言を預かっていると言われ、向かった先にユーリー・ジャーヴォロノク様がいた。

 僕が接したことのある上位の貴族の子息と言えば、エフィム、メリル、コジロー、アカネの四人。この四人は例外中の例外で、身分差を気にせずにいてくれる希少な人たち。家の繋がりでも上位との関わりはまったくなく、学園内は無礼講とはいえ礼儀作法にいまいち自信がないのだ。

 ともかく、学園内に身分差は持ち込まないというのは結局建前で、上位の貴族に指名されてしまえば、断るなんてできるわけがない。……あ、でもセリカさんなら断りそう。

 そんなわけで僕はキャンプの間、彼に付き従わないとならなくなった。道中、一日目、二日目と問題なく終え、あと一日だと安心していたところだった。事前に捕獲されていたモンスターを相手に戦闘訓練を行い、夕食まで休憩を取ることになった時だ。予想もしないタイミングで、その話は始まった。


「セリカ・アデュライト嬢は私の婚約者だということを知っているか」

「は、はい! 存じております!」

「……彼女のことをどう思っている」


 何その質問!?


「彼女はその、良い友人で、その、しっかりしているので助けられることが多くて……」


 ハンターのことを言わずにどう説明しろっていうの!

 濁して言うしかない!

 が、そんな誤魔化しは通用しないとばかりに眉を顰められた。



「そのループタイ」

「え?」

「私も持っている」


 セリカさあああああああああん!

 どうして! 婚約者と! 男友達(?)と! 同じものを! プレゼントするの!!


「これは、その、あの」


 なんていえばいいのかわからない!

 ただのお守りですとかプレゼントされましたとか、同じものっておかしいじゃん! どうしろっていうの!


「わかっている」

「え?」

「彼女はとても美しい」

「は?」

「君が惹かれるのもわかる」

「はぁ……はっ!? いや惹かれてませんから!」


 ひどい誤解だ!

 確かにセリカさんは美人だけど、何ていうか……そういう対象として見るなんて無理だ。怖い。一緒に戦っていればなおさらそれがわかる。いやジョルジュなら逆に可能な気もするけど。そうじゃなくて!


「気遣いは無用だ。彼女の魅力を前にすれば仕方のないこと」

「…………」


 駄目だこの人駄目な人だ。

 無表情のまま訥々とセリカさんの魅力を語り出す。怖い。

 間違ってはないけど怖い。逃げ出したい。あ、涙出て来た。

 こんな人だったんだ……。セリカさんも知らないんじゃないだろうか。

 っていうか、僕に魅力を語ってる場合じゃないと思うんだけど。セリカさんに直接言えばいいのに。セリカさんだし、きっと気づいてないと思う。前に女の子と二人でいた時も面白がってただけで、不安そうにしてたとか怒ってたとか一切なかったし。


「ハンターになりたいと言っているが、私は反対だ。剣術も駄目だ。彼女の柔肌に傷でもついたら……!」


 柔肌……。

 えっと、セリカさんほどの神聖魔法遣い手なら傷は残らないと思うけど。


「万が一君と彼女が一緒になりたいと言い出したとしても、それは認められない。君は貴族位が得られるかどうかわからないし、得られたとしても彼女を守れるとは思えない」


 セリカさんを守る?

 いや必要ないでしょう、どう考えても。知らないって怖い。


「あの、僕はセリカさんと一緒になるなんて考えてませんので……そんな恐れ多い」

「しかし彼女は君に好意を持っている」


 持ってない! 何がどうしてそうなった!


「しかし私は認めるわけにはいかない……」


 認めなくていいです、本当に!

 この誤解はどうしたら解けるのだろうか。セリカさんから直接話してもらえばいいの?


「えっとつまり、彼女に近付くなとそういうことでしょうか」


 ハンター活動は学園外なのでいいとしても、基礎以外でも同じ選択をしている講義もあるし、近付くなって言われると難しい。

 情けない話だけど、僕はセリカさんに助けられている立場だし……。


「そういうわけではない」

「では一体……?」

「……彼女の傍に居続けるならば命に代えてでも守り抜く覚悟を持て」


 重いっ! 何それ重いっ! でもセリカさんは僕がいなくて全然平気ですから! セリカさんが負傷する、その時点でうちのパーティ全滅してると思う!


「……万が一彼女が負傷する時は、すでに僕は生きてません」


 嘘は言ってない。

 そもそもセリカさんならドラゴンと遭遇しても生き延びると思うし、心配無用だ。

 結局何が言いたいのかよくわからなかったけど、セリカさんのことすごく好き、というかジョルジュに近い何かを感じたのだった。こわい。




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